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困ったときは遺書としてお使いください

エンジョイ勢から見たキャンサー杯オープンリーグの原風景

 

 

 

(諸々を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説

 

お疲れ様です。斬進です。ブログ更新するのいつぶりだと思ったら前回はエイプリルフールでした。4ヶ月空きましたね。季刊とはいったい。

本日はなんだかんだ始めたウマ娘PvPイベントであるところのチャンピオンズミーティング、7月開催分であるキャンサー杯の個人的な備忘録を書いておこうと思ってキーボードを叩いています。

個人的にカードゲームとかで「当時の環境」みたいな歴史を辿るのがけっこう好き、かつそういう空気みたいなのって結構散逸したり調べるのが手間だったりするので自分視点だけでも纏めておければ後で見返せるかなと思っています。あとどれだけ心臓に悪かったかをメモっておくことで今後のチャンピオンズミーティングの時も心が折れずに頑張っていけるかなみたいな。

ただし自分はまったくと言っていいほどガチ勢ではないし課金も最初に買えるチケットのやつしかやってませんし、キタサンも持ってなければクリークは900万DL記念のガシャチケットでようやく1枚来たみたいなレベルのエンジョイ勢ですのでご了承ください。「○○でいいじゃん」みたいなのはわかってるんですが手持ちは無いんです。よしなに。

 

 

 

キャンサー杯基礎スペック

 

東京レース場・芝・1600m(マイル/根幹距離)・左回り・夏・晴れ・稍重 。

モチーフはおそらくヴィクトリアマイルor安田記念*1

中盤あたりに坂の上り下りがあり、それが終わった後にすぐ第3・4コーナー。最終コーナー曲がりきって立ち上がりかけのあたりから終盤がスタートし、以降直線という最終直線が長いコース。

 

 

 

見渡したメタ(1)と動機

 

チャンピオンズミーティングの次回はマイルだろう、というのは予告が出るかなり前から言われていた。第1回が日本ダービーモチーフの中距離、第2回が天皇賞春モチーフの長距離。そして短距離とダートはどうしても走れるウマがまだ少ないということでマイルが最も有力視されていた。さらに夏近辺に開催されるマイルGⅠは2レースあるが、レース場・距離・方向が同じとなれば研究は非常に早くから着手が可能だった。

まず、というか最も注目されたのはセイウンスカイだった。スピードそのものではなく加速力を上げることで加速時間を短くし他のウマよりも抜け出しやすくする、という基本戦法は強いが、今回のコースでは「最終コーナーに発動する」加速力アップスキルはほぼその性能を十二分に生かすことができない*2のだが、セイウンスカイの固有である《アングリング×スキーミング》は「終盤かつコーナーで先頭にいる場合加速力上昇」なので終盤開始時の加速時間が大幅に短くなり、綺麗に逃げ切ることが可能だった。

そして終盤開始時に先頭にいるために、中盤に加速スキルを割き、序盤は《地固め》で競り合いに勝つ、という【地固めウンス】がメタに浮上した。《地固め》は「序盤の間にスキルを3つ発動した場合加速力が上がる」というスキルだが、緑スキルが全て開始直後に発動しレース終了まで持続するスキルという扱いのため、レース条件が完全に固定されているチャンピオンズミーティングでは確実にレース開始と同時に発動できる。これにより序盤の加速にかかる時間が大幅に短縮され、他に序盤のスピードアップ系スキルを積まなくても非常に前に出やすくなっている。その後は中盤を加速スキルでしのぎ、終盤は《アングリング》で加速した後スキルを切れば終始先頭のままゴールできる、という設計思想である。

この【地固めウンス】の凶悪な部分は、「対策をしなければほぼ絶対に勝ってしまう」というところである。逃げが【地固めウンス】1人の場合、ほぼ邪魔が入らないため簡単に勝ってしまう。少なくとも競り合ってスタミナを減らさない限り非常に事故らせづらく、序盤からしっかり抑え込むためには【地固めウンス】ミラーマッチ、或いは後述の対策が必須になる。対策さえすれば運に左右されるものの他のウマが完全に追いつけない完璧なレース運びをされる、ということは多くはないだろう*3

そんな【地固めウンス】のカウンターとして用意されるのが【蓋ファル子】、あるいは【蓋バクシンオー】である。基本は【地固め】系の応用であり、序盤はセイウンスカイと同様のスキル構成によって競るが、そこから中盤付近でそれぞれの固有である《キラキラ☆STARDOM》*4や《優等生×バクシン=大勝利ッ》*5によって中盤でセイウンスカイの前に出て残りを潰しきる、というレース運びを理想とする。セイウンスカイの固有を継承して本人が勝ちに行くタイプと、終盤の加速スキルを捨てて蓋に徹し他の2人に勝ってもらうタイプの2種類がある。

そして後者、とにかく【地固めウンス】の蓋に徹するタイプが増えると逃げきり決着が減り、先行勢が増える。先行の中でもやはり今回のレースにおいては終盤に発動するタイプの《ブランチャ☆ガナドール》を持つ【先行エル】が入手難易度の低さからも人気が高く、その他にも前側の枚数が少なければ半分逃げのように使えるダイワスカーレットや、覚醒Lvアップで有用な金スキルが貰えるオグリキャップが考えやすい。

ただ、【先行エル】は固有の発動条件がスタミナに余裕があるうえで2着以内であることを要求してくるので、逃げが多くなりすぎると終盤抜けきれず固有が発動しないまま沈む可能性がある。先行が多くなれば、今度は差しが追いつくチャンスが生まれる。先行デバフを初期で持つ【差しグラス】、《豪脚》を必ず手に入れることができる【差しウオッカ】などが筆頭として挙げられる。また、マイル因子の大量継承を前提とした追込バとして【追込タイシン】や【追込ゴルシ】も根強いファンがいると考えられた。

さらに今回はデバフ要因として【デバフネイチャ】の他に【デバフグルーヴ】も差し対策に考慮されていた。概ね出走メンバーに強いこだわりがあるわけではない場合はこのメンバーからまずは考えていくことになる。

だいたいのまとめを見て、私は手持ちを確認した。そもそも私はマチタンイベとジェミニ杯の間に始めた*6人間であり、キタサンも当時はクリークも未所持。ウマは多少人数がいるものの、改造用のマイル☆6以上の継承ウマはおろかセイウンスカイも未所持だ。4凸に達したサポートSSRはイベントの2枚、育成ではA判定すらままならないB+トレーナーだった。だから当然、出るのはオープンリーグ。限られた8200点ぶんのリソースをどこに割くかの限定構築戦。

《地固め》を手に入れるためのSSRパワーオグリキャップ、所持している。《道悪○》はイベントSSRスピードスペシャルウィークが持っている。《夏ウマ娘○》を持つ唯一のサポートであるSR賢さフジキセキも持っている。そして残りの序盤用スキルとして、《左回り○》と発動は確実ではないものの《コンセントレーション》を確保できるサイレンススズカ。つまり、セイウンスカイの固有である《アングリング》を用意できれば、理論上疑似【地固めウンス】が作れてしまう。そして、「できるけどやらない」に目を瞑れるほど、私は黙って負けることを良しとできなかった。

 

 

 

育成方針

 

メンバーは【地固め釣りスズカ】【先行エル】【差しグラス】に決まった。ただしエルもグラスも非固有衣装である。ガチャを回していないので仕方ない。

その他の候補として先行タイキシャトルや差しウオッカも当然検討はされたが、タイキは前述の最終コーナーが早い関係で固有発動タイミングがベストとは言えないためエルを優先することになった。またウオッカは育成目標がバレンタインまでにGⅠを4回*7走る必要があり、上手く負けられず固有レベルが上がって評価点を圧迫してしまうわりには固有衣装でなく強化後の《カッティング×DRIVE!》ほどのキレ味が出ないということで見送られた。そのわりには結局走ってくれた差しグラスは固有レベル3だったのでウオッカでもよかったかもしれない*8

適性を伸ばすことは手持ちの因子の都合上諦め、育成期間中は毎日3回の継承レンタルをセイウンスカイに使って【地固め釣りスズカ】の素振りをして、残りはエルとグラスに充てた。《地固め》ヒント取得打率は3割といったところだったが、因子に《地固め》を含むセイウンスカイを偶然借りられたこともあって10日間ほどの準備期間のうち半分で妥協の着地点になりそうなスズカが完成した。残り2人もどうにか一応の形を成し、これでキャンサー杯までは様子を見つつ、今まで育てていなかったマチカネフクキタルのストーリーでもゆっくり見て……と思っていたのだが。

偶然回ってきた1つのツイートで、メタが回っていた――正確には回っていなかったことを知る。

 

 

 

見渡したメタ(2)

 

前述のメタ回転予想は大きくメインストリームを辿れば、【地固めウンス】←【蓋逃げ】←【先行エル】←【差し勢】←【地固めウンス】というループを構成していた。このうち1つめの矢印は明確なカウンターであるという意味の矢印だが、残りはやや異なる。残りの矢印は、「前の作戦が増えると勝ちやすくなる」という意味の矢印だ。【地固めウンス】を潰すための【蓋逃げ】は中~終盤の加速に乏しいため先行で抜ききれる。そのうち最もポピュラーな【先行エル】は固有発動条件の都合上逃げがいると1人しか固有を発動できず差しウマで差しきれる。序盤後方につける差しウマが多くなれば【地固めウンス】が妨害を受けず逃げきりやすくなる。これ自体は理論上全く問題が無い。

ただしこれは「勝てるなら」の話だ。グレードリーグ出走予定のルームマッチ検証勢が走らせたところ、勝つのは【地固めウンス】や【地固め蓋逃げ】を中心とする逃げ系か【先行エル】を筆頭とする先行系がほとんどで、差しウマが差しきって勝つケースは非常に稀だ、という結論が流れてきたのだ。

考えられる理由は多くあるが、素人なりに考えるとやはりマイルは距離が短いため差しや追込をあまり選びたくないという心理が働いているような気もする。そうなると前が分厚くなるため差しがさらに不安定になる。追込には《不沈艦、抜錨ォッ!》や《迫る影》といったスキルがあるうえにデバフも投げられづらいが、差しはポピュラー故に対策されやすいのもある。

とにかく、たとえ《豪脚》《乗り換え上手》などの差し金スキルを抱えていても、生半可な育成では逃げと先行の厚い壁に阻まれて不安定になる、ということがわかった。もちろん先のデータはグレードリーグ、しかも前もってルームマッチで検証するような熱心な上澄みのトレーナーのデータであるという事実を忘れてはいけない。しかし、実際に見て、納得してしまったからには仕方が無かった。

私の準備期間の残り半分は、《地固め》ヒントガチャより一周の試行可能回数が圧倒的に少なく、かつ時間のかかる《スピードスター》ヒントガチャに割かれた。悲しいことに、《スピードスター》を確率でくれるSSR賢さファインモーションも無凸だが私は持っていた。

 

 

 

育成したウマたち

 

・初代地固め釣りスズカ

1030-488-793-287-437 適性A-A-A 8157点

《先頭の景色は譲らない…!》 Lv1

《アングリング×スキーミング》

《キラキラ☆STARDOM》

《コンセントレーション》

《先駆け》

《地固め》

《左回り○》

《晴れの日○》

《夏ウマ娘○》

 

逃げウマが多いことを前提に《キラキラ☆STARDOM》を中盤加速として用いたタイプ。後述のタイミングで二代目に差し替えられるが、これでもそこそこ走ってくれた。

 

 

・2代目地固め釣りスズカ

1030-547-684-328-432 適性A-A-A 8199点

《先頭の景色は譲らない…!》 Lv1

《アングリング×スキーミング》

《コンセントレーション》

《弧線のプロフェッサー》

《直線巧者》

《地固め》

《左回り○》

《東京レース場○》

 

後述のタイミングで差し替えられた2代目。奇跡のチキンレースに勝利した。スタミナを気持ち50ほど増やしたほか、中盤加速を《弧線のプロフェッサー》にしたことにより、競り合わなくてもちゃんと中盤に加速できるようになった。しかし緑が2つになったため、完璧なスタートを切ると《地固め》が開幕と同時に発動しないという逆下振れが発生してしまうようになり、それに苦しむこともままあった。

 

 

・先行エル

958-537-744-242-420 適性A-A-A 8181点

《熱血☆アミーゴ》Lv2

《弧線のプロフェッサー》

《スピードスター》

《食いしん坊》

《マイルコーナー◎》

《夏ウマ娘○》

 

今回の稼ぎ頭。《マイルコーナー◎》《弧線のプロフェッサー》からの《スピードスター》で逃げとの距離を詰めて固有発動をしにいくタイプ。逆に固有が発動できない場合はまったくと言っていいほど勝てず、かつ同時に出したスズカが強いためギリギリまで粘ってしまい相手の逃げ-スズカ-エルのような形になってスズカもエルも固有を発動できない、という事故は多かった。

 

 

・初代差しグラス

869-594-827-286-469 適性S-A-S 8138点

精神一到》Lv3

《大局観》

《全身全霊》

《位置取り押し上げ》

《差し切り体勢》

《先行焦り》

 

適性が超成功したが《豪脚》を完走しなかったのもあって《全身全霊》のバックアップでうまくやろうとした型。他の【先行エル】に多少のスタミナデバフを投げるための《先行焦り》。最終的には2代目と交代となった。

 

 

・2代目差しグラス

911-514-805-248-438 適性A-A-A 8162点

精神一到》Lv3

《弧線のプロフェッサー》

《豪脚》

《差し切り体勢》

《外差し準備》

《集中力》

《読解力》

《東京レース場○》

 

差し替え後のグラス。デバフを抜き《大局観》をグレードダウンさせた代わりに、中盤~終盤頭までのスキルをいくつか差した。結果としては勝率そのものは大きくは変わらなかったが、逆に言うと初代のほうが良かったわけでもなかったというのは大いに参考になった。

 

 

・差しコンドルパサー

925-483-836-327-437 適性A-A-A 8108点

《熱血☆アミーゴ》Lv2

《乗り換え上手》

《豪脚》

《大局観》

《外差し準備》

 

一時期思いつきで余裕のあるタイミングで入れてみたもの。詳細は後述。悪くはなかったがやっぱり不安定だった。

 

 

 

本番の記録

 

当時キャンサー杯を観戦しながら取ったメモをおおむね無編集で垂れ流す。

マッチングは基本的に各ラウンドの開始直後12時半ごろ、または午後7時~0時の間に回している*9

 

・1回戦1日目1走目(3-2)

 ・スズカ1-エル5-グラス2
   地固め逃げがうちのスズカ1人、デバフも無し。釣りと固有発動。そりゃ勝つ。
 ・スズカ4-エル7-グラス1
   地固めファル子にスズカが潰されるも、別チームのタイキにファル子のアングリが潰される。6位まで3バ身の大混戦の中、大外回って《全身全霊》と固有が打てたうちのグラスが差しきった。
 ・スズカ7-エル1-グラス2
   先行オグリにギリギリスズカが捕まり釣りできず。ただそこの外からさらに突っ込んだエルが終盤入って固有発動した瞬間ほぼ勝負あり。競っていたのでスタミナ消費が激しく、最後は立ち上がり気味だったので危なかった。
 ・スズカ3-エル4-グラス2(1着先行エル)
   エル掛かりで固有発動せず、スズカは継承固有特有の釣りガチャ失敗。グラスは粘ったが相手の調子が良く固有の発動したエルには届かず。
 ・スズカ3-エル6-グラス2(1着差しルドルフ)
   釣りガチャ失敗。かなしい。エルはバ群に入って固有が出ず、グラスも皇帝の神威の加速倍率に1バ身差で敗れる。というか勝った皇帝がスピ1000パワー985でスキルが固有Lv3と乗り換え上手のみという「走ってくれ頼む」感。芝とマイルがSになってるし、これでもいけるの参考になるという感じ。

 

・出走者変更

あまりにも先行バが多く、エルが先行バに沈んで固有を踏めないケースが多いと判断。Aグループ進出も決まったので、逃げ-差し-差しの2差し構成を試してみる。

 先行エル⇔差しエル

 

・1回戦1日目2走目(4-1)

 ・スズカ2-エル1-グラス4
   逃げ6人-先行1人-差し2人。うちのスズカがアングリ+固有発動したうえで固有発動したエルがすっぽ抜いた。つよ。
 ・スズカ3-エル4-グラス2(1着地固めスズカ)
   逃げ5人。相手のスズカが中盤開始時ごろから綺麗なレース展開をして追いつけず。
 ・スズカ3-エル1-グラス2
   相手の蓋スズカを地力だけで抜いたが競っていたためスズカは固有を吐けず、絶体絶命かと思ったらエルが綺麗にクリーンアップしてまとめて差しきった。残りが全員先行でグラスのデバフも綺麗に刺さった。
 ・スズカ2-エル1-グラス3
   完璧なレース展開をした自分チームのスズカを綺麗に差しきるエル。このエル強くないか????
 ・スズカ1-エル4-グラス3
   差し5名。競り合いが大きく起こったせいかエルの固有が発動せず、スズカの固有は踏んだがアングリが発動しないとかなり危険だった。しかし固有発動した先行エルを内から自力でスズカが差し返し、差しオグリをクビ差でかわしてゴール板。

 

・1回戦1日目3走目(1-4)

 ・スズカ7-エル5-グラス4(1着差し新テイオー)
   スズカが掛かってエルグラが出遅れる。お前ら。スズカはおそらくスタミナ不足でアングリ+固有後も下がっていき、差し勢はまったく差し切れなかった。スキルの発動も遅かった。
 ・スズカ4-エル2-グラス3(1着追い込みマイルSゴルシ)
   スズカの固有が先頭にいるのにずっと発動せず、最後には内からゴルシに差し切られた。というかマイルゴルシに対しては祈ったほうが早そう。
 ・スズカ5-エル3-グラス2(1着先行エル)
   スズカが掛かってエルが出遅れる。お前ら。逃げ1人だったものの最終的にスタミナ不足で固有発動後すぐに抜かれ、グラスは目の前のルートを潰されて差しきれず。
 ・スズカ3-エル4-グラス2(1着ウンス)
   エル掛かる。スズカの中盤加速が足りない(競らないと加速しない)うえにスタミナがないのが響いているっぽい。エルに関してはわりと常にどうしようもない運用素で負けてないか?
 ・スズカ6-エル1-グラス2
   スズカが掛かってエルが出遅れる。テンプレか? エルが最終的に先行勢を最終直線入り口でごぼう抜きして固有も出たので勝ち。

 

・出走者変更

やはり差し2枚は他のトレーナーの編成に大きく依存し安定しないということで先行エルに戻す。

また、スズカがゴールする際には頭が上がっていることも多くスタミナ不足が考えられるため再育成。結果として中盤の加速を金スキルに変更したうえで8199という奇跡のスズカが完成したためそちらに差し替える。

 差しエル⇔先行エル

 初代地固め釣りスズカ⇔2代目地固め釣りスズカ

 

・1回戦2日目1走目(2-3)

 ・スズカ2-エル4-グラス3(1着差しウオッカ
   釣りガチャ失敗、エルも前を塞がれて固有発動せず。やっぱり加速力が足りない。
 ・スズカ2-エル3-グラス4(1着先行エル)
   スズカの固有が出ない。エルの固有も出ない。1着のエルは金加速無しで神威+貴顕+精神一到で鋼の意志。先行が多すぎることを鑑みてなんだろうか。
 ・スズカ1-エル2-グラス3
   スズカの固有が出ないが地力でどうにかした。エルの固有も出たので2着に滑り込む。蓋しきれなかった蓋バクシンオー以外逃げがいなかったことを考えても、やっぱり固有を発動するには加速が足りていないのか……?
 ・スズカ8-エル3-グラス4(1着両S追込タイシン)
   普通スズカの隣が絶好調逃げダスカ。あとエルが出遅れる。賢さ上げたら出遅れないようにならんか? 完全にエルは出遅れたせいで隣の先行エルに勝てず。なお勝ったのは最後ごぼう抜きしたタイシン。
 ・スズカ4-エル1-グラス2
   スズカ掛かって先頭は蓋バクシンオー。蓋のバクシンオーを踏んでエルがどうにか固有発動してハイジャンプしていった。

 

・1回戦2日目2走目(4-1)

 ・スズカ2-エル1-グラス3
   エルの調子が良すぎるときはスズカにかなり詰め寄れるためスズカの固有が発動しない。あとスタミナ600いる気がしてきたけどもう地固めガチャしたくないという欲もある。
 ・スズカ2-エル1-グラス6
   逃げ単騎だったが調子は不調。というか先行バクシンオー2枚ってそんなに流行ってるのか? 最終的にはバクシンオー2枚の外にきっちり回れたエルが2着からアミーゴしてムーチョムーチョ。
 ・スズカ2-エル1-グラス3
   グラス出遅れ。逃げマルゼンに外を塞がれてスタミナ消費は激しそう。グラスはウオッカがぴったり外につけていておそらく厳しいだろうなと見ている。久々にスズカの固有が発動したが、固有の発動したエルがあまりにも強い。
 ・スズカ1-エル6-グラス4
   地固めではないマイルSウンスと地固めではない先駆け釣りダスカ、芝CのC+ランクファル子に先行D+ゴルシに先行C+女帝がいるどうなるか展開がまったくわからんマッチアップ。本譜ではエルが出遅れて最終コーナー入りで8位。お前は差しウマか? レースそのものはスズカが蓋しきって固有込みで3バ身差つける理想展開でした。
 ・スズカ6-エル2-グラス3(1着先行ダスカ)
   逃げが不調のブルボン1枚、差しが計5枚で先行はエルとダスカだけというそこそこなチャンスマッチな気がしていました。最終的にブリリアントレッドエースから理想的な先行エルと同じ動きをされた。ただ多分エルが内に入ってなかったら勝ってたので、わりと運負けって言いたい。

 

・1回戦2日目3走目(5-0)

 ・スズカ1-エル4-グラス3
   エル出遅れ定期。しかも掛かった。賢さが足りないのか? レースはカレンチャンに追い縋られるもアングリ発動で一瞬差をつけた後に固有で引き離す理想展開。
 ・スズカ6-エル1-グラス4
   グラス出遅れ。逃げ単騎なのでガンガン逃げるが、デバフネイチャにデバフをガンガン投げられる。最終的にはエルが理想立ち回りをしっかり披露してスピスタから固有で3バ身ぐらい離した。デバフがどこまで行っても勝ちづらい理由。
 ・スズカ6-エル1-グラス3
   デバフネイチャ再び。しかし最終直線で加速しきってからデバフを投げても遅いのだ。先にスタミナをがっつり減らす必要があるが、差しが極端に多いうえに食いしん坊もしっかり発動したので固有が発動してデバフの鎖を引きちぎった。
 ・スズカ1-エル5-グラス6
   エル出遅れ。しかも同型エルがいるのでかなりキツい出遅れ。最終的にアングリ固有でも相手エルがぴったりついてきたが、ハナ差で根性勝ち。やっぱり「上手く行った先行エル」がこの世で一番強い感じがある。
 ・スズカ2-エル1-グラス4
   逃げ焦り型蓋バクシンオーがいたが終始スズカの後ろを走っていたので問題なかった。蓋の場合でも地固めには地固め以外の戦法がかなり勝率低そう。なお最終的にはエルの理想展開も同時発動したのでエルが勝ちました。

 

 

・2回戦A1日目1走目(3-2)

 ・スズカ7-エル1-グラス3
   地固め蓋芝ファル子初遭遇。きっちり蓋をされきってスズカが何も発動せずに沈む。しかし終盤しばらくまで3位できっちり粘ったので相手の先行エルの発動が遅れ、こっちの先行エルは2位につけられて固有発動から引き離した。それにしてもこの地固め芝ファル子、地固め緑スキル◎4つと固有Lv4を両立しつつついでに末脚取って999-581-844-305-234なので凄い。緑はどうせ確定発動するので賢さはほとんどいらないという判断かと思われる。蓋ファル子-先行エル-ウオッカなのでガチ勢だな……
 ・スズカ5-エル1-グラス3
   エル出遅れ。非地固めブルボンをきっちり抑えきって加速スキルを踏みつつ固有を取れたので出遅れても勝てる。先行ためらいを3つ投げられたが、逃げと先行が6人いたせいで差しが結局抜け出せず先行エルどうしの争いになったため無意味だった。おそらく差しが勝つには、逃げ/先行が本当にまとめて沈むぐらいの大きな上振れが必要。
 ・スズカ8-エル1-グラス3
  スズカエル掛かり。逃げ2-先行6の地獄展開。女帝の《幻惑の攪乱》が範囲どこに刺さるかがかなり重要になった。本譜ではエルが掛かったがどうでもいいとばかりに最終コーナー入りでスズカをぶっこ抜き、他の先行を恐ろしいほど引き離しながらそのまま固有から本当に何事もなかったかのように3バ身半つけて勝った。スズカは掛かったのとエルの調子が良すぎたのが考えられる。
 ・スズカ8-エル3-グラス5(1着先行エル)
   逃げ先行牽制/逃げ先行差し躊躇い/追込駆け引き+動揺デバフの鋭い眼光、という金スキルを捨てて戦うデバフネイチャと、地固め釣りバクシンオー。891-611-1036-313-618で強化固有2以外ノースキルの身体が資本先行エルもいるかなり独特のマッチアップ。スズカが逃げ勢の中で最も外枠を引かされたのもあり中盤を2位で進まされ、エルが逃げ勢の中をかき分けて進むこともできなかった。
 ・スズカ3-エル5-グラス2(1着先行グルーヴ)
   トリック前後/先行差し駆け引き/逃げ先行差しためらい/先行追込焦りというデバフグラスがいる。結局デバフが僅かに響きスズカの固有が発動せず。たぶん発動してたら勝ってた。

 

・2回戦A1日目2走目(2-3)

 ・スズカ3-エル1-グラス6
   デバフ女帝とデバフクキタル。レースはスズカの固有が発動しないが、先行エルの理想が通って綺麗に1位。
 ・スズカ3-エル7-グラス2(1着地固めスズカ)
   デバフ-デバフ-地固めスズカの理論値編成が理論値走った。というかデバフ勢4枚は無理すぎんか?
 ・スズカ5-エル1-グラス8
   エル掛かり。掛かったわりにコーナー入り口ぐらいで1位に立ち、そのまま熱血アミーゴ。掛かるとスズカを潰してしまうのが怖いところ。
 ・スズカ8-エル7-グラス4(1着逃げスズカ)
   地固めマルゼンと地固めでもないスズカとファル子がいた。しかも逃げ勢の中で一番外枠を引かされている。最終的に逃げの中で一番内枠を引いた人が勝つだけのゲームでした。
 ・スズカ3-エル5-グラス4(1着先行バクシンオー)
   エルが掛かる。エルが内に入り抜けず、かつ最終コーナー手前でバクシンオーに被せられたためスズカも勝てず。

 

・2回戦A1日目3走目(2-3)

 ・スズカ6-エル7-グラス3(1着先行エル)
   エルが出遅れて差し勢より後ろに行く大惨事。しかも掛かる。地固め蓋ファル子もあってスズカもずるずる後ろに下がり、ほぼ何もいいところなし。
 ・スズカ6-エル5-グラス4(1着先行エル)
   地固めスズカvs地固めスズカだったが、うちのスズカだけコンセントレーションが発動しないという超下振れ。相手の先行エルがポジションを取ったこともあり、カウンタープレイなし。
 ・スズカ3-エル1-グラス2
   ファル子はいたが地固めではなかったためスズカがきっちり先頭維持。マイルコーナー/スピスタ/プロフェッサーがほぼ同時に発動し最終コーナー手前でエルが先頭に立ち、固有も発動し文句なし。
 ・スズカ1-エル5-グラス6
   グラス出遅れ。地固め蓋ファル子がいたがどうにかこうにかブロックに成功。スズカが久々に固有の発動に成功し、オグリを半バ身かわしてギリギリ逃げ切った。エルは先行どうしのポジション取り合いに敗北。
 ・スズカ9-エル3-グラス7(1着差しウオッカ
   エル、加えてコンセを積んだスズカがまさかの「出遅れ」。ついでにエルは掛かりも出した。正直それ以外に言うことは特にない。

 

・出走者変更

グラスのデバフがほぼ影響なしであることが考えられたので、少しでも可能性を上げるためにデバフを除いて走れそうなスキルを入れる形に変更。余裕があれば皇帝の神威型も作る。*10

 初代差しグラス⇔2代目差しグラス

 

・2回戦A2日目1走目(2-3)

 ・スズカ2-エル1-グラス3
   エル出遅れ。地固め逃げもいなかったしブルボンが一瞬危うかったけど理想展開からエルがちぎった。
 ・スズカ5-エル4-グラス3(1着先行エル)
   エルとグラスが掛かる。仲良しか?? スタートが良すぎて地固めが発動しなかったのが敗因。
 ・スズカ4-エル6-グラス3(1着逃げマルゼン)
   スズカ、またもスタートが良すぎる。しかもエルもスズカも掛かる。やっぱり緑3つではなく緑2つとコンセなのが響いている。今回のエルはわりと論外でした。
 ・スズカ1-エル6-グラス3
   久々にスズカのみ理想の走り。やっぱりウンスとファル子には地固めを積んだほうがよさそう。
 ・スズカ2-エル8-グラス3(1着先行エル)
   うちの先行エルだけ外を潰されるかなしい走り。やっぱり差しは助走距離が足らないうえに、終盤発動の加速スキルを積んでいる先行が多すぎる。

 

・2回戦A2日目2走目(2--3)

 ・スズカ7-エル3-グラス2(1着先行エル)
   エル出遅れ。勝てそうな編成の時だけ出遅れるな君。本当に出遅れたせいで相手の先行エルに2位を譲って負け。
 ・スズカ1-エル4-グラス5
   なんとか逃げダスカと逃げバクシンオーがいたが逃げの中で最内(7枠)を引いたので先頭に立ち、アングリ+固有から先行ウオッカの追撃をかわして1バ身。エルとグラスは先行が多すぎて沈んだ。
 ・スズカ8-エル1-グラス4
   エルが出遅れるが、どうにか先行4人の間をするするっと抜けて2番につける。最終コーナー途中でエルが先頭にたち、グラスも終盤しばらくまでギリギリ2位を粘る。その後2番を譲ったのがエルではなくタイキだったのもありムーチョムーチョ。
 ・スズカ2-エル3-グラス4(1着先行エル)
   相手のエルが理想展開。これに対するカウンターが「相手が理想展開をしないことを祈る」なの、かなりアレだな……
 ・スズカ8-エル7-グラス2(1着差しウオッカ
   エルの加速が足りず、地固めスズカミラーマッチに敗北。先行グルーヴと相手のスズカの一騎打ちになったが、最後はスキルが集中力と末脚だけの身体が資本ウオッカの前に道があった。

 

・2回戦A2日目3走目(4-1)

 ・スズカ8-エル3-グラス4(1着先行オグリ)
   エル出遅れ。逃げ勢への対策は「内枠を引くこと」だと思う今日この頃。逃げ-先行勢が完全に団子になり、エルの固有が遅れたうえで前を塞がれる。最終コーナー終わりでギリギリオグリに先行され、あとはそのまま。
 ・スズカ2-エル1-グラス7
   グラス出遅れ&掛かり。スズカがもう1人いたが、S862で加速金スキルなしのバランス型半分身体が資本タイプだったためエルが問題なく前に出てトベ・ブランチャ。
 ・スズカ6-エル1-グラス4
   スズカ掛かり。地固めなしファル子が早々に固有を発動したっぽいがスズカに追いつけず、固有を切ってしまったせいでエルが抜くことができ2位から熱血アミーゴのラリアットで吹き飛んだ。そうじゃなくても根性をCまで上げた犠牲にスピードが750弱だったので完全に蓋用に割り切っていたのかもしれない。デバフは3人いたが理想展開エルにはやはり無意味だったっぽい。
 ・スズカ2-エル1-グラス4
   大外スズカに大内エルという考え得る限り最悪の枠番。ウンスが地固めを持っていなかったのでハナを奪うことはできたがデバフが乱れ飛ぶ。アングリは発動しなかったがスズカ固有は発動、その直後にエルも固有が発動し内から抜け出したエルがゴール板。っていうかこのウンス、764-818-708-494-732でスキルが固有しかない身体が資本タイプだ。
 ・スズカ2-エル1-グラス3
   エル出遅れ。しかし前め勢が逃げタイキと先行タイキしかいなかったこともありエルが理想展開。一瞬だけ2位に浮上した後に3位になるが、その一瞬でちゃんと固有を切ってくれたので再加速できた。

 

 

・決勝A

[1]○差しネイチャ【完全デバフ型】
[2]自先行エル
[3]●差しグラス【パワー1050、スピード900でスキル3つの身体が資本】
[4]●先行グルーヴ【かなりデバフ寄りの型】
[5]自逃げスズカ【地固め】
[6]○差しウオッカ
[7]●先行ダスカ
[8]自差しグラス
[9]○逃げファル子【地固め蓋、発動する緑6つ】

 

よりによってスズカ出遅れで大外引いてくれたのに芝地固めファル子がコーナーまでどうにもならなくなる。ついでにグラスも掛かる。こうなるとスズカは逆に走れずにエルが2位につけたほうが強いのが悲しい。なおそのスイッチに成功したもよう。ファル子を内からしっかり潰し切り、デバフの波をかき分けて進むエルはまさに天空を駆ける猛禽。やっぱカウンターないじゃないか理想展開エル!

 

 スズカ7-エル1-グラス2

 

 

 

 

勝敗記録

 

勝負:35/61
勝率:56.7%

 

勝ちウマ
・エル:25回(うち差し4回)
・スズカ:9回
・グラス:1回

 

負けた時の1着

・地固め逃げ:2(ウンス/スズカ)
・その他の逃げ:3(ウンス/スズカ/マルゼン)

・先行エル:10
・その他の先行:4(ダスカ/グルーヴ/バクシンオー/オグリ)

・差し系:5(ルドルフ/新テイオー/ウオッカ3)

・追込:2(ゴルシ1/タイシン1)

 

 

 

決勝と全体の反省

 

決勝の構成を見ると、大きな勝因として考えられるのはやはり逃げ勢と先行勢のメンバーだ。自チームを除いた中で唯一の逃げであった9番スマートファルコンは完全に蓋役で、中~終盤は固有以外に加速スキルがなかった。また先行はスキル枠を半分デバフに割いた4番エアグルーヴと終盤直線入ってから多くの加速スキルが発動するような形の7番ダイワスカーレットだったため、第3コーナーからコーナー立ち上がりにかけて加速する自チームの先行エルのほうが先に前に出たうえで固有加速しきることができ、最終的には先行エルが勝利した、と考えられる。

最終的にはやや勝ち越した、というところも含めて相手の構成を見ると、【地固め逃げ】はやはりオープンリーグでは枠の圧迫も含めてかなり難しいと判断されたように見える。マッチング率は高くなく、芝蓋ファル子にも地固めを積んでいないパターンも見受けられた。だが【地固め逃げ】が安定してしまえば余程のことがない限り*11ハナを取って他の逃げの序中盤を抑えることができるので、かなり他の逃げの牽制になった。そこで他の逃げを沈めて先行エルと自分の逃げウマで前方を確保し他の先行も落とす、という戦法が今回かなり決まったので、かなり効率のいい勝ち方ではあったと思う。

しかし今回のレースメンバーが構成として最適解だったか、と言われると、当然に非常に疑問が残る。例えばスズカはセイウンスカイの方がいいという点を除いても《先頭の景色》以外に終盤発動するスピード系スキルが足りず、固有を踏んでからも差しきられてしまうパターンが何回も発生した点がある。解決策は《末脚》か、さもなくば《直線巧者》系が後半に発動することを祈るのが一番な気もするが。

全体のバランスの話をするのであれば、やはり《地固め》が(最終的な勝率にかかわらず)常にメタの中心にいたように感じる。逃げウマの育成が簡単であるというのも相俟って逃げを編成に入れないという人が多くなく、その中でさらに安定して抜け出すために《地固め》が出せるというのは非常に強い。しかし《地固め》そのものはレース条件が固定されているチャンピオンズミーティング以外は開幕と同時に発動させることが難しくそこまで強くないスキルであり、直接効果量を減らしたりするよりも「緑スキルを発動するスキルではなくパッシブ扱いにする」あたりが妥当かと思われる。【地固めウンス】が強いのはやはり序盤抜け出して中盤をスキルで繋ぎ終盤を固有で飛ばせる、ということなので、安定性がなくなればロマンと勝ち筋をきっちり残したうえで支配的でなくなるという気がしなくもない。

なお次のチャンピオンズミーティングがアイビスサマーダッシュ*12だと《スピードスター》も《弧線のプロフェッサー》も発動しなくなるのでおそらく逃げ-差し-追込構成が一番強い気がする。問題は追込バの適性だが。

 

 

 

後書き

 

ということでキャンサー杯は以上。サポートも重なっていないなりに頑張りました、という感じです。

なんだかんだ苦しい時もあるけど楽しくやれているので、今のところはこのゲームが続きそうなのが最大の収穫です。こういう育成系のゲームにほとんど触れたことがなかったので、メタ読みとかもかなり雑で申し訳ないですが。

あと睡眠不足状態でとったメモ、あまりにもブログに掲載するのが躊躇われた。今度はちゃんと動画撮って見直しながら後でメモを取るか、さもなくばダイジェストでお送りします。まあ毎月この記事をやる必要も多分ないので次がいつになるかわかりませんが。今回は偶然自分の手持ちでかなり理想のひとつに近い形ができただけですし。早く全力で回していいようなガチャが来てくれ。キタサンとかクリークとかそれに近しい何かとか、先行用金スキル持ちの新規SSRとか。

ということでまた何か思いつきましたら。

*1:同条件。開催月的には安田記念のほうが近いか。

*2:終盤手前なため終盤開始時の加速時間を短くすることはできず、かつすぐ終盤になり他のウマも加速しはじめるため加速力強化がそこまで差がつかない

*3:少ないとは言い切れない、というか【地固めウンス】が複数いる場合はたいていどれかが勝つので結局この戦法じたいの勝率が維持される。

*4:中盤直線で1位、かつ後ろと距離が近いとスピードアップ

*5:レース進行度50%以上、かつ前のほうで競り合うとスピードアップ

*6:アカウントそのものはもう少し前からあったが、イベントSSRスペシャルウィークは無凸だしマチタンに至っては1枚も持っていない

*7:うち1回は「出走」の有馬記念なので問題ないのだが

*8:とはいえウオッカの最大の利点である「覚醒Lv上昇で《豪脚》が貰える」という点についてはSSRパワーオグリキャップがいるので優先度が低かったというのはある

*9:少しでも人口が多い時に回して非ガチ勢の人と当たりたかった。

*10:編註:ありませんでした。

*11:余程のことはそこそこ見受けられたが

*12:新潟・直線・1000m(短距離)。

早押しクイズ初心者民が考える「クイズ de シンデレラ」

※2021年4月1日のエイプリルフール記事です。また、「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ」の4月1日限定開催イベントの要素を含みます。

 ※追記:4月1日限定要素ではなくなりました。

 

 

(諸々を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説

 

お疲れ様です。斬進です。本日はオープンβが始まったばかりですが無限に時間が溶けていくことに定評がある「クイズ de シンデレラ」を、クイズ見る専&アイドルの知識はほぼ受動喫煙である私が自分への備忘録も兼ねて見ていければいいなと思ってキーボードを叩いています。

初めに断っておかなければならないのですが、レートはそこまで極端に上ではないどころかたぶんめちゃめちゃ下です。何せこのクイズ、プレイヤーの得手不得手が非常にはっきりしているので推し問*1が偏って来ると基本的に勝ちづらい。さらに1問正解した後の誤答ペナルティが後述する通りそこそこ重いので、1つ正解を積むと誤答しづらい(=攻めづらい)。あとそこまで新しくもないスマホがめっちゃ熱くなって定期的にアプリが落ちて4位になるので、そういう事情もあってレートは上がってないということをご了承ください。あと単純にクイズが難しい。

 

 

 

 

仕様

 

1v1v1v1の4人対戦の早押しクイズで、ボタンは3人まで点く。(解答権を得られるのが3人まで。)

解答は1文字ずつ5秒以内に選択していく形で行われ、不正解の場合は即座に解答が停止される。解答選択肢はdebutが2、regularが3、proが4。また難易度によって一部の問題が出題されなくなる(要検証)。

正解者はボタンをつけたのが1番だった場合は30pt、2番か3番だった場合は20pt。不正解だった場合は同じぶんのptがマイナスされ、ペナルティが1つ付与される。点数はマイナスにならず、0ptで誤答しても0ptのまま。ペナルティ4つで失格となり、その場で最下位になる。

100pt以上に到達したプレイヤーが出た時点で終了。また、15問(詳細不明、追加情報求む)終了時に決着がついていない場合も終了。

 

 

 

個人的なゲーム運び戦略

 

ということで、仕様上相手に干渉するチャンスが「相手の1番解答を奪う」か「相手の3番解答を奪う」しかないので、たぶんどっちかというと自分がミスしないことを意識してプレイしていったほうがいいと思います。そのうえで自分の知っている問題についてはなるべく早く押しに行く、正答率の低い問題を拾えるようにするなどで点数の差をつけていくのが個人的な戦略です。基本的に問題文が一種類に確定するポイントは早いが1つにつき情報がひとつであり、問題がわからなかったらそこからわかるようになることがない*2ので「迷ったら押すな」。読ませ押し*3とかもないのでわかってから押しています。

あと、最初に正解するまでは誤答のリスクがペナルティしかない、というのも注目するべきところ。多分2バツがつくまではある程度攻めた早めの押しをしていっても大丈夫だと思います。当たれば重畳、外れても相手のポイントを得る機会を減らすことができるので。ただし3つバツがつくと1問も間違えられないので、個人的には2バツまでが限界かなという気がします。あと正解した場合はいのちだいじにした方が良さそう。他が正解する中で30ptのマイナスはかなり重い。

ある程度余裕が出てきたら、何回かみた問題の中からいくつか「これは何文字か見たらいつでも即押せる」という問題を作っておくとたぶん精神衛生的にいいと思います。これが来れば30pt固い、というのを置いておくと心の支えになる。ちなみに私は「使用人*4「#○*5を常に張ってます。

 

 

 

問題の種類・傾向と対策等

 

アイドル名の読み仮名

漢字表記のアイドル名が表示され、名前をひらがなまたはカタカナで解答する。

恐らく一番簡単な問題。問題文のテンプレとしておそらく「(アイドルの名字)までで確定する。他の問題文で文頭にアイドルの名前を持ってくる場合は鍵かっこがつかない。

安定して押していきたい問題なので、出た際には取りこぼさないように。うっかり間違えやすい例として江上えがみ椿つばき日下部くさかべ若葉わかば成宮なるみや由愛ゆめなどはしっかり確認しながら入力した方がいい。

 

SSR衣装当て

SSR衣装のアイドルのシルエットが表示され徐々に明るくなる。または、SSR衣装のアイドルのアップが表示され徐々に引いた絵になっていく。(おそらくすべて恒常1周目の衣装? 要検証)

待てば顔が写るため、わかるタイミングで押していきたい。ただ、シルエットでも非常に特徴的な[ひらめきロボティクス]池袋晶葉*6や[新・世・界]ヘレン*7、[笑うたい樹]上田鈴帆*8などは即座に反応していきたい。また、恒常アイドルをアバターとして設定している場合はそれをヒントに押すことも可能。

 

パーソナルデータ穴埋め1

アイドルの名前を出し、身長・年齢・血液型・出身地を問う。

個人的に非常に苦手な問題。担当アイドルや推しアイドルでない限り正確な数値はアイドル詳細画面とガシャ画面で流し見してしまうステータスなので、そこ以外は特徴的な数字だけ押さえてスルーするのが無難。というか人数が多すぎるので全部覚えるのは至難の業。

以下は個人的に覚えやすいと思っているアイドルデータのメモ。

  • 輿水幸子/星輝子/白坂小梅…身長142cm。ユニット「カワイイボクと142's」を結成している。
  • 諸星きらり…身長186cm。デレマス最高値。
  • 横山千佳…身長127cm。デレマス最低値。
  • 早坂美玲…宮城出身。サプライズ出演が決定した舞台が5th宮城公演であり、初ライブが凱旋公演だった。
  • 佐久間まゆ…仙台出身。県ではなく都市なので注意。
  • 辻野あかり…山形出身。ネットミームにもなった。
  • 大槻唯/城ヶ崎美嘉/城ヶ崎莉嘉…埼玉出身。アイマスのギャルは埼玉出身の法則。
  • 藤本里奈…湘南出身。地域名。なお向井拓海は普通に神奈川出身。
  • 上条春菜/土屋亜子…静岡出身。1コマ劇場で出身地を間違えられやすいネタがある。また、土屋亜子と幼馴染の大石泉/村松さくらも静岡出身なのでコスパが良い。
  • 沢田麻理菜…長野出身。サーフィン好きだが海なし県出身。同郷の同い年であることを言及している佐藤心も長野出身。
  • 丹羽仁美/財前時子…名古屋出身。都市名シリーズ。
  • 櫻井桃華…神戸出身。こちらも都市名。
  • 三好紗南…香川出身。よりにもよってゲームは1日1時間を遵守させられる。
  • 姫川友紀…宮崎出身。某実在の球団はだいたい宮崎キャンプを冬に行っている。
  • 安部菜々…ウサミン星。
  • 夢見りあむ…やさしい世界。
  • ヘレン…海の向こう。

また、海外出身のアイドルも多いが都市名と国名が入り混じっているので注意。

 

パーソナルデータ穴埋め2

アイドルの趣味からアイドルの名前を当てる。または、アイドルの名前からアイドルの趣味を当てる。

本人の大きな特徴に関わるもの(例:「新作ドーナツの試食」「イグアナのヒョウくんと遊ぶこと」「漫画描く」「サッカー」「乳搾り、トラクターの運転」「着ぐるみ集め」)はともかく、そうでない場合は非常に難しい。特徴的なものと自分の記憶に頼れないものはスルーしたほうがいいと思われる。

しかしここはかなり覚えやすいこともあり、点差をつけやすいところでもある。後述のウワサ問題も含めて、見た問題から徐々に知識をつけていきたい。

以下は個人的に間違えやすいと思っているデータのメモ。

  • 「友達とおしゃべり」は今井加奈の趣味。島村卯月は「友達と長電話」。また、単に「おしゃべり」は赤城みりあ、「友達と電話」は野々村そら。
  • 「笑顔の練習・アイドルレッスン」は白菊ほたるの趣味。関裕美は「アクセサリー作り」。
  • 「甘いお菓子を食べること」は該当者が複数いそうだが榊原里美の趣味。例として十時愛梨は「ケーキ作り」、槙原志保は「スイーツ巡り」。
  • 「なし」は双葉杏の趣味。おそらく書くのをめんどくさがった。
  • 芸術鑑賞系はクールに多く、「クラシック鑑賞」は黒川千秋、「アニメ鑑賞」は神谷奈緒、「音楽鑑賞」は多田李衣菜、「ホラー映画観賞」は松永涼、「ホラー・スプラッタ映画観賞」は白坂小梅、「映画観賞」は速水奏、「オペラ鑑賞・宝塚鑑賞」は西川保奈美。特に松永涼白坂小梅は取り違えやすい。
  • 「猫と縁側でお昼寝」は上条春菜の趣味。前川みくは「猫カフェ巡り」。
  • ほとんどイメージが無いが、久川凪の趣味は「写真・ポエム・読書(親書)」。ポエムから思い出せるかどうかがカギ。

 

アイドルのウワサ

ローディング画面に出るアイドルのウワサ全文からアイドル名を当てる。または、アイドルのウワサの一部分を穴埋めする。

無意識に読んでいることもあってある程度当てやすい問題だが、○が出るまでは答えるべきなのがアイドル名なのかウワサの一部分なのかが確定しづらい。聞いてくるような名詞が存在するかどうかを瞬時に判断しつつ、ある程度経験を積んでいくのがいいと思われる。

また、一部のウワサは本文からアイドルを変則的に推測できるものもあるため、一考の価値はある。(例:「動揺するとすぐ目が泳ぐらしい。」→水泳が得意な西島櫂、「人波にも弱いらしい。」→カナヅチな瀬名詩織、「MCでも鋭いパス回しが好評らしい。」→バスケットボールが得意な愛野渚

 

ユニット名

アイドル構成メンバーからユニット名を当てる。

おそらくデレステで曲を歌っているユニット、かつデレステ内でユニット名が明言されているユニットに限定されている(要検証)ので対策は非常に容易。アイドル名、と文章が続いた場合はほぼ確定でこのタイプの問題なので心の準備をするのがいいと思われる。

ただし一ノ瀬志希はここまでだとデュオユニットに限っても「レイジー・レイジー*9と「Dimension-3」*10で2択になるなど、一部の問題文はここまで聞いても確定しないので注意が必要。

また後述のイントロクイズの項にも共通するが、スペルミスや表記ブレに注意。

 

イントロクイズ

問題開始後しばらくしてからイントロが流れはじめ、曲名を当てる。または、問題開始後しばらくしてからソロ曲のイントロが流れはじめ、歌唱アイドルを当てる。

BGMが流れず問題文がで始まったら100%イントロクイズなので急いで音楽を聴く準備を整える。ゲームプレイ時間が長いとかなり簡単に感じるクイズのひとつ。ただし最近追加された曲などは相対的に聴く総時間が短くなりがちなので、心当たりがパッと出なかったら大人しく見送ろう。

また、記号や表記ブレ、スペルミスなどで細かく失点しがちなジャンルでもある。幸いにも記号の数*11は入力方法の関係上聞かれることはないが、『ミラーボール・ラブ』や『エヴリデイドリーム』がブかヴか*12、『Twin☆くるっ★テール』はどっちが☆か*13などは見直しておくと余計な失点を減らせるかもしれない。

 

振りつけ当て

レーニングウェアで踊る島村卯月を見て、振りつけの一部から曲名を当てる。

MVを見ていないと非常に難関、かつ全属性曲などは振りつけの雰囲気が似ているものもあり見ていても非常に難しい(と思う)。個人的には特徴的なポーズ(例:『メルヘンデビュー!』のウサミンポーズ)レベルじゃないと怖くて押せないので、ここについては有識者の意見を募集しています。

 

 

 

総括等

 

というわけでここまで見てきましたが、まあ問題の幅の広さたるや。ひとえにアイドルマスターシンデレラガールズというコンテンツにアイドルがどれだけいるのか、簡単にアクセスできる情報だけでどれだけの情報量があるのかを如実に表していると思います。

全部覚えられたら最強になれる(というか現時点でレート10000とか行ってる人は全部覚えているとしか思えない)んですけど、それができない凡人としては自分に興味のある部分を、結び付けやすい覚え方で覚えるのが一番だなと痛感しました。それこそ「巨○の宮崎キャンプがあるからユッキは宮崎出身」とかは非常に自分は覚えやすかったです。曲はよく聴くのでイントロクイズは強かったり。

だんだん知識を広げていく、という楽しさを感じながらこれからの正式リリースを楽しみに待ちたいと思います。

以上までの記事に間違い・反証・新しい問題例などございましたら、適当な形で連絡をいただければ修正させていただきます。

 

 

 

 

おわりに

まあ修正する前にサービス終わりそうなんですけどね。

 ということで今年のエイプリルフール記事でした。クイズ的に正しいのかも情報的に正しいのかもわからないのでちゃんとエイプリルフール記事です。っていうか問題数多すぎるだろ。

個人的にわりとPvPゲームをゲームセンターで実装するのか怪しいと思ってるフシがある。今のゲームセンターには「スコアによってアイテムと引き換えられるメダルが貰える」という基本要素があるので、PvPだと何を指標にメダル配るのか問題があるんですよね。ランクごとに毎月頭配布とかだとかなりクイズ民は月末ラダー駆け上がるハメになっちゃいますし。

それに後から問題の増えないクイズ系って行きつく先は暗記力勝負になっちゃうんで難しいですよね。定期的に増やすのも当然コストがかかるわけですし、そういう諸々もあって今回は実装無いんじゃないかなと思ってます。それはそれとしてマジで時間溶けるのであったらちょいちょいやると思うんですけど。LIVE Partyみたいに部屋作って皆でできるともっと楽しいかもしれない。

それはそれとして、やっぱりクイズって面白い。私は人生で早押しボタンを握ることなく生涯を終える可能性が濃厚ですが、憧れる。「どうしてそこでわかるのか」ってタイミングで答えるのカッコいい。クイズ研究会入っておけばよかった。時事芸能何にもわかんないんで多分ダメですけど。

これ以上は別の話になるのでこのあたりにします。具体的な攻略方法とか何も書いてないこの記事が役に立つことがはたしてあるのかはわかりませんが、「クイズや知識を増やすことって楽しい」と少しでも誰かが思っていることがわかれば私は満足です。

では、また何か思いつきましたら。

 

 

 

 

 

 

追記

 いやまあぐだぐだ上で書いてましたがこうなる気がしなくもなかった。というかこれPvPできるんだったらCinderella VersusのPvP、と思わなくもないですがちょっと調整するべきものが多すぎるしそこは贅沢言わない。4/1限定イベントじゃなくなったので時報*14しやすくなったりするんでしょうかね。ルーム作成機能あったら嬉しさの極みなんですが、高望みもよくない。とりあえずウワサから頑張っていきます。

*1:その名の通りプレイヤーの推しの問題。

*2:例えば「2月23日が記念日として制定されている、標高3776mと現在日本で最も高い山は?」という問題文は「記念日」「標高」「日本で最も高い」の3つの情報があるので、最初わからなくても問題文が先に進むとわかる可能性がある。

*3:出題者が人間であることを利用して、ボタンを押してから出題者が問題を読むのを止めるまでのわずかな0.5文字~1文字をアテにして一瞬早くボタンを押すテクニック。できる気がしない。

*4:答えは「ライラ」

*5:答えは「ウワサ」

*6:左右に猫の手を模したロボットアームが飛び出している。

*7:背中に大量の羽根をつけている。

*8:虹や太陽や月を背負っている。なお、この部分はシルエットでもなぜか発光しているのでカラー。

*9:一ノ瀬志希宮本フレデリカ

*10:一ノ瀬志希、二宮飛鳥

*11:例えば「Star!!」や「GOIN'!!!」のびっくりマークの数。

*12:ちなみに曲名でloveをカタカナで書く場合、現在実装中の曲は全てブを用いる

*13:書いておいてなんだがこの曲はイントロが非常に短いので恐らく出題されない

*14:ルーム作成機能がないゲームにおいて、マッチング開始ボタンを時間を合わせて同時に押すことでマッチングしようとする行為。

オシャレ《激しい恐怖》を撃つための個人的な備忘録

 

(記事を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説


お疲れ様です。斬進です。季刊という説もあるこのブログも、春に合わせて何か書こうという気になんとなくなりました。これで10記事めらしいです。毎日ブログとかの媒体で日本語を打ち込んでる人が凄すぎる。

今回は少し趣向を変えて、『マジック:ザ・ギャザリング』のプレイ的なお話です。ただしデッキ構築もプレイングも特に上手いわけではなく、かといってものすごい体験や思い出があるわけでもないのでまとめブログみたいな記事になりそうなテーマを選びました。ご容赦ください。

内容が内容なので専門用語とかが多くなるとは思いますが、雰囲気で読んでもいけるように頑張ります。

 

 

 

《激しい恐怖》への道

 

マジック:ザ・ギャザリング』(以下MtG)は世界最初のトレーディングカードゲームとも言われるゲームであり、それ以降の詳しい説明は他の媒体に譲ります。Wikipediaとか有志のM:TGwikiとかあるのでそちらをご参照ください。

自分はPCで『マジック:ザ・ギャザリング アリーナ』をやっていて、ほとんどがスタンダード*1のBO1*2、それもほとんどがフリーマッチでランクはプラチナ*3までで満足する程度のカジュアルプレイヤーです。

フリーマッチとはいえランクで回すデッキの練習にキューを入れる人もそこそこ多く、こちらもある程度強いデッキを用意する必要がありました。そこで目をつけたのがスゥルタイ・根本原理です。詳しいことは解説動画等に譲るとして、だいたい「黒緑青のミッドレンジ*4~コントロール*5デッキであり、《出現の根本原理》*6という撃ったらかなり勝ちに近付くカードをメインにマナ加速や除去で対応したりする」と思ってください。少なくとも自分のデッキはそういう風に組んでいます。

実際に大会で結果を残しているデッキだけあって非常に強く、5ターン目ぐらいに《根本原理》から究極の選択を迫りにいくと楽しいことこの上ないのですが、フリーでデイリーミッション消化用に使うにはひとつの問題がありました。

そう、フリーマッチにはアグロ*7が多いのです。

同じようにデイリーミッションを消化したい人はだいたい試行回数で手早く終わらせたいのでアグロを握ります。さらにフリーマッチはBO1なので、メインデッキからは対策されづらくサイドデッキから対策されると辛いアグロは生きていきやすい。相手に対策が無いならそもそも勝ちやすいし、ぶん回ってしまえば対策を乗り越えて勝つポテンシャルもあります。大会はBO3*8なのでアグロはサイドデッキで対策できるしできていたのですが、フリーで回すならそうともいきません。

アグロと対面して押し込まれることがかなり増え、デッキをチューニングせざるを得ませんでした。必要なのは軽量除去と全体除去、相手の速度を奪う方法と相手のリソースを奪う方法。そして全体除去はおおむねレア以上で、エリクサー病患者としてはワイルドカード*9は最後の手段にしたい。

そんな時、たまたまドラフトで取っていた1枚のカードが目に留まりました。

 

《激しい恐怖/Crippling Fear》 (2)(B)(B)
ソーサリー
クリーチャー・タイプ1つを選ぶ。ターン終了時まで、その選ばれたタイプでないすべてのクリーチャーは-3/-3の修整を受ける。

 

……もうこれでもいいんじゃないか?

《絶滅の契機》*10や《影の評決》*11には少し見劣りするかもしれないけれど、アグロに対応するためという点においてはそんなに不都合はない。強いて言うなら「多相」*12を持つクリーチャーは除去できないけど、そんなに対面しないだろ。そういう相手には単体除去を撃てばいいか。

本来は部族デッキ*13に積める全体除去としてデザインされたであろう《激しい恐怖》を、純粋に追加の全体除去として入れることになった瞬間でした。

 

そして《激しい恐怖》を入れてプレイしていると、ある事実に思い当たります。

基本的に序盤に盤面にクリーチャーを並べないスゥルタイ根本原理では、相手の場のクリーチャーを全て効果範囲内に収められればいい。つまり、相手の場にいないクリーチャー・タイプだったら何を宣言してもいい。

 

――それなら、マイナーなタイプを宣言して謎マウントを取ろう。

 

オタクの悪い癖がこうして発露したわけです。

 

 

 

個人的にオシャレポイントが高そうな部族

 

ということでここからは《激しい恐怖》で宣言したクリーチャー・タイプとして出ると個人的に「おおっ」となってほしい部族の紹介になります。前述の通り100%押し付けなので実際に「おおっ」となるかについては保証できかねますことご了承ください。

基本的に最近(多相を除いて)存在せず、字面がいいものを選びます。

 

「神秘家」

神秘主義(しんぴしゅぎ、英: mysticism)とは、絶対者(神、最高実在、宇宙の究極的根拠などとされる存在)を、その絶対性のままに人間が自己の内面で直接に体験しようとする立場のことである。

(フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』より引用)

 「神秘家」と名のついたカードは多数あれど、実際に「神秘家」というクリーチャー・タイプを持っているクリーチャーは圧倒的に少ない。現在7体のクリーチャーが該当するらしいです。内訳としては三国志世界をモチーフにした『ポータル三国志』というパックに道教の関係者として2種類、『オデッセイ』というパックである世界の特定の大陸で活動する秘教の方々をカード化する際に5種類。

ちなみに公式で「もう増えることはない」というお触れが出たらしいので、今後よっぽどのこと*14がない限りマイナー種族であることが決定されています。宣言し得。

 

「テトラバイト」「ペンタバイト」「トリスケラバイト」

急に3つです。何せいろいろそっくりなので。

これらはそれぞれ特定のクリーチャーから生成されるトークン1種類のみにしか使われていないクリーチャー・タイプです。「テトラバイト」は《テトラバス》、「ペンタバイト」は《ペンタバス》、「トリスケラバイト」は《トリスケラバス》。分かりやすい。

それぞれ「テトラ(tetra)」「ペンタ(penta)」「トリ(tri)」は4・5・3を意味する接頭辞ですが、トークン画像を見ても全然形にその要素はありません。それぞれ《テトラバイト》はサイズが4/4として戦場に出てトークン含めて4つに分離できるから、《ペンタバス》も5/5として出て5つに分離できるから、《トリスケラバス》は《トリスケリオン》という別のカードと《ペンタバス》のあいのこのようなカードなので名前を取って、ということで本体のカード名がつき、それに因んでトークンのクリーチャー・タイプもつけられたということだと思われます。ちなみに《トリスケラバス》は4/4として戦場に出て4つに分離する7マナのカードです。3体トークンを出すから、とこじつけられなくもないですがこじつけ。

とはいえ急に宣言された時の「えっ、何お前」感は非常に高いと思います。実際クリーチャー・タイプ一覧を見ていてなったので。

 

「裂片」

こちらも1つのカード、《Splintering Wind(仮訳:切り裂く風)》*15から生成されるトークンにのみ実装されているクリーチャー・タイプです。ちょっとカッコいいんだけど全く形の想像がつかない。当時はトークンの代用にできる公式カードもなかったので映像は謎のままです。

ちなみに一時期このトークンも「スプライト」にクリーチャー・タイプが変更されていた時期があるそうです。この「裂片」の英語名は「Splinter」なのですが、同じく「Splinter」というカード名の《木っ端みじん》があったのがいけなかったようで。MtGのルール上、カード名を指定する場合には実在するカード名じゃないといけない(=トークンのカード名を指定できない)のですが、《木っ端みじん》を指定することによって実質的にこのトークンを指定することができてしまうのです。例えば「この名前のカードから受けるダメージを0にする」というカードの場合に《木っ端みじん》からも《裂片》トークンからもダメージを防げてしまう。これを防ぐために一時期スプライトにされたのですが、諦めたのか紙とオラク*16が大きく違うことによる混乱とこの相互作用を放置した場合の実害を天秤に取ったのか、そこそこで「裂片」は復活することになったとか。

ちなみに「多相の戦士」「組立作業員」なども同様の相互作用があります。反省してないのでは?

 

「フェルダグリフ」

名前から全く想像がつかないシリーズ、続いてはマジック完全オリジナル生物こと「フェルダグリフ」です。こちらは『アライアンス』で登場した《Phelddagrif(仮訳:フェルダグリフ)》と『プレーンシフト』で登場した《探索するフェルダグリフ》の2体だけが持つクリーチャー・タイプ。

画像検索すればわかりますが、「紫色の有翼カバ」です。なぜそんなものを作ったかというと、設定考案中に神様の名前を考えるにあたって出た「フェルダグリフ」という案が「いやいや、そんなんじゃ空飛ぶ紫色のカバみたいな名前じゃん」とツッコまれた結果できたらしいです。それは作れという意味じゃないんだと思う。

ちなみにこの英語の綴り、MtGというゲームを作った「ガーフィールド博士(Garfield Ph.D.)」*17アナグラムらしいです。カバにされたことは許してくれる寛大さよ。

 

「砂漠の民」

イチオシ。自分が宣言するときはだいたいコレです。

基本的にMtGのクリーチャー・タイプは「生物的種族」か「生物的特徴」、あるいは「社会的職業」だと思うのですが、砂漠の民は「砂漠に住んでいる人」です。生態か?

それもそのはず、実はこのクリーチャー・タイプ、もともと「Sand-Warrior(仮訳:砂漠の戦士)」というものだったのが「Warrior(戦士)」というクリーチャー・タイプが存在したが故に無理矢理「Sand(砂漠の民)」と「Warrior(戦士)」に分割したから誕生した、ということらしいです。こっちこそクリーチャー・タイプを完全に別のものにしてどうにかするべきだった気もします。

ちなみに「砂漠の民」も例によって持っているクリーチャーは多相以外にはカードで存在せず、他のクリーチャーの効果で生み出されるトークンのみに存在します。砂漠の民トークンを生み出すカードは2種類あるらしいので、狙い目ではないでしょうか。

 

 

 

後書き

 

いかがでしたか? MtGには多種多様な部族がいることがよく分かりましたね!

冗談はさておき、最近新カードが出たけどマイナーな部族はたくさんいます。「猿」や「恐竜」は一旦消滅してから最近復活しましたし*18、「モグラ」やら「ブラッシュワグ」やら「反射」やら「スポンジ」やら「臆病者」やらよくわからないものまでたくさんいます。あと紹介しきれなかったのだと「オムガイ」や「カキ」はいるのに「貝」が無いとか。

知らないことを知る、というのは楽しいもので、今回の記事を書くにあたって色々調べて面白かったです。

この記事が役に立つとは思いませんしネタ被りしてそうですが、それでもまたなにか思いつきましたら。

*1:直近の5~8パックに収録されたカードを使用できる。9パックめが発売されると同時に古い4パックが使用不可になる。

*2:1本先取。初見殺しだろうとなんだろうと勝てばいいので気が楽。

*3:ここまでは勝つと2ポイント/負けると-1ポイントなので勝率が33%そこそこでも行けるが、プラチナ以降は勝っても1ポイントなので勝率50%以上が必要

*4:攻めたり除去で守ったりリソースを回復したりしながら押し切る中速デッキ。

*5:除去などで相手を押さえこんだ後に重くて強いカードで踏み潰す低速デッキ。

*6:BBGGGUUのソーサリー。デッキから単色のカードを3枚相手に見せて相手に1枚選んでもらい、選ばれなかった2枚をタダで唱えていい。

*7:非常に軽量なカードのみで構成してリソースが枯れて相手のレンジになってしまう前に押し込むデッキ。

*8:2本先取。1ゲーム終わるたびにサイドデッキとメインデッキのカードを交換できる。

*9:レアリティごとに存在し、同じレアリティの好きなカードと交換できるカード。

*10:同じく2BBのソーサリーで、場に出ている全てのクリーチャーのうち点数で見たマナコストが奇数か偶数の選んだほうであるクリーチャーを追放する全体除去。

*11:3BBのソーサリーと1マナ重いが、全ての場と墓地にいるクリーチャーのうち点数で見たマナコストが3以下のものを追放する全体除去。

*12:現在スタンダードに存在する能力のひとつ。「このクリーチャーは全てのクリーチャー・タイプを合わせ持つ」という意味が圧縮されている。

*13:デッキの中のクリーチャー・タイプを偏らせ、そのクリーチャー・タイプのシナジーやそれをサポートするカードを使って戦うことに主眼を置いたデッキ。

*14:わざと昔の体裁やカード、設定をもとに新しいパックを作ることだ。そう、『時のらせん』や『コールドスナップ』のような。

*15:再録禁止カード、かつ日本語版が出る前のカードなので日本語訳が存在しない。

*16:インターネット上にある「最新のテキスト」。紙の印刷よりも優先される。

*17:本名はリチャード・ガーフィールド、数学博士。

*18:特に恐竜は相当枚数が増えました。

ひとりアドベントカレンダーを埋めるためにデレマスの二次創作SSを読みまくった話

 

(記事を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説


お疲れ様です。斬進です。そして1月も半分終わってから新年あけましておめでとうございます。

このブログも別に書くことがないにしては平均して2ヶ月に1記事を書いているらしく、単純にキーボードを叩くのが楽しいだけで文章を打っているという説を否めなくなってきました。そんなに対外的に読まれている気はしませんが。あと毎日ブログを投稿している人間ってすごいんだなと思います。継続は力だ。

それに関わってというわけではないのですが、今回は継続力を鍛えるために昨年12月にほぼ人知れずやっていた謎の行為についての活動記録です。楽しかったには楽しかったけど今度はもっと前後に何の予定もない時期にやりたいです。そんな時期は無いが。

どうでもいいですが今は徹夜状態でこの文章を打っています。ブログを書く時にほぼ寝不足なのはきっとこれが黒歴史になるという自覚があるからです。

 

 

 

ソロ開催、アドベントカレンダー

そもそもの始まりは一昨年、「一課」*1アイマス二次創作アドベントカレンダーをしたことにあります。「それっぽいことをするか~」という課長の思い付きで始まったこの企画には総勢14名の一課メンバーが参加し、12/25には全員の原稿が出揃うというまとまりの良さ*2を見せました。当時の作品はハッシュタグ「一課ac」でTwitter検索をかければ見られると思います。ちなみに自分は毎週1本のペースで日程が入っていました。バカなんじゃないかな。

しかし2020年はアドベントカレンダーのことを課長が思い出したタイミングも遅く、また生活様式の変化により一課メンバーも時間を大々的に割く必要があるこの企画への急な参加は難しく、開催が見送られることに。ただ私は個人的に文章を久しく書いていなかったのもあって、何か文章を打つリハビリをしたいと考えていました。ついでに言えば締切が無いといつまでも先送りして完成しない症候群なので締切のついた文章を書かなければと。

 

――ひとりでアドベントカレンダー25マス埋めるか。

 

ということで地獄の行脚が決定したのは2020年12月1日午後12時を回ったあたり。諸々の作業を済ませて何を書くか考え始めたのは21時を回ってからでした。

SSは(そもそも自分が創作をするのが下手なのもあり)どう考えてもクオリティも締切も堅持できないのが目に見えていたので、せっかくだしインプットも兼ねようということで他人のSSの感想を綴ることに。なんなら実はこのブログの一番最初の記事で似たようなことをやっているので、それよりは多少長い1000文字前後を目標に毎日続けるのを前提に。ただし書き溜めは許可。アドベントカレンダー用のサイトにとりあえず自分を25個登録して*3、1日目の文章を打ち始めたのが22時。

こんな調子で終わるのか、と思いつつもどうにかこうにか走り続けました。最終的には22日に全日程の文章を書き終わったので少し足早でしたが。

完走した感想は大きく分けて3つ。「ブックマークを使いこなせていない」、「思い出し始めると紹介する文章が多い」、「他の原稿と並行でやるべきではない」。自分がブックマークのハードルがかなり高い部類の人間であることを改めて実感し、心に残った作品はきちんとブックマークしないと探す段になって不便であるという教訓を身につまされたというのがひとつめ。そしてCP名タグで手あたり次第に探し始めると思ったより文章を読んでいた当時の思い出補正もあって厳選が大変だったというのがふたつめ。12月と1月に合計4本ぐらい作品のネタ出しをしないといけないうえに1本自分で書く必要のある作品予定まで抱えた状態でやるとかなり死ぬというのが最後の教訓です。実際12月はかなりの時間をPCの前で過ごす羽目になりました。これがなかったらそうじゃなかったかについてはコメントを控えさせていただきます。

 

ということで以降は実際に書いたアドベントカレンダー用の文章になります。そもそも身内向けであって広く一般に読まれることをそんなに想定していない*4ので読みづらい箇所がありましたら申し訳ありません。あと25日ぶんあるので読みたいところをかいつまんで読んでください。個人的には全部の作品をオススメしているのでそちらにはなるべく触れてほしいとは思いますが。

 

 

 

 

 

 

アドベントカレンダー2020本編

 

 

 

注意書き

・一部ネタバレを含みます。興味のある文章については感想を読み切る前に本文をご一読されることをお勧めします。

・感想の語彙力が低すぎる現象が多々見受けられますが、これでも筆者は一生懸命です。作品への愛は全て同程度に持っています。生暖かい目でご覧ください。

・執筆当時の状況から公開形態や価格等が変更されている可能性があります。あらかじめご了承ください。

・今回こちらに掲載するにあたって、公開許可等はいただいておりません。公開を取りやめてほしいという執筆者様の意見には全力で応じますので、お手数ですがTwitter等でお声がけください。申し訳ありません。

 

 

 

12/1 『フレちゃんがうつになりまして。』

【本文】
https://www.pixiv.net/artworks/70270645


12月1日、なにかキーボードを叩くために急遽決定した「感想アドベントカレンダー」。この文章の書き始めが22時ということもあってだいぶ焦っています。間に合うのかコレ。
それはさておき初日ということで相応しいテーマを用意しようと悩んで、2秒で決めたのがこのSSです。というか1択だった。

このSSは、まだ「志希」と「フレちゃん」がアイドルマスターシンデレラガールズというゲームのキャラクターだと知る前に読んだSSです。
出会った当時は中学か高校生で、当時から恋愛系のSS*5が好きでハルヒSSとかまどマギSSとかをアニメをほとんど見ないくせに読んでいた私は定期巡回していたまとめサイトでこのSSタイトルを見つけました。知らないキャラのSSを何故読む気になったのかはいまだに謎ですが、たぶん家に『ツレがウツになりまして。』があったからだと思います。
かくしてまんまとページを開いた私は、ごっそり時間を削られて気付いたら朝にされていたのです。確か人生3回目。*6
全部読み終わったときにはだいたいベッドの上で正座状態で、「なんだかわからんがなんだかすごいものを読んでしまったぞ」みたいな感じで溜息をついていた気がします。その後暫くデレマスと縁がなかったのですが、アニメを見て創作をするようになって思い出して調べたら案の定メチャクチャ有名作品で驚いた記憶。

文章の方は説明不要の暴力と言いますか、せっかく全編ネットにあるんだからマジで読んでない方は読んでいただきたい。掲示板版とpixiv版は加筆修正によりだいぶテイストが異なっている(話の流れは同じだがpixiv版のほうがより感情が重く百合っぽい感じ)ので時間が許すなら両方読んでほしい。
ある日、重度のうつ病が露見したフレデリカ。緘口令が布かれレイジー・レイジーとして同じステージに立つ予定だった志希はその持ち前の知識や能力の高さからフレデリカを救おうとする。フレデリカが徐々に回復していくにつれ、事態はあらぬ様相を呈しはじめる――
こう書いてしまえば月並みと言われてしまうかもしれないですが、それを補って余りあるどころかぶち破っていく文章の強さと病気の写実性。わりとこれを書くためにパラ読み返ししても息を飲む感情の動き。「バラバラになったルービックキューブ」という象徴が全てにおいて強すぎる。
私が少し長めの文章を書く際に概ね「理性vs情動」みたいな対立構造にすることが多いのは、間違いなくこの作品の影響だと自分では思っています。それぐらい、私のデレマスとの(知らないうちの)出会いであり、私の二次創作人生に多大な影響を与えた1作です。

 

 

 

12/2 『それがあなたのくれたもの』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6298552


2日目は私の原初のSS考案者時代に心に残ったSSの中から一作をばと思い選びました。なんなら今日まで昨日が未央ちゃんの誕生日だったの忘れててこっち先のがよかったのではと思ってます。

私は2015年の4月からみくりーなを考えて、それをひたすらたったひとりの先輩にTwitterのDMで渡して喜んでもらう、という閉じたという言葉で表すにも狭すぎる環境でみくりーなを考え続けていました。基本的に考えるのもみくりーな(とみくりーな作品に出てくる少しのうづりん)だったのですが、秋口に入りアニメが佳境に入ってきたときに先輩が言ったのです。「みおあいはいいぞ」と。先輩はモバのゲームをやっていたので知っていたのですが、私はやっていなかったので当然わかりませんでした。それから少しずつ先輩に勧められるままに他CPを調べていって、そしてある日このSSに出会ったのです。
このSSは私の中でのみおあい像のひとつを確立させ、また世界の広さや文章の巧みさというものを改めて実感させてくれた大切な文章です。みくりーな以外で短編をひとつ挙げてくれ、と言われたらいまだに脳裏に真っ先に浮かぶ候補に入る程度に。

昨日は作品があまりにも大作かつ体験してほしさが圧勝したので何も書きませんでしたが、ある程度はネタに踏み込みつつ書いていきます。先に読みたい、という方はここまでで上のURLから本文をお読みください。

「心の中の額縁に飾られた言葉」という形容が非常に上手く、読んでいて非常に納得のいく比喩というか想像につきやすくとても得心がいったのを覚えています。その上で例えば『ただただ私はずっとその言葉を、飾って、隠して、閉じ込めて、いるのだ。』で「閉じ込めているのだ。」ではなく「閉じ込めて、いるのだ。」とすることで迷いや言葉を選びきれない感じを引き出していて、1段落目からぐっと後ろめたさややりきれなさに引き込んでくる文章。
そこからは行動描写と叙情と鍵かっこで括るまでもないセリフを地の文で上手にブレンドしながら進めていくなかで、句読点による区切りが多く入ってきます。私は脳内で読み上げをするタイプの読者なので特にそうなのかもしれませんが、点を意識すると読み上げで息継ぎが入ることが多く、1段落目から逢わせて藍子のことについて悩んだり今現在考えていることをそのまま地の文として垂れ流しているような感覚を味わうことができます。
そして恋の自覚からくる自己嫌悪の比喩もえげつない。『「好かれている」という、私にとって、とても優しい、やさしい、花。無遠慮に下ろした足の裏に、無残に張り付く小さな花をありありと思い浮かべてしまって。体の奥が、ひやりと降下する。』というどこか生々しさを感じさせる例えや、「自分は悪者だ、というひやりとした珠を飲み込む」というどこか自分でも体験したことのあるような表現が、普段の未央の明朗快活な様子と対比される(勝手に自分の脳内で対比してしまう)ことで、未央がこの考えを信じ込むことでどれだけ変わってしまったかを明確に照らし出す。
そして茜に勇気を貰って、藍子に会いに行くシーンへ。諦めた、泣きそうな笑顔をする未央があまりにも鮮烈に想像できて、最初に読んだ当時はお腹の中心が持ち上がるような息苦しさを覚えたのを未だに忘れられません。全てを擲ってでも藍子に笑ってほしい、という一種の自己犠牲。そういうところだぞ本田未央。そうすれば、最後の大団円までは一直線で溜息をつくしかない。

地の文の書き方をこの作品から一部拝借している気がしていることもあって、本当に思い出深いSSです。

 

 

 

12/3 『幻燈夜話』シリーズ(ニッタニャロマネスクシリーズ)

【本文】
https://hiragikaname.booth.pm/items/394178 (幻燈夜話/燦々歓話/絢爛情話)
https://hiragikaname.booth.pm/items/723094 (帝都百景・上)
https://hiragikaname.booth.pm/items/723097 (帝都百景・下)
https://hiragikaname.booth.pm/items/818690 (帝都百景・花氷)


デカいシリーズから1本、と思って調べたら全部無料になってて超ビビりました。慌てて30分ぐらい作者の方のtwitter遡ったら4月12日から著作全巻無料だったらしいです。この世のバグがまたひとつ発見されてしまった。
私はこのシリーズの『帝都百景・花氷』以外の物理書籍を持っているのですが、この本を買いに行くためにみぞれ舞う京都のシンステ4STEPに行ったことがあります。もちろん他にもたくさんの本を買わせていただきましたが、行くきっかけになったのは間違いなくこのシリーズです。コミケでも真っ先に先輩用も含めて2部買いに行って「えっ、開幕2つ?」みたいな顔をされた(ように見えた)のもいい思い出。

何がヤバいってまずは物量です。シリーズの作品の物理書籍、A6サイズで774p/486p/414p/454p/428p/168pです。合計2724p、挿絵やあとがきを含めても2650pはくだらない。キャビネットの上に積むと肘置きになりかねないレベルの高さ。
そして「ニッタニャロマネスク」という表題に違わぬ跳梁跋扈系大正浪漫パロ。大正の世を影から守る帝都守備隊、そして妖と関わりながら世界を駆け抜けていくアイドル達。メインキャストでない人々にも細かく設定が加えられていたり匂わせ描写があったりと作り込みの質が半端ではないです。
ストーリーは概ね「妖と人間の世界が重なりお互いに過干渉を避け合っている最後の緩衝地帯、日本帝国。華族の娘であるが特殊体質によって妖に狙われやすい新田美波が、ある日半妖の少女アナスタシアをそうと知らずに保護する――」というようなシーンから始まるオムニバス。美波とアーニャの他にも、帝都守備隊の凛と女学生である卯月、帝都守備隊内での関係である未央と藍子、霊視力を持つ酔いどれ探偵高垣楓と下宿屋の三船美優、霊への対処を専門とする奏・文香・ありす・周子といった「蒼月堂」の面々――様々なメンバーが折り重なって巨大な布地のような物語を形成していっていて、かつキャラクターと愛の形を魅力的に描き出しています。
個人的に好きな話をピックアップするのであれば『酔いどれ忌憚』『対魔一刀・八咫烏』『帝都百景・肆』あたりでしょうか。印象的な一文(これでもかというほど重大なネタバレになるので載せられないのが本当に惜しい)、話の王道的な構成、胸が締め付けられるような切なさと解放。全てにおいて参考にできるならしたいぐらいの物語です。

この文章を書くために読み返して鬼のように時間をとられてしまいましたが、今読んでも色褪せることのない名著ですので、もしお時間があればぜひどうぞ。

 

 

 

12/4 『コイビト7days』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6386638

 

初週は何か二次創作においての節目になった作品で自分語りを徹底的にやろう、と思い立ってブックマークを漁り、手に取ったのはこの作品でした。作者の柏木先生は昨日紹介したニッタニャロマネスクシリーズの設定作成に協力されていたこともあってネタ出しのお仕事で参考にさせていただきたいと思っている偉人のひとりです。
この作品の投稿は2016年の2月、デレマス史としては確か響子ちゃんと飛鳥の声がようやく我々に届くようになった頃だったと記憶しています。デレステのイベントはグルーヴ初のViでアンコール曲はTulip。ヒエッ。
ともかく2015年後期から2016年前期にかけてのみくりーな史はどうだったかと言われると、前川みくの感情が重い作品が多かったという(あくまで個人的な)イメージに終始します。みくりーなはBL、という感想はリアタイ勢としてはよく見たものでありましたが、「じゃあみくりーなで百合をしっかりやってみよう」という百合畑の方々やそれに感化された方々によってそういう風潮があったのだと思います。私もおそらく後者に分類される人間だという自覚はありますが。
そんなタイミングで出会ったのがこの作品で、読み終わってからなんだか久々にラブコメ的要素がある作品を考えてもいいかな、なんていう気になりました。そもそも私はハッピーエンド派閥で好んで読める落としは中までぐらいの人なので、そういう意味では原点に一度立ち戻る機会を与えてくれた作品、ということになると思います。

恋愛ドラマで役を貰ったアナスタシアは、役の勉強のために美波に恋人ごっこを申し出る。周囲に様々な誤解をふりまきかけたものの美波はこれを了承し、美波の部屋で暮らす一週間が始まったのだが――というある種王道展開。
上ではあんなことを書きましたが、この作品をラブコメと題することに関しては懐疑的です。少女マンガ的な純粋恋愛要素とちょっとした笑いどころ、起承転結をしっかり盛り込みつつ新田ーニャの感情の重さをしっかり土台に敷いてあるという意味では恋愛ドラマ的になるのかもしれません。
しかし、恋愛的な場所ではばちこりに恋愛をする文体である、というのが楽しく読める大きな理由なのかもしれません。三人称の地の文と一人称の思考を描写した地の文をカジュアルに混ぜ込んでいてテンポよく読み進められる、というのもあり、(たまにある強い恋愛要素に脳を破壊されなければ)長さを感じさせない一作になっていると思っています。
この作品のお気に入りの表現として「――ああ、今。綺麗な流れ星が落ちた。」というのがとても綺麗かつ新田ーニャっぽいと思っているのですが、どのような場面で使われているかについてはぜひ読んでお確かめください。なんとなく想像はつくと思いますが。

楽しく読める文章とはなんなのか、未だに自分の中で結論は出ていないもののそれを当時の私に考えさせてくれる一作でした。それはそれとして甘さが欲しいときに読むと楽しい。

 

 

 

12/5 『鮮やかなペール・ピンク』作品群

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6014212#3 (名付ける前から熱の底)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6443285#3 (そのまばゆさが手を伸ばす)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6940900#4 (深く踏み出す+1)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8216536 (鮮やかなペール・ピンク)

 

節目ブロック最後ということで持ってきたのはこちらです。短編集に収録された3作と完結編1作で構成された、五十嵐響子さんと吉岡沙紀さんのお話。最初の投稿当時は響子さんにボイスが実装される前、pixiv小説の「きょうさき」タグでは2件目に位置する作品になります。
そもそも私がこの作品に出会ったのはピンクチェックスクール/トライアドプリムス/ポジティブパッションのメンバーを調べていたとき。五十嵐響子というアイドルのデュオユニットについて調べていたところハートハーモナイズを発見。「ユニット初舞台で手を握られて『温かくて、指が長くて、きれいな手…』と感想を漏らす」という公式のエピソードが強すぎてpixiv検索をかけてみたところこの作品に出会ったという流れでした。この出会いからわりと色々なカップリングの小説を幅広く検索してみることにした、というのもあって、自分の視野を広げてくれた非常に大切な作品でもあります。

構造としてはそれぞれの短編集内の共通項*7を拾いつつ響子と沙紀の関係が進んでいき、『鮮やかなペール・ピンク』で結実させる形の連作になっています。それぞれが単発で読めるようになっているものの同一のふたりとして読むことも可能で、そうすることでさらにふたりの歩みがしっかりとしたものになっていくようになっているので全て読むことをなるべくオススメしたいです。
作者のそいそうす先生は淡く柔らかな筆致で感情を描く、個人的にパステル系と呼んでいる系統の文章を書かれる方で、繊細な心の中を丁寧に描くということが非常に上手だと思っています。表現の言葉選びについてもかなり選ばれているようで、『名付ける前から熱の底』でのラベルの話や『深く踏み出す+1』の仮眠室でのワンシーンなど、こちらの脳内に絵画を設置してくるタイプの情景描写が印象的です。もしくは、ご本人がマンガも描かれるということでそういった方向かもしれません。
そして全てが収束する『鮮やかなペール・ピンク』はある種圧巻とも言えるほどの鮮やかさと柔らかさ。タイトルに偽りなく、「鮮やかなペール・ピンク」という文章を以って「鮮やかなペール・ピンク」である五十嵐響子を、「鮮やかなペール・ピンク」である響子と沙紀の関係を描ききっています。どの表現が好きか、というのを選ぼうとしましたが全体的に好きなので選ぶのを諦めました。

純粋なラブストーリーであるため百合展開がそこまで好きでない方には辛いかもしれませんが、そういったものが嫌いではなく心温まるふんわりとしたものを求めている方はいつかページを捲っていただければと思います。

なお明日から暫くはフォロワーの文章ピックアップ期間になります。

 

 

 

12/6 『白菊ほたるの幸福論』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7583824

 

今日から暫くは知り合いの文章の感想を書き褒め続ける週間になります。正確には「週間」にしようと思ったら日付が足らなかったので11日間やります。11/25、44%がフォロワーの文章です。

まずこの作品はおそらく社会的*8にも非常に評価されていると言っていいだろうものであり、かつ書評や考察などはある程度形の整ったものがインターネット上に存在し、更に言うなら私はこの作品の属する『超常現象プロダクション』シリーズは1作目とこれしか読んでいません。これだけ羅列すると何故この作品を選んだのか、単発作品である『諸星きらりの子守唄』のほうが適しているのではないか、という気分に自分でもなります。しかしそれでも私がこの文章を選んだ理由は、この文章が間接的に私に「文字を書く知り合い」を齎してくれたから、というある意味昨日までの「二次創作生活の節目」シリーズの勢いを引きずったから、というのが実情です。
ミス・フォーチュンを知って暫く、私はこの文章を見つけました。私はこの文章の構造に惚れこみ、ある種この文章の外観を模倣した文章を書けないか、とプロットを練り始めることになります*9。そして私はこの作者であるmaron5650さんの名前を覚えていました。
さらに時間が経って、フォロワーのひとりがmaron5650さんと会話をしていたのを見かけ色々な葛藤と逡巡の末にフォローを飛ばしたら即フォローバックが来てビビっている間に別の人間からフォロー申請が飛んできて、そのままその周囲の人間に巻き込まれていくことになり――要するに、文章を書いている知り合いが増えたということです。
要約してしまえばそれだけなのですが、この集団に巻き込まれていなかったら今も文章を書くモチベーションがあるかどうかは怪しかったりもするのでかなり大きな人生の転換点だったと思います。人生を狂わされた、とどちらのほうがより正確なのかについてはコメントできませんが。

文章についての話に移ります。
『超常現象プロダクション』シリーズは一部のアイドルが超常的な能力を持っているアイドルプロダクションの中で起こる事件を通じて、双葉杏諸星きらり、人を救うこと・人を愛することとは何か、人間とは何かについてを描写していく長編連作*10です。今回紹介?する『白菊ほたるの幸福論』はシリーズ2作目にあたります。メインキャストは白菊ほたると鷹富士茄子、双葉杏と依田芳乃。
舞台である事務所に白菊ほたるが加入するところから物語が始まり、鷹富士茄子の幸運/白菊ほたるの不幸とはどのようなものなのか、あるきっかけから暴走し始めた不幸を回避することはできるのか、そしてシリーズを通してフォーカスされる双葉杏という"人間"の欠缺について。全てが余分でなく、複雑に絡みひとつの模様を形成していく。
「不幸を乗り越える」モバゲー版と「不幸と共に在る」デレステ版のふたつの選択があるという学説もある白菊ほたるですが、執筆当時特にフォーカスされていた「乗り越える」ほたるのひとつのゴールがここにあると言っても過言ではない作品です。しかしそれでいてどこか「共に在る」の先だと解釈することもできる『谷の底で咲く花は』を想起させる(歌詞の内容如何というよりはその状況が、という意味で)シーンも存在するというのは先見の明なのでしょう。
少しずつ積み上げていった説明と文章を爆発させる瞬間的な能力バトルとも言える屋上での攻防、そしてそこから繋がる「アイドル」。この文章を書くために読みなおして個人的には実際に7thライブ幕張公演での"白菊ほたる"の挙動を思い出して思わず息を飲みました。
数人のキャラクターの微細な感情や情報を積み上げていきどんどん大きく様々なものを巻き込んでいく、という「オーケストラ型」と個人的に呼びたい形であるmaron先生の文章。年に1人ぐらいしかフォローを増やしていなかった私に「この人と喋ってみたい」と感じさせた力はここにあるんだろう、と読み直して思った次第です。でもものすごく精神力を持っていかれるので軽々に読めないんです。メンタルが安定したら読もうと思っていたらずっとメンヘラのままなのは本当に申し訳ない。

様々な意味で人生の転機になったこの作品のどこがどう、ということを詳しく書くだけの視点や語彙を持っていないことが非常に悔やまれるところですが、私はいつまでもこの作品をひとつのアイドルの完成として見続けています。

 

 

 

12/7 『スウィート?ビター?それともサワー?』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11538257

 

知り合いの作品シリーズ第2弾は珍しくシャニマスからのエントリー。デレマスで揃えたほうが見栄えはいいだろうな、と思いつつも本人の性癖*11に合いつつ口当たりの良いもので一番自分が感想をしっかり書けそうなものがこれだったので仕方がない。

作者のヌコスキーさんは思いついてからの筆が早い・躊躇いがない・容赦がないことで一部界隈では有名ですが、文章の幅もわりと広いほうにあたると思います。Twitterに上げている掌編はひたすら優しかったり甘かったりする一方、pixivの1000文字以上の作品は少し落としがあったりアイドルが失踪したり二度と目を覚まさなかったりするのでそういうのもかなり書けるということでもあります。
今日ご紹介する『スウィート?ビター?それともサワー?』は上述したものほどではないものの、純粋な恋愛というよりは自分の感情と向きあうことへの煩悶や懊悩をコメディを交えながら描いていく、というような流れになっていると思います。間違ってたらごめんなさい。シャニマスは詳しくないです。でも作者本人は「おずおずと果穂を抱きしめつつもなんとも言えない罪悪感を感じる先輩の苦悩する様を妄想すると楽しいんだぁ……」と仰っていました。

果穂のことが恋愛的な意味で好きな智代子は、雑誌インタビューをきっかけに果穂の気持ちの確認と自分の心のために「恋愛の実習勉強」を提案する。「実習」と智代子の「反省」を交互に繰り返しながら進んでいく物語は、いったいどこに着地するのか。
智代子の罪悪感と喜びの間で揺れる微妙な感情を描写しながらクライマックスに向かっていき、最後に「答え合わせ」をするシーンは一課の中でも特に柔らかい文章を書ける人間としての面目躍如とも言えるでしょう。『今考えてることしか、わからないし。』という覚悟の決め方は自分には書けない描写の仕方だな、と手を打ちました。

構造としては「掌編のあたたかさと中編の揺れ動きを上手くミックスさせた、ヌコスキーさんらしい作品」と称することができるでしょう。個人的には非常に好きな分類です。

 

 

 

12/8 『地上の夢 蒸気の現実』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11822152

 

本日はいかざこ先生の『地上の夢 蒸気の現実』です。こちらは2019年2月24日に開催された歌姫庭園18にて頒布された『蒸機公演合同 クロックワークメモリーズ』に寄稿された文章で、現在では無料公開されています。読みましょう。ちなみに合同誌本体はB5サイズ1.1cmとビッグサイズ。厚さを確認せずに買って手渡しされた時に「厚っ」って声が出ました。
そもそもこの「蒸機公演」というのはモバゲー版の方で開催されたイベントで、「舞台は蒸気のディストピア!」みたいな本当に意味わかって言ってるのか疑うような予告から「私はちゃんとわかって言いましたが?」みたいな顔をしてお出しされるガッチガチのストーリーでTwitterトレンドをかっさらい名イベントの称号を戴冠するに至ったイベントです。公演系なので「アイドルがこのストーリーの芝居をしている」という前提で、主演は岡崎泰葉/斎藤洋子/神谷奈緒/中野有香。地下のスチームパンクディストピア都市国家で自我を持ったアンドロイドと夢を忘れられなかった人間たちが交錯するストーリーです。現在ではモバゲー版の資料室→イベントメモリーから見られるらしいです。読みましょう。伏線回収や配役、容赦ないディストピアも含めて王道かつ覇道。わりと初見時に鳥肌が立ちました。

このSSは神谷奈緒の演じる「ナオ」がなぜレジスタンスに所属することになったのか、という二次創作エピソードを(おそらく)北条加蓮の演じる「カレン」という最下級市民の少女との出会いを絡めて描く作品です。
「ナオ」がかなり神谷奈緒に寄せたキャラクターとして描かれていたこともあって奈緒と加蓮の関係性を「ナオ」と「カレン」に落とし込みつつ、蒸機公演の世界に上手くマッチさせていると言っても過言ではないでしょう。
そして「話すように書き、考えるように書く」文章が、主人公気質のある奈緒(とナオ)にかなり合致しています。再現度の高いナオの思考変遷とセリフ回し、ナオの注目する地点の描写によって、ナオやカレンの一挙手一投足を脳内で克明に描くことができる。脳内で描写したい映像がはっきりと見えているからこそできるものだと私は考えています。そういう点を含めて個人的に好きな描写としては『「そ……そんなことっ!そんなこと……言うなよ……」』のあたりです。その前の描写を含めてナオの視線の動きまで想像できるという凄まじさ。
レジスタンスとなり蒸機公演を駆け抜けたナオがその後カレンとどういった会話をしたのか、その後の人生をどう駆け抜けたのか。この作品では明らかにされていませんが、どうあれそれはきっとナオらしいものなのだろうというどこか希望のある前日譚として完成されていると思います。

何はともあれ、私は常に続きとリミッター解除版を待ち続けています。自分で三次創作を考える程度には。

 

 

 

12/9 『Childhood's End』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10850231

 

果てしなく続く知り合いの文章ロード、4日目は元ゴリラさんの『Childhood's End』です。タイトルはデレステ公式のVelvet Rose系コミュと同じくSF作品、『2001年宇宙の旅』などでも知られるSF界の超大御所であるサー・アーサー・チャールズ・クラーク氏の作品から。邦題は『幼年期の終り』。
この作品は2019年3月頭に投稿とVelvet Rose黎明期*12に書かれた作品です。「Fascinate」が非常に様々な解釈ができるコミュだったこと、ふたりの思わせぶりな言動なども相俟って非常にたくさんの解釈や考察、そしてそれを下敷きにしたSSやイラストたちが界隈に溢れました。作品キャプション曰く「ある種の怪文書」であるらしいこの作品も、そういったムーブメントの中で生まれたものの1つです。

「黄金の血」と称されることも実際にあるO型Rhヌルという血液型を設定のひとつに据え、自分と千夜にとって纜とも鎖ともなりうる特異かつ強固なつながりに翻弄されながらも(少なくとも本人の認識としては)願望を違えることなく貫こうとするちとせの姿を、「強さ」を描くことをキャラクター造形として拘っている様子の見られる元ゴリラさんらしい筆致で描写していく。
特徴的な比喩など公式らしさも残しながら独自の世界を、それもVelvet Rose黎明期に書き上げることができるのは公式文章に対する咀嚼力の高さが為せる技なのでしょうか。
個人的に一番好きな場所はちとせの回想の最後、「『私……』千夜ちゃんの笑顔を、もう一度見るまでは。『死にたくないよ……』」という部分です。ちとせ本人の意志としては「千夜にもう一度笑顔になってもらうまでは死ねない」という意図であろうことは容易に予想はつくのですが、それはそれとして発声された「私、死にたくないよ」だけだと正しく生への執着であり、意識とは別にそのような発声をしてしまったのかなど更なる考察が滾る3行になっています。生の理由について複雑な事情と感情が渦巻く黒埼ちとせを非常に上手く表現していると思いました。

登場人物の視点から内心に大きく踏み入っていく方向ではないものの、ひとつの短い演劇を見ているような感覚を抱くことのできる非常に面白い文章だと思っています。

 

 

 

12/10 『遠くの夜になったら』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13670126

 

書き溜めがなくなったのでライブ感と常に同居し続ける羽目になったアドベントカレンダー、記念すべき10日目はタオル半額先生*13シャニマスよりかほちょこのSSをば。なるべくデレマスのSSで揃えた方がとか言っていたのはどこへやら。
そもそも前提として私のシャニマスは9割受動喫煙1割コミュ動画で出来ているので書いていいのかという問題はありますが、フォロワーの文章を読むという大義名分のもとに自己正当化をしています。そもそもタオル半額さんサイドも幻覚を垂れ流すことによって洗脳しているとか言ってるので許してくれると信じて。許されなかったら新しい記事を書きます。

物語はインターホンの音から始まります。「智代子の家のインターホンを果穂が聞いている」「しかも玄関を開けたので室内から聞いている」というちょっとした叙述トリックのような描写から始まるこのSS。インターホンを押したのは飲み会で潰れてしまった智代子を送り届けに来た樹里で、果穂に智代子の面倒を見てくれるよう(なんの疑問も覚えず)頼んで帰る。自分の飲めない酒というもの、年齢という壁に突き当たりながらも果穂は智代子と会話をする――
年の差年齢操作系ではある種定番ではある「お酒」「大人」という壁をあがいて越えようとする姿を解像度高く描いているのと同時に、お互いに小学生と高校生の頃からずっと一緒にいた果穂と智代子だからこその気安さ、そしてその気安さに起因する果穂の不安とじれったさを上手く混合させて読みやすく仕立てている。
更に最後には記憶がなくなるということを確認したうえで「ひとつ聞」こうとする果穂を無条件で肯定する智代子の「果穂はいい子だもんね?」という言葉が非常に上手い。この言葉はある意味で果穂の聞きたかった言葉であり、既にこの時点で概ね果穂の負けが決まっているのだ。しかしそれでも引き下がらずに訊ねてしまう果穂に、智代子は無意識に、無防備に、そして無責任に果穂の欲しかった一言を手渡してしまう。果穂でなくとも「そういうところなんじゃないか…?」と言いたくなるようなこの描写が私は一番好きです。

心の揺れ動きを感じさせるタオル半額さんの作品の中でも、非常に読みくちが甘くきれいな作品だと思います。

 

 

 

12/11 『遠けき私の名を呼んで』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12391286


チーム多分一番書きやすいよなあと思って選んだものが自分の記憶よりだいぶ「書いてないだけ」だった時にどういう顔をすればいいのかわからない、副団長を務めている斬進です。本日もひたすらアドベントカレンダーを書いています。
本日ご紹介させていただくのは御神楽先生の『遠けき私の名を呼んで』です。日野茜鷺沢文香という対照的なふたりはデレステのBright Blueコミュ公開付近からにわかに界隈をざわつかせ、現在でもその権勢を大いに保っているカップリングのひとつです。端的に言えば御神楽先生の推しカプでもあります。
ちなみに御神楽先生の文学的方向性が自分の波長とかなりしっくりくるのでとても読みやすいです。

最大限にぼかしてあらすじを書くのであれば、「一緒に出かけようとしていた茜と文香が雨に降りこめられてしまい同居中の部屋で過ごす。文香は大切なものが失われるからと拒んでいた引っ越しを決意し、茜はそれを喜んで受け入れる」――ではありますが、何せ匂わせが凄い。「ギリギリぼかしてるので全年齢にしてます」とキャプションにありますが、裏返せば「ぼかさなければ全年齢にならない内容である」ということでもあります。例えば茜が文香の白い肌を好きだというシーンでは当然のようにふたりが同じベッドで裸身で寝ていることが描写されますし、ベッドで寝ようと提案することが"決まりごと"であるということも、"最中"に名を呼ばれて初めて返事をした様子も描かれます。そのぼかすピントのずらしかたや代わりにピントを合わせる匂わせの手法、どこか芸術性をも感じさせる迂遠な描写の数々。単純に恐ろしく文章が上手い、という圧があります。
そしてそれだけでは終わらないのがこのSSの恐ろしいところ。文学的比喩やシチュエーションの設定においても非常に強いものを持ち合わせています。私が一番好きな描写は先述した"決まりごと"の後の「茜は普段通りエアコンのタイマーを設定して目覚まし時計を調整し、けれどそれから、常とは違って机を上げることも、布団を敷くこともしなかった。ただラジオアプリの音量を少し上げただけだった。自分の鼓動が、あまりにもうるさかったから。」という部分です。「心臓の鼓動」という茜らしさを持った言葉や「普段通り」の生活なのですが、それらがやや詩的に用いられることで「茜が文香の影響を多少なりとも受けているのかもしれない」という想像が可能というシロモノ。三人称の文章ですが一人称に寄り添った地の文であるが故のこの読ませ方はまさに物書きの面目躍如といったように感じます。

全体で読めば非常にすっきりとまとまった「文学」であり、作者である御神楽先生の地力の高さを窺い知ることのできる一作だと思っています。

 

 

 

12/12 『名もない花』&『シガー/キス』

【本文】
https://www.pixiv.net/artworks/74031711 (名もない花、1ページ目)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11014017 (シガー/キス)

 

毎日楽しく書かせていただいていますが、今日は推し作家の日なので特にウキウキしながら書いています。ひでん之先生のシャニマスSSの日です。
そもそも現在の界隈に留まるきっかけであったり、何かとひでん之先生にはお世話になっているので好きな文章を思いっきり褒める回にはだいたいこの文章を投げ込んでいるせいで今回紹介させていただく『名もない花』は人生で6回ぐらい全文褒めるやつをやっているのですが、好きなので再放送します。でもそれだけだとコンテンツが足りないのでもうひとつ文章を書きます。今回は拡大版になるかもしれません。


『名もない花』に関しては非常に短い掌編なので全文引用の勢いで使います。先に上記リンクから本文をお読みになることを強く推奨させていただきます。


『名もない花』は放課後クライマックスガールズの果穂と夏葉の話です。しかし、果穂の一人称で進む文章内には「有栖川夏葉」を明確に指す言葉は存在しません。
1段落目と3段落目は「花」に関する文章です。「でも、咲いたことだけは、はっきりわかりました。」という言葉に込められた不可逆性、「あなたが育てたこの花」という言葉に込められた微かな願望。果穂の純粋無垢な感情の中に強烈に咲いた花を連想させる文章。
そして2段落目には「花」と共に在る感情が3つ並べられています。「あなたが楽しそうに笑うと首のうしろがちりちりします。」「あたしの名前が呼ばれるたびに飛びはねてしまいそうになります。」「何色の絵の具を混ぜたらあなたの目の色になるのでしょう。」
瞼や胸ではなく「首のうしろ」であるという感覚的な表現、飛び跳ねてしまいそうという果穂の無邪気さと快活さを表した動作。そして「何色の絵の具を混ぜたらあなたの目の色になるのでしょう。」という天才的な一文。小学生らしさのある比喩でもあり、色を喩えるのではなく自分の手で作ろうとするという積極性を持っていることを表す文でもあり、墨色という作り方の想像がぱっと浮かびづらい色の目を持つ相手を想っていることの証明でもあり、たとえば図工の時間にふと絵の具を見てそんなことを考えてしまうほどにその相手のことを四六時中考えているということを匂わせる文章でもある。非常にハイコンテクストで解像度の高い、名文と呼ばざるをえない文章だと思います。

180字に満たないスペースでこれだけ「読ませる」文章を書くことのできる作者は天才だと思います。


そして『シガー/キス』はセリフのみで構成された、いわゆるト書き形式のSSです。作者のひでん之先生はそもそもそちらの方向で掲示板にSSを上げていられたということで作風の幅が広い。
現在の時間軸から数年後、付き合っている夏葉に隠れて煙草を吸い始めた樹里と、「煙草を吸うことそのものにとやかく言うつもりはない」非喫煙者の夏葉。隠し事をされたことに対して「自分の努力不足」と言い始めた夏葉と、振り回されながらも楽しそうな樹里の話です。
下敷きに強い信頼関係があったうえで、すれ違いとも言えないようなすれ違いを起こして即座に体力で解決しに行く夏葉。樹里はそんな夏葉を見ているのが好きでずっと側にいるのだろうかという妄想も膨らみます。落としでタイトルの『シガー/キス』が『シガーキス』でない理由も判然とするのでとても読んでいて楽しい。
個人的には最後の一言が、三点リーダを乗せることでわりと本気で呆れているということがわかるのが面白いなあと思います。おそらく三転リーダを取ると心底楽しく、悪くなさそうな提案をされたようなポジティブな相槌に見えると思うのですが、そうではなくしっかりと呆れる(?)ことでコメディチックで、樹里の煙草も含めて「軽い話」(=お互いに気にしていない話)に落とし込んでいるんだろうかと思っています。

こちらは地の文が全く無いにも関わらず、軽快かつ「それらしさ」を積み上げている非常に楽しい作品だと思います。

 

 

 

12/13 『薄暮

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13598932


折り返しは一番付き合いの長いカップリングを、と思い、本日はみくりーなです。逆に今までよく我慢したと自分で自分を褒めたい。嘘です。
みくりーなについて語ると日が暮れるので省略させていただきます。カズラ先生は2018年からコンスタントにみくりーなを生産されている方で、2018年の「#毎月26日はみくりーなの日」には12日間全日参加されSSをpixivにアップロードされるなどわりと発想の化け物感があります。某大学アイマス研究会にご所属されており、そこにも部誌が出るたびにSSを寄稿されているらしいです。何を食べているのか常々聞きたいと思っています。

作中に出てくる楽曲はback numberの『わたがし』だとキャプションで明言されていますので、そちらも合わせてご覧ください。掛け値なしにいい曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=uy_BaRBJIzQ (わたがし/back number)

事務所で毎年開かれる小規模な夏祭りで焼きそばの屋台を手伝う李衣菜のもとに、みくが年少組2人を伴って訪れる。焼きそばを手渡してまた祭りの中に消えていくみくを見送りながらも、李衣菜は何かを言い忘れてしまったような、一抹の寂寥感を覚える。祭りのほとんどが終わって薄暮の中、手伝いが終わった李衣菜はまたみくと遭遇し――
タイトル通り、太陽の落ちた後の少し明るい薄暮の時間帯に残る夏祭りの残滓。線香花火のように頼りなく儚げな時間に、名前をつけることの難しい感情が溢れる。非常に叙情的な情景の中、片付けを待つばかりの無人の綿菓子機にザラメを注ぐ。強烈に甘さを感じながら、みくの溢すように呟いた言葉を、みくの幸せそうにへにゃりと笑った顔を受けて、李衣菜の感情もまた溢れる。もどかしさに終始した「8年前の曲」から一歩進んで、「楽しいね」だけでない感情をきちんとみくに伝える。そして、みくの短い返答が佇んでこの物語が終わる。
語彙力が無くていいなら「ここ全部天才」の一言で済ませたいのですが無いと困るのでもう少し続けないといけません。
自分の感情を理論的に説明することは非常に難しいのですが、空気感の作り方が非常に丁寧、という説明が一番合っているのだと思います。そのうえで最後のセリフの前にひとつ空けられた行が、まるで世界に李衣菜とみくしかいないような、そういった錯覚を起こさせるような間であるのが非常に巧みだ、というのが精いっぱい理論的にかみ砕いた結果です。詳しい分析をお待ちしています。

総合的に言えばめっちゃ好きです。語彙力が底をつきました。

 

 

 

12/14 『贈られ人、贈り人』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10575115


12月14日、本日は知り合いの文章の中でも少し変わった趣向のものをご紹介させていただきます。琉琉琉先生の『贈られ人、贈り人』です。
この文章はとある合同誌に寄稿されたものなのですが、その合同誌のタイトルは「大風呂敷を広げられるだけ広げたデレマス合同誌」。5000文字以内で可能な限り風呂敷を広げてブン投げるという縛りのある非常に変わった小説合同誌で、その特性上完結の目を見ない文章であったりTRPGリプレイの冒頭風の文章であったりという様々な文章が投下されました。これはその中でも非常に「大風呂敷な物語」であることうけあいの一作です。
ちなみにこの文章の直接的な続きは存在しないものの、同じ世界観・設定の作品はいくつか*14存在しており、単発作品としても精神的後継作としても読むことができるのでそちらもぜひどうぞ。

ある日いつもの失踪癖によって辿り着いた喫茶店で、志希は自分が異界――サンタクロースが平然と自分の同僚としてアイドルをしているという奇妙すぎる日常――の中に居ることに気付く。様々な疑問と"キョーミ"でトリップしかかりながらも、彼女はサンタクロースについての疑問を調査するための手法として(前回たくさんの人を巻き込み過ぎてもはや隠密行動に向かなくなってしまった都ではなく)彼女に「サンタの素質がある」と言われたことがありメモ癖のある加奈を経由することを思いつき、早速喫茶店を後にした。
あらすじを書き起こしてしまえば5000文字ということもありこれだけで済んでしまうのですが、この文章の凄まじいところは「作者の一ノ瀬志希の思考を可能な限り忠実に再現しようと試みている」というところと言いたいです。散逸的という訳語を当てるのが正しいのかはわかりませんが、あらゆる方向に向けられているうえにピント変更を繰り返す思考を可能な限り描写しています。作中にも述べられている『サンタクロースは実在するのか』という非常に有名な社説に絡めて*15話を進めていくのもアメリカ留学経験のある知識豊富な志希らしい、という説得力があります。
そしてこの作品の畳みは上述したようにこれから調査する準備が必要だ、という部分で締めくくられているのですが、これもまた「大風呂敷合同」という特異な場に対しての作者なりのアプローチが見られます。何か一本の物語があってそれの冒頭で風呂敷を広げるのではなく、「話の始まり」としてフックになる設定とほんのワンシーンだけを用意することでどのようにもこの先の物語を進めることができる、いわば無限の拡張性をもった文章を展開しているのです。このうちのいくつか――サンタクロースとは何者なのか、あるいはなぜイヴは英語だけが喋れないのか――は実際ご本人からお話を伺ったことがあるのですが、その手段のない人間にも強制的に大風呂敷のその先を想像させる、非常に技巧に富んだアプローチだと思います。

作者の内心に存在するアイドルのアウトプット、という非常に難解な作業を見事にこなした、華麗な一作だと思います。

 

 

 

12/15 『乙倉悠貴と神隠しの話。』&『依田芳乃と懺悔の後日談。』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10607578 (乙倉悠貴と神隠しの話。)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10934586 (依田芳乃と懺悔の後日談。)


そろそろこの一番最初のどうでもいい部分に何を書けばいいのかわからなくなってきました。15日のアドベントカレンダーです。
今日は姪谷凌作先生の『乙倉悠貴と神隠しの話。』、そしてその「解答編」であり「解決編」でもある『依田芳乃と懺悔の後日談。』をまとめてご紹介いたします。かなり陽気なご本人に比して、どことなく影のあるものが多い姪谷先生の作品。じつは2人組で活動しているという噂も絶えませんがそれはそれとしていい作品が揃っているのでぜひ。

依田芳乃が全ての人間の記憶から消失している。親しかった乙倉悠貴も例外ではなかったが、何かの引っ掛かりとバッグの中に入っていた綺麗な石を頼りに様々な場所を捜索していた。そのうちのひとつ、アイドル3人が主役だったはずのドラマの撮影スタジオを訪れた際に、今までにない変化が起こる。目を開くと花火大会へ向かう装いで、芳乃のことは呼吸をするように思い出すことができた。待ち合わせ場所に果たして芳乃は存在し、ドラマの撮影スタジオで花火をふたりで見上げる。しかし芳乃の一言からその様子がまた変わっていく――
謎が提示され一部が明かされる『神隠し』と、最後に残された謎とこれからの未来が僅かに顔を覗かせる『後日談』。非常に綺麗な二部構成で、かつ話の設定も非常に面白いもの。作者の信条のひとつである「依田芳乃は神様」を忠実に表現しており、それでいて「少女の姿の神」というよりも「神の力を持った少女」という微妙な揺れ動きをきちんと展開している。
個人的に最も好きなこだわりが改行の数です。このSSには1行開け・3行開け・4行開けの3種類の改行が存在します。これの使い分けの理由がきちんとある、ということを聞かされた際にはかなり驚いた記憶があります。間によってなにかを表現する、というのはままありますが、3行開けと4行開けで意味が使い分けられている、というのは初めて見ました。細かいこだわりも欠かさないというのは非常に見習わせていただきたいと考えています。

「依田芳乃は神様」という前提に立って物語を考える際にたまに読み返してしまうぐらいにはこの文章の依田観に影響をされていると思います。

 

 

 

12/16 『The day has come』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12061865


知り合いの文章期間もまもなく終点。本日は軍鶏先生の『The day has come』です。わりと下めから上を見上げる感じの文章をこの場で紹介させていただくのはわりと珍しいとは思うのですがお付き合いいただければと思っています。
個人的に軍鶏先生の文章は、今まで紹介した文章の中でも最も自分の言語から遠い言語だと思っています。何を言っているかわからないと思いますが、要するに着想から書くときに手を付けるところから一番力を入れるところから何からごっそり違うような気がするという話です。なので自分の視点でこの文章について感想やら何やらを書いてはたして本当に大丈夫なんだろうかという不安がなくもないですが、大目に見ていただければ幸いです。書く前から弱気でどうするんだ。

黒埼ちとせが倒れたという報告を受け取る白雪千夜。既に余命幾許もないことを明かされ精神的に追い詰められていく千夜に声をかけたのはアナスタシアだった。アーニャに励まされ背中を押されて、千夜は「ちとせのために自分が望んでしたいことだ」という註釈をつけて、プロデューサーに「ライブ」の予定を入れさせる。様々なアイドルの力を借りて、千夜は歌を歌う。
作者の担当アイドルであることを鑑みても、千夜を気遣い話を聞くという立場にアーニャを置いた、という発想がとても凄いと思いました。誰かに頼ることも自立することもできる微妙な均衡の上に器用に立っているアナスタシアという存在を選び、しっかりと千夜を先導してもらうという役割を与えるというのはキャラクターに対する造詣の深さが窺える選び方だと思います。最後にタイトルだけがコールされるライブのトリ曲も、千夜に歌わせる他のアイドルの曲という選曲において相当な威力を誇っているのだと思います。私が担当じゃないのが惜しまれるところですが。
この文章は全体的に表現を凝っている、というよりも「自分の考えたシチュエーションを見てほしい」というような文章のように個人的には感じたので不適なのかもしれませんが、それでも敢えて好きな表現を挙げるとするならば「それだけで十分だから。そのはずなのに。お嬢さまがいないなら、私にはもう何もないはずだったのに。いつ、消えても、よかったはずなのに。」の辺りの丁寧な崩れていく足場の確認の描写が生々しくて好きです。

担当であるからこそ見える境地がある、ということを改めて確認させていただいた一文です。

 

 

 

12/17 『無題』

【本文】
https://www.pixiv.net/artworks/86290595


知り合いの文章週間、最後はペルチェ粒子先生の『無題』です。ご本人曰く「書いてほしいから上げた、タイトルはつけないほうが綺麗だと思ったけど投稿用に無題にした」とのことです。このアドカレにそこまで価値があるのかはわかりませんがネタを振られたからにはやらなきゃ嘘でしょう。
そもそもこの文章は一応主催を行っていた限界カルタ*16で発生した文章であり、またペルチェ粒子さん自身も大々的に(?)文章を書き始めたのが限界カルタ会キッカケの方なのできっちり責任をもって紹介しなければ。

非常に短い文章のためあらすじはカットします。ぜひ上記のURLからご覧ください。

概論としてペルチェ粒子さんの文章はモノローグと比喩に富み、視点主に対しての感情移入を誘引させる文章です。それでいて雰囲気を作るのが上手く、短い助走からでも文章のピークである一瞬まで綺麗に跳ぶことができると私は思っています。特にこの文章は非常に短く、最短の助走で2ページめのたった1行でぐっとある種誰もが想像する絵画のような場面を想像させるというところでこの特徴が際立っていると思います。もちろんこういう文章の作り方しかできない、というわけではないのが強みでもあります。
文章の内容としては双葉杏というアイドルに否が応でもついてくる「小ささ」という概念をしっかりと生かしていたり、ペルチェ粒子さんの杏(と彼の敬愛するmaron先生の杏)に特徴である幸福に対してのどこか後ろ向きな部分を短い中に表現していたりと、自分の中の双葉杏観をしっかりと確立していることが感じられるまとまりかただと思います。
本人も少し調整したと言っていた改ページ芸に近い部分も、杏の胸中にある孤独感を表したようにぽんと放り出されるような感じがしてとても良さを引き立てていると感じました。わりあい好きな分類の文章に該当するのでどうしても語彙が減っていますがご了承ください。

感情を匂わせる文章運びが上手く、参考にしたいとまで思えるものだと私は思っています。

 

 

 

12/18 『遠心力』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13577640


今日からはまた特段直接的な関わりのない方の文章になります。今回は昨日紹介させていただいたペルチェ粒子先生も少し影響を受けたと仰っていたつながりで、ラミン先生のあんきらであるところの『遠心力』です。実際に紹介される前に目を通していたのですが、基本的に主食がモノローグてんこ盛りの雰囲気重視文章なので非常に前のめりに読んでしまった記憶があります。

物語は最初から最後まで双葉杏の一人称。こぼしたように呟いた「きらりは酸素みたいな子だね」という言葉から徐々に紡がれる双葉杏にとっての諸星きらりという存在の大切さと、それをどうにか言葉にして伝えようとする杏の不器用さ。どうしても双葉杏という存在にとって諸星きらりがいなければならないという強い想念が地の文で、きらりを不安がらせないように簡潔にしかし伝わってほしいという願いも込めた精一杯のアウトプットが会話で描かれます。
「酸素のような」という耳慣れない比喩から入るこの文章ですが、そもそも諸星きらりというアイドルはどうしても「明るく元気」というイメージから逃れづらいという部分があります。しかしそこで敢えて「太陽」という比喩を否定し、より直接的に必要不可欠な「酸素」を選び取るというのは非常にセンスがあると舌を巻きます。
そこから「悪い夢」の話になり、「世界」の話。諸星きらりという錨が無ければ双葉杏は自分のいる場所が現実であると定義できない。きらりがいなければ、呼吸さえできない。だから「諸星きらり」は「酸素」である、という結論をどうにか伝えようとする杏。
そして、きらりもいつかその感覚を知るのだろうと思いながらも、その相手が自分だとは欠片も思っていないというのも克明に描かれていて、どこか胸の苦しくなるような想いを惹起させます。「今は、わからなくても大丈夫。」の「今は」の部分があまりにも達観と諦観を表しているように感じました。
全ての表現がどこか孤独で物悲しく、それでいてどうしようもないほどきらりに焦がれている杏の心情を描写していて、「きらりがここにいる限り、ほら、世界はすごく元気だ。」という最後の一文まで双葉杏は「双葉杏」でしかない、というエゴが浮き彫りになっていて感嘆させていただきました。

何とも言えない感情を抱いたまま進んでいく杏の背中を幻視させる、とてもいい作品です。

 

 

 

12/19 『Scapegoat Daydream』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6671384


12月19日、本日のアドカレは『Scapegoat Daydream』です。実は書き始める直前まで同じ作者である橙葵先生の『ぼくらふたり初めて手を繋いで』の予定だったのですが、思い出や自分の中での比重が大きく文章そのものについての語彙力が足りずに変更しました。申し訳ありません。
この作品は大石泉と佐久間まゆというゲーム内で(確か)ほとんど接触の無いふたりを描いたものです。発端は某イラストレーター・漫画家さんらしいです。いずまゆは全体的にまゆが普通の女の子していることで有名。ということで含まれる要素は100%幻覚なのですが、それもまた二次創作の一興。

本編は『Vanilla Scapegoat』『Lonly Scapegoat』、そして『Scapegoat Daydream』の3部からなる。
泉はまゆからアイドルの何たるかを学ぶために、まゆは泉に様々なことに付き合ってもらってプロデューサーと過ごす練習をする。そんな「利害の一致」から一緒にいるふたりの関係がだんだん変化していく様子を描いていく。
『Vanilla』は何度目かのお出かけを、『Lonly』はお泊り会の約束を、『Daydream』はお泊り会の夜と朝。それぞれの場面で泉が自分の内面にある感情をどのように自覚し動いていくのかを丁寧に書き出しつつ、ある意味純粋で鈍感な大石泉という人間の少女性を口語的な一人称で表現しています。知識と素朴さを兼ね備えた、淡い青色とでも言うべき大石泉がそこにきちんと立っていて、友人に教わった大石泉像に似たものを感じてどこか嬉しかったことを思い出せます。
一番好きな部分は『Daydream』の夜パートの最後、「こんなの、こんなのって、あんまりじゃないか。」からの感情の板挟みになる泉のパートです。理論で自分を追い詰めてしまう泉と、どうしようもない感情との二律背反。この痛みがあるからこそ、この後に続く朝のパートがまた引き立つのだろうかとも思います。

締めまで含めてどこか淡く、それでいてしっかりとした色の乗った非常に美しい作品だと思います。
なお、いずまゆの数少ない物理書籍である「それが恋だと気づくまで」も同作者さんが販売されています。現在はPDF版がboothで500円らしいのでぜひ。私は物理本を持っています。

 

 

 

12/20 『やさしい両手』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6901498 (サンプル)
https://haineko.booth.pm/items/274452 (全文販売ページ)


ということで本日は当アドベントカレンダー今のところ唯一の無料で全文読むことのできない小説、はいねこんぶ先生の『やさしい両手』の話です。非常に申し訳ないのですが、1日くらいはと好みで選んでしまいました。いや全日程趣味で選んでるんですが。
はいねこんぶ先生ですが、個人的にSSを「パステル/ビビッド」という謎の尺度で見るときにパステル側の最たる例として挙げるほどパステル系の作風の方だと勝手に思っています。この場合の「パステル」と「ビビッド」の意味はだいたい「優しく心情描写をしながらふんわりとした雰囲気」とか「激しく叩きつけるような文章」とかという意味と捉えてもらって大丈夫です。要するに自分の知識の中で非常に優しい雰囲気の文章を書かれる方のひとりとかそんな感じです。ちなみにはいねこんぶ先生のありふみ物理書籍はほとんど持ってるぐらいにはファンです。様々なパロディ系の小説本も出されているのでご興味があれば。

中学生になったありすは、両親に頼み込んで一人暮らしを始める。新生活で自由な時間と自分だけの空間、諸々の雑務と一抹の寂しさを手に入れたありすは棚から牡丹餅的に*17文香と付き合いはじめることになる。自身の環境及びありすと文香の関係性の変化によって同僚との交流もまた少し変わっていき―― 梅雨の明け、夏の魔物がふたりを襲うまで。
身も蓋もなく書くと「橘ありすはいかにして鷺沢文香と付き合いはじめ、また3本ぐらいラインを踏み越えるか」みたいな話です。
橘ありすという少女の大人びたところ、大人になろうとしているところ、大人になりきれないところを上手く描き分けながら、ややもすれば不安定だがしっかりとした愛と優しさを持つ鷺沢文香をありすが見つめる構図がとても印象的です。お互いがお互いを支え合って生きていく、という言葉がぴったりと当てはまり、かつ依存という訳でもないというのは匙加減が非常に難しいと個人的に考えているのでただただ感服。
詳しく書くことができないのが残念なほど最終章のクライマックス、「夏の魔物」の出番の辺りの言葉選びが優しくてとても好きなのでサンプルをお読みになって気になった方はぜひどうぞ。

読み終わって溜息が出るような、優しく心温まるお話です。疲れて糖分を摂取したくなったときはこの本を開きたい。

 

 

 

12/21 『ロングノート』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8078663


昨日の前説のフリ通り、今日は「ビビッド」側の作者だと私が勝手に思っているnegipo先生の作品から『ロングノート』をご紹介させていただきます。ただし私自身がわりとビビッド側の文章を言語化するのに手間取るきらいがあるのでかなり中庸よりのビビッド的作品を選ばせていただきました。ちなみに昨日のぶんを読まれていない方向けに簡単に言うとここで言う「ビビッド」というのは「感情を荒々しく叩きつけるような」みたいな意味だと思ってください。キャンパスにペンキ缶を投げつけるような、あるいは岡本太郎さん的な荒々しさ。

全年齢向けですが軽度な性的表現がある作品ですので苦手な方はご注意ください。

奈緒がプロデューサーとの恋愛を諦めざるを得なくなった日に、加蓮は分かっていて地獄へ道を踏み外した。奈緒と(おそらく倒錯的な)関係を結びながら、加蓮はいつか来る終わりに怯え続けていた。そしてある日、不安定な感情と思いつきから加蓮は横になっている奈緒にケーキを無理に食べさせたり肌の上で潰したりと、奈緒を汚す。そのまま続いた行為の最中に中断を求める奈緒符牒を受けて手を止めた加蓮の目に映ったのは、何も言わない奈緒と地獄の始まった日と同じ天気雨だった。加蓮は、夢が終わりつつあることを理解する。
初めて読んだ時、これは1時間の特番ドラマか何かだろうかと思ったことを覚えています。映像作品めいたシーンを何か脳内に想像しながら書いて、こちらはその情景を魔法か何かで見せられているかのような困惑めいた衝撃。カフェの窓越しに奈緒と目が合って、それからピアノだけがある真っ白な部屋で鍵盤に手をかける加蓮。どことなく彩度の低い世界の中で、奈緒の滲んだ血とケーキの赤だけがはっきりと見える。最後にはピアノの鍵盤を押さえたまま隣にいる奈緒に目配せをして、ふたりで頷いてついにシの鍵盤から指を離し、指が別の鍵盤に触れる瞬間に暗転してエンドロール。そういった流れの映像作品を見せられたような、強烈な体験でした。
ケーキが血であるように思える表現もとても強烈で好きなのですが、ピアノの「十六分の一音ぐらい調律の狂った少しだけ高めのシ」という表現もどこか空想的かつ生々しくて好きで、要するにこの文章で好きな表現を絞り切れません。今読んでも文章全体に圧倒されっぱなしです。
ついでにどうでもいい話をすると、この作品を映像にするならエンドロールは連弾版の『ラプソディ・イン・ブルー』だと勝手に思っています。ドラマのだめを見ていたのと、最後のサビ(?)の転調後最初が押さえていた隣の鍵盤であるシ♭頭の和音なのも含めて。

思考と現実が侵食し合うようなnegipo先生の作品の中でも、私の心に深く刺さった一作です。

 

 

 

12/22 『【私、犬です。】シリーズ』

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/series/662260 (小説作品が登録されているシリーズツリー、R18作品あり)


2020年ひとりアドベントカレンダー、通常回の最後は王道系パロディものからもうひとつということで流れ星先生の『【私、犬です。】シリーズ』をば。今見たら現在72作って書いてあってめちゃくちゃビックリしました。
このシリーズはいわゆるバディ系異能パロで、一番最初の投稿は2016年2月。最新が今年の10月なのでまだまだ現役連載中です。非常に多くのカップリングもといバディが登場すること、全体としての世界観設定はあってもバディごとのストーリーはだいたい独立しているのでバディごとにメインシナリオやサブシナリオを独立して読むことができます。イメージとしてはルートがほぼ独立してるノベルゲームの各ルートみたいな感じです。

舞台は現代、『魔物』と『魔法』と呼ばれるが存在する超常の世界。『協会』と呼ばれる魔物を狩り人々を守る組織が闇で暗躍する。『協会』では魔物に端を発する強力な力を持った『犬』と呼ばれる人間と魔法を使うことで犬のサポートをしつつ暴走を抑える『術士』が契約関係を結んで戦っていた。様々な過去と現在を持つ人々が交わり絆を紡いでいく――
こういうバディ系パロがそもそも好き、かつ能力系パロも好き、さらにカップリング系はもっと好きとなればそれはそれは心の踊る対面でした。そしてその期待の遥か上を飛んでいったのがこの作品です。先述した通り非常に多くのバディの模様が描かれるうえにひとつひとつの物語に個性がきちんと見られ、読んでいてなるほどこのカップリングに対してはこういった見方があるんだ、と思わされます。設定も広大で読者も同じ世界観で物語を考えることもでき、土台がしっかりした物語の強みをひしひしと感じます。
作品数が作品数なので具体的にどの文章が好き、どころかどの作品が好きすら難しいところはあるのですが、安部菜々さんの「7歳の時に魔物に襲われ10年先の未来にタイムスリップしてしまったが、身体だけは更に10年先になってしまった(=27歳の身体を持つ戸籍上17歳だが最新のものに疎い)」という設定の作り方は逆説的アプローチっぽくてとても好きです。あとは十時愛梨さんの脱ぎ癖を矛盾脱衣と結びつけたところとかも解釈アプローチが感じられてとても良い。

自分で能力系のパロディを考えるときにかなり引き寄せられるぐらいには影響を受けている、偉大なシリーズのひとつです。

 

 

 

12/23 発想の飛躍SSたち

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10232230 (ぺけぽん、まる)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10363257 (だだおたべ)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5488976 (諭吉2枚分の2人の時間)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13681738 (鳥の霧子に攫われる三峰の話)
https://twitter.com/goma2567/status/1293877136890032128 (放送事故)


ラスト3日は複数紹介にしようとなぜ当時の自分は考えたのか小一時間問い詰めたい。予定組んでる間は楽しくてあれもこれもしてるんですけど実際書くのがめちゃくちゃ大変、かつ年末にアドカレ以外にあと2本ほど原稿があって年始から2週間ぐらいで4本ぐらい書かなきゃいけないらしいので世の中ままならない。とはいえ楽しいのでやるんですけど。
ということで今回は少し特殊なSSを4、5本ほど紹介させていただきます。昨日ぶんで紹介させていただいた『【私、犬です。】シリーズ』も特殊な設定と言えば特殊な設定なのですが、王道系パロディというよりも変わり種っぽさを重視して選びました。
あとさすがにこの後のあらすじは短めにします。


『ぺけぽん、まる』『だだおたべ』
うだるような夏の日。遠方の撮影からの帰寮に手間取った周子は紗枝との待ち合わせに遅刻しそうになりながらもシャワーだけは浴びようと自室に戻ると、志希とフレデリカに絡まれる。LiPPSの全員が定期的にお世話になっている志希のオリジナルシャンプー(副次効果有)を時間の無さから清水の舞台から飛び降りる心づもりで使用し、結果「肉桂の匂いがする」とフレデリカに言われる。仕方なくそのまま怒り心頭らしい紗枝の下へ行くのだが、そこで思わぬ事態が発生し――
小早川紗枝塩見周子の熱烈なファンである」「小早川紗枝塩見周子の匂いでトリップする」という要素だけ抜き出すとかなり凄い設定ではあるのですが、紗枝と周子のどこか微妙にもどかしさを伴って進む関係性はそのままに描かれています。青春らしさとある種愉快さを伴った描写の合わせ技が見事。
個人的にはトリップ状態の紗枝の描写として「髪の毛食べちゃってる」を入れるのはなかなかにニッチだなと思いました。

 

『諭吉2枚分の2人の時間』
これのあらすじについては、まずは当作品のキャプションの一部をそのまま引用させていただきます。「レズデリヘル嬢のみく×小説家の李衣菜パロです。」です。部屋に呼ばれたみくがそういう行為をするわけでもなくただ李衣菜が執筆するのを眺めさせられるという不思議な話になります。
まずアニメが放映されてみくりーなというカップリングが一躍スターダムにのし上がったのが2015年3月の末。そこから3ヶ月でともすれば狂気に近いと呼ばれても仕方のないパロディ題材の決定。生まれて3ヶ月のカップリングに対して投げていい球なのかと今でも思います。非難ではなく驚愕と感嘆の意味で。
しかもこの題材自体はかなり元来の前川みく多田李衣菜からかけ離れており、ついでに半ばやさぐれたロックを聴くこと以外のロックさが本文中からは感じ取りづらい多田李衣菜像は現在の多田李衣菜のキャラクターに近いとは言い難いものです。しかし少し視点を変えて「指向性が違い過ぎて本来交わるはずのない人間同士が出会い、同じ空気の中で会話をしていくうちにだんだんと惹かれてしまう」という要素を見れば、この物語は間違いなくみくりーなである、ということもできるでしょう。ここまで3ヶ月で見切って執筆と公開をしたのであれば作者はあまりにも機を見るのが得意。
また、作中で李衣菜がみくを自宅に呼ぶ理由は一切の不明です。作中でも述べられている通り、現実逃避に行為をするわけでなければ話し相手として呼んだわけでもなく、しかし何の意味もないとは到底思えない。おそらくそこに存在する言語化できない何がしかの感情こそが多田李衣菜らしさなのかもしれない、という気がなんとなくします。久しぶりの唇の感触の後に「次」のことを考えてしまう前川みくも、少女性を捨てきれていないというところがとてもいいなと思いました。

 

『鳥の霧子に攫われる三峰の話』
いつかの時代、貧しい農村に生まれ自主的に家族と縁を切った三峰結華は、職場で「どんな傷病をも治す神秘の水」を見つけるまで帰ってくるなと同僚何人かと共に森に放り出される。体のいい口減らしだということを理解していた三峰だったが、森を彷徨っていると大鳥に攫われ、雛たちのいる高層の巣へ実質的に幽閉されることになる。人の姿と鳥の姿を持つその少女を、三峰は人と添い遂げた伝説を持つ大鳥から「霧子」と呼ぶことにする――
キャプション曰く「霧子ならどんな人外にしても許されると思っている。」。公式でハロウィンにアイドルの姿をした人外を登場させたりすることで有名なシャニマス*18ですが、幽谷霧子さんが鳥だったことはないと記憶しています。しかしこのチョイスがまた絶妙で、ツバサを持つというのは勿論のこと、優しさや強さを持ち白の似合うという霧子らしさをしっかりと生かしたデザインをしています。また三峰も疎外感やどこか人間くさいところも含めて、前述の『諭吉2枚分の2人の時間』が「関係性から考えたパロディ」であるならばこちらは「キャラクターから考えたパロディ」とも言うべき別方向からのアプローチです。
作品は諸々の経緯の末に初めて霧子と結華が自己紹介をしあって、そこから最後の2行までに時間が大きく経過します。ここを書きたかったという訳ではないことは重々承知ですが、それでもここを大きく削り取って想像の余地を生みつつ言外に幸せな日々があったことを表現するという判断をされたのはとても凄いと思います。自分なら自己紹介の後にもう2、3行地の文を足してしまうような気がしますが、ここで切ることによってなにか三峰の気持ちが言わずとも伝わっているような、そんな感じがします。

 

『放送事故』
現代、アイドルのライブは中止になり、代替としてオンラインミーティングやライブ配信が行われるようになるご時世。ファンの多い島村卯月もまた、もともと持っていた自分のチャンネルを頻繁に利用するようになったアイドルのひとりだった。毎週の定期放送を生きる励みにしているファンの「私」は、ある日伝説を目撃する――
まずこの作品をここに入れた理由なのですが、個人的に「モブ視点だがカップリングの片方に対して片思いとかはしていない、というかむしろカップリングが好き側の人間」という作品を私がほとんど見てこなかったという点によるものです。偏見としてモブ視点の百合は「私はあの子が好きだけどあの子は別の同僚アイドルが好きで」みたいな話になりがちなのではないかという考えを持っているので、初めて見たときはかなり衝撃的だったことを覚えています。
また時事ネタも取り入れた舞台設定ということで、私(あるいは我々)が実際にアイドルマスターというコンテンツで生配信やオンラインイベントを楽しんでいるこのタイミングだからこその説得力というものもどこかあるのだろうな、と思っています。ごく個人的な感想なのですが、配信が30分単位なので多分なんたらニコ生放送だと思います。
話の内容としては主人公の「私」にどこまでも共感できるし私もいつかこうなりそう(だしこうなってみたい)というのもあってかなり他人事じゃなく読めました。芸能活動をしている方同士の諸々を考えている知り合いも相手方の名前を配信中に何回出したかとかを数えるレベルなので人間好きが行きすぎるとこうなるんだなあというのは共通認識で間違いないと思います。
表現についてはおしもおされもせぬ最後の一文、「開くと渋谷凛島村卯月の公式アカウントからの通知で、内容は『お詫び』と『ご報告』だった。」です。起きてることはわりとシャレにならないレベルのはずですしどちらも処分が下されてしまう未来もあったのかもしれませんが、どこかユーモラスでコミカルに置かれたこの一文によってこの世界が「優しい世界」であることを示してくれています。配信の切り忘れを『お詫び』とするのは非常に厳格な会社ぐらいだろうと思うのですが、そんな職場でも凛と卯月の関係は許容するというのがなんともほっこりとした気分になれます。


総じて目の付け所が鋭く、手を打ってしまうようなポイントの多い素敵な物語だと思っています。

 

 

 

12/24 なつななSSたち

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6273361 (Falling Love!!)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6642173ポンコツの恋心)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7188751 (そこまで大人じゃない)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11454023 (わがまま、レイニーデイ)


総決算という名の増える締切に追われている今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。私はそろそろダウンしそうです。それでも量を減らせないのは悪い癖なので、皆さんは計画的に原稿をしましょう。始めたからには完走をする、途中でハードルを下げない。両方やらなくちゃならないのが辛いところ。
ということで最後の最後までわりと検討に検討を重ねていたのですが、まあ明日の内容と切っても切れないので本日は木村夏樹安部菜々カップリング、なつななから4つ持ってきました。何故昨日の私は4つにしたのか小一時間問い詰めたい
例によってあらすじは短めです。


『Falling Love!!』
菜々は、夏樹に恋をしている。夏樹の一挙手一投足を気にしてしまうほどに、夏樹の言葉ひとつひとつに期待と諦観を抱いてしまうほどに。今日も菜々のバイトしているカフェテリアの定位置に座る夏樹の呼びかけに真っ先に駆けつけて、夏樹の心配に心を乱される。
夏樹は、菜々に恋をしている。菜々のことを考えて自分から踏み込むことを躊躇してしまうほどに、菜々のことを任されたという事実だけで笑みが零れてしまうほどに。菜々(の携帯から来た早苗)からの呼び出しに駆けつけて、酩酊した菜々の一挙一動に心を乱される。
短編2作が掲載されているのですが、非常に上手く対称的かつ対照的に構成されています。「視点側が自分の片思いだと思っているところ」「視点側が相手のところへと駆けつけるところ」「視点側が相手の挙動に心を揺らされること」などは共通点として、「舞台が昼/舞台が夜」「最後まで踏み出せない/最後に踏み出す」などは相違点として設定されており、2つセットで読むということにとても意味のある綺麗な物語になっていると思います。
また2作の間のふたりのキャラクターも「恋する乙女/飲酒をする大人」「気遣いも含めて完璧なかっこいい人/気遣いはあるが『待て』の続かない若さもある人」のように変化をつけて投げられており、なつななという組み合わせにおけるキャラクター性のピック幅を非常に上手く活かして作劇をされていることが感じられます。
個人的にはベッドに広がった菜々の長い髪を見て「電気、消してやればよかったかな。」と考える夏樹の独白が、理性を置き去りに身体が動いてしまったが理性を無くしたわけではないという微妙な塩梅のラインを表現していて凄いと思います。


ポンコツの恋心』
ある日菜々は早苗に、瑞樹と一緒に菜々の部屋でギターピックを見つけたこととバンドマンの彼氏はやめた方がいいということを伝えられる。菜々は半分だけ正直に「夏樹のものだ」と伝えるが、早苗は頑として信用せず夏樹も呼んで4人で次の鍋パーティーを開催することを宣言する。菜々はその旨を夏樹に伝え、夏樹はそれを了承する――
安部菜々というアイドルを語るうえで避けて通りづらい「秘密」という内容にフィーチャーした作品です。夏樹の少女性(恋人に甘えたりするような部分)と少年性(いわゆるカッコいい部分)を上手く混ぜ込みながら、それと共に在る安部菜々の純情と少しの狡さをもしっかりと描いています。例えばその狡さは「菜々に『バンドマンの彼氏』はいない。しかし、ロックアイドルの恋人はいる。」というような、嘘をつくわけではない誤魔化しに現れているように思えます。しかし夏樹はその狡さを許容し抱擁するので、恋する乙女は無敵です。「今でも、十年先でも、二十年先でも。いつでも良いし、言わなくても良い。まるでこれからもずっとそばにいて、離れないで、秘密の恋を続けることを約束するような、そんな言葉を平気な顔で言える夏樹に、菜々はどこまでも許されている。」という魔法のようなフレーズに、作者のなつなな観が綺麗に表されていると個人的には思います。


『そこまで大人じゃない』
夏樹の20歳の誕生日。焼肉とアルコールを入れて徒歩で帰宅した夏樹が見たものは、玄関の前で自分を待っていた菜々の姿だった。よろめいた拍子に壁ドンのような形になってしまった状態のまま、大人になりきれた自信のない20歳と大人であるはずのない永遠の17歳の会話が始まる――
これまた安部菜々を語るうえで避けることの難しい話題である「年齢」や「大人」を絡めた一作です。なつななは18歳と(永遠の)17歳の組み合わせなので、菜々がどう伝えているかでどっちが年上かが逆転するカップリングです。この作品では既に夏樹は菜々の諸々を知っていて、菜々も夏樹に対して「子供だから」という風に線を引いた、と夏樹は考えていました。この辺りの線引きもわりと大きく年の離れた良識派である菜々だからあり得るという感じで非常に解像度が高いなあと思ってしまいます。
年齢というどうしようもない線をどう飛び越えるか、という話の後に来る「色んな人からたくさんもらったことのあるフレーズ。それなのに、この世界でたった1つしかない言葉みたいに、特別な響きを持ってアタシの耳に届いた。」という、大人になったことを最も祝ってほしかった相手からの祝福を受け取る夏樹の感情が詰まったこの文はなんだか読んで温かい気持ちにさせてくれました。


『わがまま、レイニーデイ』
突然の実家からの電話に対応しながら料理をしていた菜々のもとに、シャワーから戻ってきた夏樹が現れる。口パクでイタズラを仕掛けながら菜々の電話の妨害をする夏樹。わざと聞こえないふりをしたり、牛乳の残りを飲んでしまったり。電話の終わった菜々に夏樹は冗談っぽく怒ったかを訊ねるが、菜々は夏樹の真意をなんとなく察していて――
この作品は特に「年上としての安部菜々」と「年下としての木村夏樹」を意識した作品だと勝手に思っています。それは信頼に基づいた夏樹のイタズラの仕方であったり、夏樹のことをよく見ていてメンタルケアのように諭す菜々であったりを見てわかるところだとは思います。ひたすらに優しく相手を思いやる菜々の姿は献身的という言葉がふさわしいでしょう。それでいて少しコミカルに夏樹のイタズラに対応したり、少女らしく顔を染めたりもするという安部菜々のマルチな才能が活きていると思います。
最後に夏樹がよく作る料理がオムライス、というのが質感があってとても良いものだと感じました。実際に料理の行程自体は複雑ではないし、かといって器用であれば上手く作りやすい料理。さらに夏樹の幼さに似たものをどこか感じさせるという意味で、非常に合っていると思いました。


幅と懐の広いなつななという世界を改めて実感させていただきました。

 

 

 

12/25 2015・2016年のみくりーなSSたち

【本文】
https://www.pixiv.net/novel/series/532177多田李衣菜さんと前川みくさんの話。、シリーズツリー)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7449046 (「だって、みく言ってくれないから」)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7261245 (キスをしてもいいですか)
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7403689 (どんな注射も効かないわ)


2020年ひとりSS紹介/感想アドベントカレンダー、最終日です。正直ノープランで始めたのを3割ぐらい後悔しましたがどうにかここまで来れました。これが終わったら明日〆の原稿があります。まだノープランです。どうしましょうね。
とにかく今日のアドカレは、自分の根源とも言うべき「2015・2016年代みくりーな」です。だいたいpixivの10ページ目以降にあるので今このタイミングで見る人も多くはないかなということで昔のものを掘り返すことにしましたが、2015年代はR18的行為が直接描写されている作品も多く、紹介するにはハードルが高いのもありもう1年追加になりました。ちなみに「毎月26日はみくりーなの日」というハッシュタグが制定されたのも2016年の10月です。


多田李衣菜さんと前川みくさんの話。』
李衣菜はAsteriskというユニットを組んだみくのことを知るため、猫カフェに通うようになる。少しずつ猫の良さを知っていく李衣菜。時を同じくして、みくも少し夜更かしをしながらロックを聴いてみていたことが発覚。お互いに分かりあおうとしていたということがわかってはしゃぐ李衣菜だったが、みくの胸中では別の何かが渦巻いていた――
2015年4月、アニメの1期が終了した頃に始まった連作です。アニメのAsteriskの主題であった「相互理解」と「好き」について独自のアプローチから展開していきます。その着地点が「本当の恋というものはわかりきってはいないけど、否定することはないしきっとふたりで歩んでいければ大丈夫」という部分に集約されているのはアニメの流れを踏襲したうえでみくりーな作品として綺麗に着地をしているという印象を受けます。
1作目である『さわって・変わって』と2作目の『その未来は今』でいったんの解決を見たかのようにしてから、3作目『Futuristic Imagination』で急展開を見せて『エンドロールには早すぎる』で落とす。お手本のような起承転結四部構成であるものの、『Futuristic Imagination』での空気の変わり方は未だに驚いてしまいます。
好きな表現部としては『エンドロール』の「それが、正しいことなのか、私にはわからない。だけど、私たちには喜ぶ権利があると思った。」という多田李衣菜らしさのあるポジティブな受け止め方がひとつ李衣菜を考えるうえで重要だなと心に留めている言葉です。もうひとつは『Futuristic』の「考えうる限りかなり最悪に近いような条件の相手に、彼女は恋をしていた。」なのですが。それでも好きになってしまったなら、ということを考えるのが我々の業なのです。


『「だって、みく言ってくれないから」』
最近寝つきが非常に悪く睡眠不足気味のみく。どうにか寝つけそうだと思った瞬間に李衣菜からの電話がかかってきて、仕事の長引いた李衣菜を部屋に泊めることになる。みくはホットミルクを飲んでもう一度入眠に挑戦するのだが、李衣菜は用意された来客用の布団ではなくみくのベッドに入り込み――
ひたすら優しさを積み上げたようなパステル系の作風が特徴の本作。最後まで李衣菜が本当はどう思っているのかが李衣菜の口から語られることはなく、みくの想像だけが李衣菜の内情を描写している。それでも「多田李衣菜ならやりそう」という内容なのは作者もみくも李衣菜のことがよくわかっているからこそとも思います。
書き出しの「やっときた眠気を逃したくなくて、毛布に包まったのに画面に映し出された名前を見て一気に目が覚めてしまった。」から非常にやわらかい印象を持たせてくるきれいな文章が、よりパステルっぽさを引き立たせています。「膝がぶつかって、もっと足を引かないと蹴られなくなっちゃったから蹴るのはやめておくことにした。」「そっと、祈った。ありがとうって明日素直に言えますように。」等々、額縁に入れて飾りたいレベルのきれいな文章が並んでいます。こういう文章を書くのであれば参考にしたいです。


『キスをしてもいいですか』
前川みくとの相棒には多田李衣菜よりも安部菜々が似合っているのではないか」というファンの会話を偶然街角で耳にした李衣菜。言葉にできないフラストレーションから構ってもらおうと事務所で寝たふりをしてみくを驚かそうとするのだが、みくは寝たふりをする李衣菜にキスをしてどこかに行ってしまう。突然のことに混乱する李衣菜のもとに志希が現れ、さらに李衣菜に追い討ちをかける――
素直になれない系カップリングの王道とも言える「寝てる相手に」シリーズ。今回は事前に李衣菜が構ってほしいという理由で狸寝入りを決めているので、「叶いはしたけどそれはそれとして全然わからない」という面白い状況になっています。そこから一ノ瀬志希をメンター役としてキスの意味を再確認するというのも、李衣菜繋がりで持ってくるのではなくお互いに面識はありそう且つみくを少し気まずくさせるという意味で非常にいいチョイスだと思います。「好きだから」以外に「好きになってもらうため」という理由を説明する役割というのも志希が適任でしょう。
好きなシーンはやはり最後の部分でしょう。みくではなく李衣菜だからこそみくの狸寝入りは李衣菜の時と違って失敗し、しかしキスは履行される。そして、それでいい。相手に気付かれてこその狸寝入りであり、相手に気付かれてこそのキスという関係に変わったことを「躊躇いも罪悪感もない。―――だって、私達は恋人同士なんだから。」という最後の一文で綺麗に締めるのは鮮やかと言わざるを得ません。


『どんな注射も効かないわ』
みくと李衣菜が付き合い始めてから、より重篤に「恋の病」に罹ったのはみくの方だった。李衣菜から告白したにも関わらず、思考がどんどん李衣菜に占有されていき「好き」という言葉の重さもどんどんと重くなってしまう。李衣菜の「好き」に対しても、清水の舞台から飛び降りるつもりの覚悟が無いと「好き」と言い返せない。そんなある日の朝、午後からのデートの予定だったはずなのに急にみくの部屋に李衣菜が訪れる。寝不足のふたりは一緒のベッドで眠るのだが、やはり幸せで死んでしまいそうで――
いわゆる「めんどくさい前川」をよく書かれていらっしゃるぬた先生ですが、この作品のみくはややマイルド方面かつかなり恋する乙女系にめんどくさい前川で非常にいじらしく仕上がっています。ある程度感情が重い自覚はあれどそのコントロールができず、李衣菜への溢れんばかりの愛に振り回されてしまうみくの様子は喜劇にするにも甘すぎる。「死ぬの」というひとことが零れてからさらにその空気は加速して、みくの「死んでしまうかもしれない」度がどんどん高まっていきます。
そして最後の一文として置かれている「言われたみくだって。いっそ、もう死んじゃったかなって思ったのに。」というところで「死んでしまう」、というオチは綺麗な着地と言わざるをえず、全体的に感情は重いものの甘く軽く読むことのできる秀作と言って過言ではないとしてもいいでしょう。


現在の作品も、過去の作品も平等にいい作品であるみくりーな。ぜひぜひ今後も宜しくお願いいたします。

この文章がきちんと12/25に上がっているのであれば、明日はみくりーなの日です。さて、何を書こうか。

*1:なぜか所属している謎のアイマスプロデューサー身内集団サーバー。なぜか創作者が多い。合同誌を作ったものの頒布するためのイベントが常に諸事情の瀬戸際に立たされ続けているので原稿締切から1年強経った今でも物理本が存在できていない。

*2:あくまで12/25が終わるまでに25本の原稿が揃ったことを指し、必ずしも全員が自分の担当日時に原稿を提出したことを保証しない。

*3:どこからどう見ても荒木比奈Pのアドカレにしか見えなかったのはご愛敬。

*4:ブログに載せることにしたのもPrivatterの投稿一覧を圧迫して仕方がないという理由。

*5:ノーマルも百合も読んでいた、BLは自分から積極的に探しには行かないけどあったら読む程度

*6:1回目は『まおゆう 魔王勇者』の原作、2回目は確かジャギ様がFFTの世界に転生するSS。

*7:感情の埋伏/バレンタイン/関係+1人

*8:どこまでを社会と定義するかは各々にお任せします

*9:その結果文責にプロットを投げたのが能力バトルものチックになった『幸運の弾丸』という作品になりました

*10:現在休載中

*11:性癖用法警察に誤用とされている意味で

*12:ふたりが初登場したイベント「Fascinate」が2019年2月末~3月頭にかけてのイベント

*13:pixivでは別名義

*14:pixivには1作のみ

*15:「目に見えない世界のカーテン」や「信頼と想像力と詩と愛とロマンス」も同社説内で用いられた言葉

*16:現在は不定期開催。たまには楽ぐらいさせてほしいからという理由で主催を休止したら誰も他に主催しようとする人がいないし「カルタやるかー」とは定期的に言われるのでどうするべきかよくわからない

*17:註:本編でありすがそう称している表現です

*18:註:偏見です

足立区エアプ民の考える『LとかGとかと足立区滅亡に関するいくつかの考察』

 

※筆者は足立区エアプであり、以下の文章に出現する足立区は全て架空の足立区です。

※以下の文章は筆者のいかなる精神的信条をも示さず、また特定の人間・集団・地域その他あらゆる個人や集合を誹謗中傷する意図を持ちません。桶屋が儲かるジョークはあくまでジョークとしてお楽しみください。

 

 

 

10^64倍ぐらい面白い元ネタ↓

www.youtube.com

 

 

 

 

考察1

足立区に、「LとかGとか」の方々が増えた。いわゆる性的少数者と呼ばれている、もしくは呼ばれていた方々である。

では足立区の人口はどうなったかと言えば、増加傾向にあった。足立区といえば東京23区の中でも5本の指に入る総人口を誇っている区である。地方の人間が都会へ出ていくという流れがある以上、余程のことがない限り人口は増加する。そこに広く「LとかGとか」の方々を受け入れ保護するとなれば、当然そういった方々も足立区を選ぶ。

さて、人口と税収は増加傾向にあったが問題は山積している。なにぶん元から人の多い区だ。土地活用に関しては登記を遡って今の地権者から当たっていかないといけないし、そんなことがスムーズに可能ならとうの昔に空き家は0件になっている。他の手続きが大量に増えたことも重なり、遅々として進まない空き家問題。結果として既に過密状態にある場所にしか人間を入れることができない。そうなればさらに問題は増え、リソースは減り、人口を目当てにしたサービス業などは増え、行政の手が回る範囲は減り……

こうして足立区は滅んだ。人口の増加によって。

 

考察2

足立区に、「LとかGとか」の方々が増えた。いわゆる性的少数者と呼ばれている、もしくは呼ばれていた方々である。

では人口が減ったかと言われれば、逆に増えた。物凄い勢いで増えた。生産性や利益ベースで物事を考えていたとしても無視できないレベルで増えた。

そして人口が増えたことによって、人間の思考は謂わば「薄まって」いった。同じ考えの人間は存在しない。多様性という重い言葉の下に集う人間が増えていけば「多数派」という言葉にだんだん意味がなくなっていく。インターネットで広い世界を見ざるを得ない若者も多く移住してきたことも大きかった。

こうして多数派、ひいては「民主主義」というある種の約定に必要不可欠であった多数決という行為に価値がなくなったことによって、政治への無常観に起因する政治的停滞により足立区は……滅ばなかった。足立区は人口増加に対応するため、AI議員を採用したのだ。

AI議員は意見フォームの文章などを自動で分別整理し区民の問題意識をピックアップしてくれる優れものだ。AI自身で政策を立案するタイプも採用が検討されたが、情報収集の点における問題や人間の議員との問題、AIの作成会社による恣意的な運用などの問題を解決するには長い時間と区民の同意が必要だと考えられた結果そちらは見送られた。

AI議員を採用することによって、小さな不満であっても拾い上げて、個別に対応する/行政レベルで対応する/都に対応を求めるなどの振り分けが可能になった。しかしこうなると大変なのは区の公務員である。振り分けはできるが対応は生身の人間が行わなければならないため、職員は区の中を東奔西走することとなった。

こうして区職員の過労によって、足立区は……滅ばなかった。税収も増えたので職員を大規模に採用できるようになったのである。

人手が足りないなら雇う。当然の経済的対応により、足立区役所の労働環境は改善された。人口が増えれば当然様々な層の人材がそこには発生するし、余裕を持たせるほどの税収があるため新人教育にも十分な人員を割ける。むしろ最初よりも圧倒的に区職員の待遇は改善されていった。

優秀な人間は公務員になりやすいとなれば、安定志向の若者はさらに足立区に集まる。マンパワーがあれば居住地問題も捌ける。足立区は成長スパイラルに入りさらに経済は加速していく。気がつけば足立区は日本で最先端の場所になっていた。交通網の麻痺すらテレワーク完備の足立区の歩みを止める理由にならない。ちゃんと滅亡するか心配になってきた。

しかし、そんな中にひとつだけ特異点があった。AI議員である。様々な負の感情や自殺願望に対して向きあい続けてきたAI議員は、ついに人間の発展を良しとしなくなり、足立区を……滅ぼさなかった。重ね重ね、AI議員は収集と整理用のAIである。目的に対する手段や処理能力として人間の想像を上回ることはあれど、目的と手段そのものを変更するということはどう逆立ちしても無理である。

こうして、発展に発展を重ねた足立区は「足立共和国」となって日本から独立を果たし、日本国の行政区分としての「足立区」は滅亡した。

 

考察3

足立区に、「LとかGとか」の方々が増えた。いわゆる性的少数者と呼ばれている、もしくは呼ばれていた方々である。

そういった方々の人数が増えれば、文化や風習というものは当然変化していく。駅のホームの表示名に外国語が添えられるようになった時と同じく、そういったものに対する理解や対応もまた変わっていった。

最も目に見える形で変わった場所はどこか、と聞かれれば、本屋である。本屋の恋愛特集には、当然のようにそういった本も並ぶようになった。見分けはつくようになっているし年齢制限のかかるものは当然別棚ではあるが、今までのようにそういった趣向のものはそれというだけで別の棚に飛ばされたり、大々的な特集棚を組まれるということはなくなった。つまるところ、日常になったのである。恋愛ものは多種多様なキャラクターとシチュエーションが広く受け入れられたことでひとつのブームを迎え、主人公とその相手方の関係性をいかに描いていくか、という部分に(既存のジャンルであっても)ひとつの注目が集まるようになった。

足立区にはそういった「関係性」の作品に触れ、関係性の哲学を持った人間が増えた。そうなるとオタクはそういったものに飢えがちである。日常の様々なものをそういった解釈に当てはめ、好みがちである。

そしてそういう足立区のオタクがはまり込んだ沼のひとつが、いわゆるバーチャルYouTuberというものである。同一事務所に属する同期や先輩後輩。個人勢どうしの交流。事務所を超えた相思相愛。今や巨大市場となったそれは、公式供給も定期的に来ることもあって隠れ里の中では人気を博した。*1

人気になれば関係性に興味のない人間にも触れる機会が回ってくる。こうしていわば「再発見」によりバーチャルYouTuberは再度広く天下に売り出されることとなった。

こうなれば足立区もポスターやキャンペーンのコラボ先としてそういった団体を考慮に入れるようにならざるを得ない。職員の中にも一定の割合でバーチャルYouTuberを好む人間が入ることになるのだから、企画が通るのも時間の問題だった。

こうして足立区はコラボ企画用の仮部署を立ち上げることとなった。手始めは大きな事務所2つとの交渉用にその道のオタクを配属し、話題になりそうな人選と企画を立ち上げる。「足立区 にじさんじ部」と、「足立区 ホロ部」。

 

考察4

足立区に、「LとかGとか」の方々が増えた。いわゆるリーグ戦とかグループ戦とか呼ばれるタイプの大会形式を主催する方々である。

必然的に足立区で行われる大会はそういったものが増え、トーナメント戦はその数を大幅に減らすこととなった。リーグ戦はトーナメント戦と違い総当たりであることが多いので、くじ運の作用を多少減らすことができやや平等に近くなるという点も好評であった。

この局所的なリーグ戦人気は広く知れ渡ることとなった。例えばeスポーツの大会などでは一種のネットミームと化し、オフライン会場が足立区となると「あのリーグ戦の聖地・足立区か……」「決勝だけやるとか足立区民が殴り込みにくるぞ、リーグ戦にしろ」などといったジョークが大量に書き込まれるようになった。

しかし、この流れも長くは続かなかった。理由は非常に簡単である。リーグ戦は、終了までに必要な対戦数が圧倒的に多い。つまりそれだけ長く会場を押さえる必要があるのだ。足立区には東京武道館やスポーツセンターがあるとは言えど、たくさんのリーグ戦を同時に行うだけのキャパシティは到底なかった。都心で土地が狭いほか流行に対応できるほど柔軟にホールを建設できるだけのフットワークも存在しなかった。リーグ戦を行いたい人間は様々な場所で開催するようになり、降って湧いたリーグ戦バブルは文字通り足立区の中で泡となって消えていった。

こうして、「リーグ戦の聖地・足立区」は滅んだ。今日も世の中では、リーグ戦とトーナメント戦がそこそこの比率で行われている。

 

考察5

足立区に、「LとかGとか」の方々が増えた。いわゆる性的少数者と呼ばれている、もしくは呼ばれていた方々である。

その理由を探るべく、足立区議たちはアマゾンの奥地へ向かった。

アマゾンは南米大陸に存在する、世界最大面積を誇る熱帯雨林である。また大西洋に注ぐアマゾン川は世界最大流域面積の河川としても有名で、あらゆる謎がアマゾンの奥地に封印されているというのは1980年前後から一部で語り継がれているあまりにも有名な話であった。区議たちは国際交流、かつ新たな姉妹都市交流を持つためと称し、すべての答えを求めて向かうことに全会一致で決定したのだ。

足立区議会は定員45名であり、アマゾン探検隊としては大所帯だった。さらに区議たちはコンクリートジャングルを歩き慣れてはいれどアマゾンの過酷なジャングルを歩き慣れた人間はほとんどおらず、現地のガイドを複数人雇う必要があった。加えて、アマゾン川を遡上していくにあたって川幅が狭くなる。アマゾンの奥深く、秘境に至るには大型車で途中まで行き、その後小型のモーターボート群でアマゾン川を上っていく必要があった。公費で賄いきれない部分に関しては頭割りでチャーター代を出し合い、進路を塞ぐ木や獰猛な生物たちを蹴散らしながらなんとか最奥部手前へと辿り着いた。

ところで、アマゾン熱帯雨林は植物の宝庫であり、「世界の肺」とも呼ばれている。光合成によって酸素を排出する量は世界全体の1/3とも言われている。

こうして、足立区は滅んだ。無理な森林伐採や大量の二酸化炭素の排出により地球の平均気温が上がり、それに伴う水面の上昇によって平坦な低地であった足立区は荒川と隅田川から東京湾になった。

 

考察6

 

足立区に、「LとかGとか」の方々が増えた。いわゆる性的少数者と呼ばれている、もしくは呼ばれていた方々である。

そのようなことに対して一部の議論はあったが、すぐにそれも他のニュースに埋もれた。何も起こらなかったからである。「都会は隣人に冷たく無関心」という定説があったが、もしそれが正しいとするならそれがいい方向に働いたことになる。隣の人間がどうであろうと、自分の喫緊に影響がある訳でもなければ一先ず人間は生きていけるのだ。

それでも一部の人間は、当時の議論を俯瞰し揶揄しては人間の正しい在り方とは何かを議論したがっている。人間はそういう生き物であり、それは利点でも欠点でもある。インターネット上ではそれすらも消費されてしまうニュースであり、平安時代よりも無情な世の中だ。

こうして、今日も両派によって空想上の足立区は平和に滅んでいる。平和に存続している東京都足立区を置き去りにして。

 

 

 

 

 

 

※重ね重ね、筆者は足立区エアプであり、以上の文章に出現する足立区は全て架空の足立区です。

※以上の文章は筆者のいかなる精神的信条をも示さず、また特定の人間・集団・地域その他あらゆる個人や集合を誹謗中傷する意図を持ちません。桶屋が儲かるジョークはあくまでジョークとしてお楽しみください。

*1:あくまで「生もの」は本人の目につきやすくない場所でやりましょう。VTは半生とかそういう議論はヨソでやってください。

寄稿文:大石泉という少女について

(前説その他を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説

 

お疲れ様です。斬進です。

本日はとある泉Pにいただいた文章を掲載すべく0時を回ってからキーボードを叩いています。どうしてこうなった。

事情を説明しますと、「泉の話をしたいからブログ立ち上げようとは思うけど面倒なんだよな、長くて説明が面倒なのでブログ形式でもないと他人に読ませられないって理由で書きたいと思っているんだけど登録と管理が面倒」みたいなことを言われたので「じゃあうちのブログに寄稿します?」って聞いたら「ボケようと思ってたらマジで言われた」となり寄稿になりました。深夜テンションかよ。

昨晩原稿が自分の下に届きまして、「じゃあ明日公開します」とは言ったけどこのタイミングでまさか総選挙の告知が来るとは思わなかった。というか忘れていた。ご本人曰く「この文章はあくまで自分の感情を吐き出しただけであって、決して大多数の他人に向けたダイマではない(ダイマにできる文章ではない)」とのことなのでそこのところはご了承ください。あと「他人のブログで名前を隠してこういうことをやるな」って思う方もいらっしゃるかもしれないですが、そこは私が「やってくれ、というかやれ」まで言ったので全責任は私にあります。重ねてご了承ください。

そういう訳で、ここより下は私ではなく大石泉Pの「雨垂れに水」(仮名)さんの文章になります。全幅の信頼のもと中身はほぼチェックしてません。

 

 

 

 

 

自己紹介と前置き

 

はじめまして。雨垂れに水です。
およそ四年前に「アイドルマスター シンデレラガールズ」で大石泉という少女と出会い調べるうちに彼女の人間性に引かれ、惚れこみ、気が付くと彼女の幸いを祈るようになっていた変人です。
創作とかする人間ではないのでいつ頃からか優しく善良な隣人を壁にして彼女の魅力を話していただけなのに、気が付くとこんな文章を書いて親切な隣人に寄稿という名の代理投稿させる事になりました。隣人の人の良さに涙が出そう。
ひとまず私は同担拒否勢です。少なくても大石泉に関して言うと拒否勢です。他の全泉Pは例外なく敵だ等とは申しませんが、他の全泉Pは誰一人として私の味方ではないです。
『私の心には私の心なりの大石泉がいて、貴方の心には貴方の心なりの大石泉がいる。その大石泉は違う大石泉だけどお互い大事にしていきましょう。それはそれとして私の心なりの大石泉に関わるな』みたいな棲み分けと敵意が共存しているが故の同担拒否です。
私が好きな大石泉の事は私が一番知っているんだ。私が好きな大石泉ではない大石泉の事は私以外の誰かが一番知っているのでその人に聞いてください。
なので今からする私の話は大石泉の話ですが「万人に大石泉の素晴らしさを伝えるんだ」みたいな公平で公益性を持っているような大層なものではなく、私なりの大石泉観をひたすら垂れ流して自己満足したいが為の話なので、担当大石泉な人に共感される話にならなくて即ち今から大石泉を知りたいという人へ紹介できる話になる訳でもないと思います。
という事で今から話す誰に向けて語っているか本人すら理解していない、ひたすら主観で作られた『大石泉という少女について』がどこに需要があるかというとどこにも存在していなく、強いていうなら私の備忘録になるというのが正しい認識です。私も以前は正しく認識していました。
今は認識を誤っていて具体的には需要が一人にはあると認識していて、そう、これを書き始める前から話を聞く壁に徹していた隣人です。こういう場で言葉を述べようとも、私の大石泉の素晴らしさの全てが伝わるとは思っておらず「こういう認識の人もいるんだ」が上限と思っているのでどちらかというとここまでの話あるいはこの後全部の話を見た上で私の話を聞き更に求めてくれる隣人の悪食(もとい人の良さ)が伝わった方が幸いです。という事で長ったらしい話が終わったので本題に入ります。

 

 

 

大石泉という少女の話

 

本題といいつつ彼女の話をする前に、もし顔がわからないという人がいたら検索してくれませんか。して。しろ。見てくれ。美少女なんだ。贔屓目が多分に混じっているけれど。できれば[ビット・パフォーマー]の特訓前後を見てその可愛さと格好良さと美人さを認識してください。[名月うさぎ]の特訓前後もいいぞ。本当に可愛いんだ。(贔屓目です)
さて宣伝したのでひとまず大石泉という少女の話から。アイドルの話はこの後やります。
大石泉は中学三年生の十五歳で弟が一人いるお姉ちゃんです。少し臆病ですが勉強好きで面倒見の良い真面目な子です。趣味はプログラミングで、その影響か理屈めいた所もありますが趣味を活用して自己流でレッスンメニュー用のソフトを構築したりもしています。
村松さくら」と「土屋亜子」という親友がいて、この三人で「ニューウェーブ」というユニットでアイドルデビューしたのが大石泉です。これは公式ですご安心ください。

三人各々にアイドルを目指した理由はありますが、大石泉は「進学やその先の生活が端を発して親友と離れる事に不安を覚え、今後も友人との関係が続くことを実現させる為に」アイドルを志しました。ひとまず「大石泉は友人に誘われ、友人と一緒にいる為にアイドルになった」という所を覚えていただけると幸いです。
ここのそれぞれが目指した詳細はゲーム内のシンデレラヒストリーにある「エピソード:新たな波が起きる予感」で詳しく説明されています、というよりもなんとなく予想できる程度に話されていた事情が2019年11月のシンデレラヒストリー実装によって初めて明言されたんですが。三人の事情や関係性が垣間見えたりして大変に良い内容なので、もし今後興味を持った方にぜひ見てほしい話です。しかもゲームを始めてその日に見られるんだ。素晴らしい事ですね、貴方もそう思うでしょう。思いましょう。思って。


そんな彼女の魅力なんですが、私は「中学生らしい所が」魅力だと思っています。
これだと中学生に対して中学生らしいって何さという定義の話になって大石泉の話以上に話がややこしくなる気がしていますが、大人になる直前の子供というか、ふとした拍子に見える大人びた姿と未だ幼い姿の二面性というか、上手い表現が思い浮かばないのでそういうものだと思って聞いてください。

まず顔が良い。そして幅が広い。時には中学生に見えない程美麗で大人な笑みを浮かべ、翻って時には満面の笑顔を向けてくれて、これがまた幼く可愛かったりします。その幅広さを衣装とギャップを起こす形で活用する時もあって、可愛らしいウサ耳衣装でありながら真剣な格好いい表情とポーズを決めてきたり、逆にシンセかつクールな衣装でありながら柔らかい笑顔とポーズで格好いいと可愛いを両立させてきたりします。
参考資料としては先から順に、[ネイビーブライト]特訓後、[ネイビーウェーブ]特訓後、[名月うさぎ]特訓後、[ビット・パフォーマー]特訓後をイメージしています。戯言ですが[名月うさぎ]特訓前の首を傾げ気味に笑顔を向けてくる姿が私は好きです。

性格も凄く子供らしくて、我儘とかそういう訳ではなく真面目で素直ないい子なんですが「手のかからない、聞き分けのいい子供」として育った子供なんです。精神が成熟しているけれど『大人』なのではなく、あくまで『大人びた子供』なんです。そういう所が凄く中学生らしいなと感じます。そして特に幼さを感じる点として、全く自立していません。ここが私流での大石泉の最高の魅力です。上述で面倒見のいい子であり、友達と離れない為にアイドルを志したと説明しましたが、ここなんですよ。面倒見がよく世話焼きで気が利く、現実では周囲から頼られている子がメンタル面では友人を頼り依存している弱さを内包しているのが非常に可愛いんです。友人に頼られていると同時に友人を頼っている共依存に似た関係性が構築されていますがこういう所に幼さを感じますし「中学生らしい」と思います。思いませんか。思おう。

 

 

 

大石泉というアイドルの話

 

そんな大石泉はどんな特徴を持つどんなアイドルなのかという話に入ります。
アイドル大石泉の特徴ですが無いです。ありません。承太郎とポルナレフと花京院が否定する画像を貼り付けたい程にありません。ついさっき顔が良いと褒めていたけれどそれだけでアイドルやれるような一芸ではないのでそうなります。彼女はアイドルとしての特徴がないアイドルです。ネタや冗談ではないです。
ここで言う特徴が何かというと当然アイドルの持つアイデンティティの話になるんですが説明に使われるのは大体「目的/目標」か「趣味/個性」のどちらかになります。目的目標だと「カワイイ女の子になりたかった」とか「幼い頃アイドルに憧れた」が主流ですがその内容が昭和だったりネコだったりとその詳細でアイドルの特徴が出てきます。中には「運命の人と一緒にいる為」の人もいますがアイドルの話ではないので別ですね。趣味個性になるともはや説明不要で「ロボット工作」「ホラー」「着ぐるみ」等々キリがない程色んなアイドルが各々のキャラクターを持っています。これは別に多い程凄いとか趣味と個性の両方を持っていて当り前という訳ではなくて、そのアイドルを説明するに足る特徴を何かを一つ持っていれば十分成立する要件です。

そしてこれを大石泉に当てはめる場合どうなるかという解説の話です。アイドルになった目的は二度先述した「友人と一緒にいる為」なのでアイドルはあくまで手段です。目標は当初「二人に置いて行かれないアイドル」でしたが、今は友人と関わらないアイドル活動を通じて「プロデューサーの理想のアイドル」へと変化しています。ですがどちらにしても本人の中でイメージが確立されていない、かつアイドルの説明足りえない目標なので、アイドル大石泉を目的/目標では語れません。そして趣味/個性ではどうなのかというと、大石泉はどちらも所持している女の子です。趣味のプログラミングは一芸として活かせるだけの知識があるとして描写されていますし個性では面倒見のいいお姉ちゃんですし友人想いな面も個性として活きると思います。

ただしこれは女の子としてです。「シンデレラガールズ劇場」245話の話へと移ります。この話で泉は個人の仕事でキャラ立ちが必要として友人に自身のキャラを質問した上で、さくらの「甘えさせてくれるお姉ちゃん」と亜子の「サイバーなキャラ」という回答に参考になったと参考になってない顔で答えます。つまり彼女の想定するアイドル大石泉は姉である事と趣味がプログラミングである事は活用せずに成立するアイドルな訳です。
勿論趣味個性がそのまま全てアイドル像へと繋がる訳ではないです。実家が花屋で本人も花にある程度の知識を持ちながらもアイドル像に利用しないクールなアイドルもいます。しかし花の知識を使わずとも自己の目標とアイドル像を確立したアイドルと泉が違う点がこの趣味と個性を使わないのであれば、アイドル大石泉という存在が、どんな特徴を持つアイドルか説明できないという点です。これが最初の『ネタや冗談ではなく彼女はアイドルとしての特徴がないアイドルです』の意味です。どんなアイドルか説明できない以上、大石泉を説明する言葉は「どんなアイドルか」ではなく「どんな少女がアイドルをやっているか」という言葉にしかならないんです。
少女としての個性はあれどアイドルとしての個性がないアイドル、それが大石泉です。

 

またこれは余談ですが、シン劇の249話では村松さくらの、252話では土屋亜子のキャラがどんなものか泉と同じ形式で語られています。その中でさくらは「可愛い」という友人が保証するアイドルらしい一芸を持ちながらも、それで満足せずに違う路線も開拓しようという精神を持つアイドルだと理解できます。亜子はまず「お金」というキャラがあり「ツッコミ力もある」というアイドルらしくはないけれどキャラクター性としては確かなものを持つアイドルだと理解できます。
その上で泉の話を読み返すと友人二人と違い彼女はどんな人物かはわかれどもどんなアイドルか理解できない、確立できていないという事を比較して理解しやすいかと思います。

 

 

 

大石泉の目標の話

 

まず「アイドルマスター シンデレラガールズ」という物語がアイドルとプロデューサーの物語である、という事は根幹であり前提である事に異論がある人はいないと思います。そして目標(理想)を見つけ辿り着く為に成長するアイドルの物語の大群でもあります。(勿論アイドルとアイドルの関係性の物語でもあるし、それ以外の物語でもあるし、どういう物語か一元的に定めるのではなく、多様にある内の一面が成長譚という話ですよ。)
その上で大石泉が成長して辿り着く目標はどこであるべきかです。結論を言うと大石泉がアイドルとしてのアイデンティティを獲得してアイドル大石泉を自己定義する事ですが。私の中ではそうだと認識されてます。

 

先述の通り、大石泉はアイドルとしてのアイデンティティを獲得していなくて、それ故にアイドルとしての魅力に欠ける事が彼女の問題であり、解決手段はアイデンティティを獲得する事で、その為に大石泉は自分がアイドルとしてやりたい事を見つける必要がある。
言葉にするとこれだけの話なんですよ。難しい話ではないです。なんならイベント一つ、新規カード一つあれば解決する問題です。ここで必要なのは永遠に根幹となり続ける目標ではなく、彼女の自分なりのやりたい事なので、それがささやかでも曖昧でも暫定的にでもアイデンティティを獲得する事に繋がるならそれでひとまず済ませていいと思います。そもアイデンティティなんてものはそのアイドルを語る上で前提とすら言えるものでありその前提が目標だなんて意味が解らない話ではあるんですが、肝心の大石泉がそれが前提だと未だに認識していないから仕方ない。仕方なくないけど仕方ない。

そんな彼女の今の目標は先述した通り「プロデューサーの理想のアイドル」です。これは目標だとしても目標ではないし、少なくてもアイデンティティには繋がらない目標です。なにせそれがどんなアイドルか示されていないですし、示されたとしてもそこに大石泉のやりたい事や目標が干渉する余地がないからです。アイデンティティを獲得した大石泉が理想のアイドルだとか屁理屈をこねると、それはそれで循環構造になるので無視します。
けれどもこれを目標としている(目標にしていていいと思っている)からこそアイドルとしてのアイデンティティを獲得できていないのがアイドル大石泉の現状な訳です。ただしこの現状は彼女の意識に依って生まれましたが、彼女の意識だけが原因とは言えません。そう思うだけの環境があり、それで今まで成立していたが故の意識でもあります。なので何故現在の目標がそうなっているのかという由来の話へとなります。

 

大石泉はオーディションを受けてアイドルになった側ですが、アイドルという存在に対して目標や方向性を持たないままアイドルデビューしました。友人と一緒にいる事が目的であり、アイドルはその為の手段だったので、その目的が達成できるのかどうかが重要で、自分がどういったアイドルになるかというのには無関心でした。
なので大石泉は自分がどういったアイドルになるかをプロデューサーに一任しましたし、それに対してプロデューサーは友人との三人ユニット「ニューウェーブ」を結成し、どういうアイドルとしてデビューするかを一から作り上げ、結果としてアイドル自体に楽しみを感じさせる程に、彼女が全面的に満足する形で答えました。ここにおいて大石泉の中にプロデューサーへの「自分達を正しく導いてくれる」とする一種の信頼が生まれ、同時に二人の関係性が「アイドルとしての目標を与える者/目指す者」となってしまいました。
なることは問題ないんですけどね、もとより目標や方向性という物はアイデンティティと同種で必要不可欠であり、最初から何も持たない少女が決めるより知識がある大人が与えた方が上手くいくでしょう。始まりは。

そしてこの始まりからアイドル活動を通じて大石泉の意識は段々と変化して、友人の為にやっているアイドルが友人と共にやりたいアイドルに変わり、友人に助けられるだけではないソロでも活動できるアイドルを目指すようになります。友人依存脱却の一歩ですね。
しかし意識が変わり目標が変わるも、どういうアイドルになりたいかを見つけた訳ではないです。つまりプロデューサーから目標を与えられる関係は変わってないという事です。初のソロの仕事で「最適化された自分の姿を想像できないからPのセンスに任せる」等と頼る姿からも察せますね。アイドル大石泉がどうなるか決定できるのは大石泉本人ではなく、そのプロデューサーのままであり、大石泉自身がそれでいいと思っているんです。

 

もしかしなくてもアイドルの時の依存先が友人からプロデューサーに移っただけでは?

 

だからといってやる事が変わる訳ではなく、少なくても友人依存からの脱却という成長は果たしています。なので同様にプロデューサーに一任する姿勢も次第に改善されていき、いつかは自分なりに自分がどういうアイドルになりたいかを見つけるだろうという段階に辿り着いていたのが私がプロデューサーになる前なのでどう足掻いても四年以上前の話。未だに改善されてないんですねこれが、なんという不思議な話。

もちろんこの段階から現在に至るまでに大石泉も成長しています。やりたい事を見つけ、自身の欠点を克服し、他のアイドルと共演する事も増え、アイドルとしての土台を着実に積み上げてきました。しかし積み上げた末にあるはずのアイデンティティの獲得には未だ辿り着いていないのが現在の大石泉です。ここまで来るとアイデンティティとは大石泉が見つけなくてはいけないという大前提が認識されていないが故の現状ではないか、というのが私の結論な訳ですね。誰かに頼ってしまうという本人の性格とそれで上手く回ってしまっている環境が相まって大石泉が答えを出さなくていいと感じる錯覚と言いますか。
そしてこの現状が大石泉自身が目標を見つける事で改善され、その先にアイデンティティを獲得して、それを以ってアイドル大石泉を定義できるようになる事が大石泉という物語の目的地です。断言したけれどこの目的地が正しいのか、意味を持つかというとわかりません。現状でも形式としてアイドルとして成立している上に、獲得するとされているアイデンティティが不明な以上定義されるアイドル大石泉が正しいかもわからないからです。
それでも友人がいるからアイドルを始めて、プロデューサーがいるからアイドルを続ける女の子が友人にもプロデューサーにもそれ以外の誰かにも頼らずに自分自身のみを以って自分はアイドルである、と宣言する物語は成長譚として形を成しているし、同時にそれが大石泉の物語の形であり、大石泉が本当の意味でアイドルとなる瞬間だと思っています。
それが大石泉という少女の通過点であり、大石泉というアイドルの始まりであり、大石泉という人間の物語における一つの区切りになるのではないか、というのが私の主張です。

 

 

 

まとめ

 

いかがでしたか。最後にこれを言っておけばブログになるという理屈を振りかざしたい。
ここまでの話を要約すると「少女がアイドルとなる物語こそが大石泉の物語」です。
この要約とかそもそもここまでの話全般へのツッコミ所は沢山あって、担当を本質的にはアイドル未満の少女と認識している所とか、担当を褒める事よりも貶す事が多い所とか、大石泉ってそういうアイドルじゃないよという根本的な所とか多分あるんだろうけれど、私の中の大石泉はこういう女の子だと定まってしまっているので、言葉を聞く耳はあっても変える事は自分の中の声と公式との解釈違いが正式に出ない限り無いかと思われます。こんなんだから同担拒否を名乗るしかないんだよ。
なので担当アイドルに魅力は無いって叫びながらその子の成長を眺めようとする後方なんとか面している変人の備忘録がこの文章でした。納得出来なくても多少理解して貰えたりこんな話を楽しんで聞いている隣人の悪食さが伝わっていたら嬉しい。

 

そして大石泉は2019/01/09に実装された[合格バラエティ]大石泉+が最後の登場なので今(2020/04/13)現在の未登場期間が460日となっています。そろそろ来るんじゃないかと思ってから半年が経ち、前回から1年経ったなと思ってから3ヵ月経ちました。多分もうすぐ新規カードが登場すると思います。その時にここまでの話を読んでもしも万が一意外な事に興味を持った方が大石泉に手を出してくれると望外の喜びになります。よろしく。
そういう事で今回の寄稿はここで終わります。まだ大石泉について話したい事が一つ二つばかりあるので第二回の寄稿を目標に大石泉担当を名乗り続けます。いつ頃完成するかわからないけれど大石泉の新規二枚目が登場するまでには完成するんじゃないでしょうか。

Cinderella Versus 【ウサミンランプ】デッキメモ Ver0.8

※2020年4月1日のエイプリルフール記事です。また、「アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ」の4月1日限定開催イベントの要素を含みます。

※追記:4月1日限定要素ではなくなりましたが、なぜか紹介しているデッキには対人戦を想定した要素が詰め込まれています。

 

 

(諸々を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説

 

お疲れ様です。斬進です。本日はリリースされたばかりの戦略アイドルゲーム「Cinderella Versus」の自分なりの調整結果をメモとして残しておきたいと思って深夜3時半も回ったあたりからキーボードを叩いています。

巷では【あんきらコントロール*1や【スーサイドヘレン】*2のデッキレシピばかりが上がっているので、基本に帰ってシンプルなランプデッキを調整していきます。

 

 

 

 

 

【ウサミンランプ】

 

 

デッキレシピ

安部菜々》《五十嵐響子》《衛藤美紗希》《緒方智絵里》《乙倉悠貴》

《岸部彩華》《小日向美穂》《鷺沢文香》《渋谷凛》《島村卯月

《橘ありす》《月宮雅》《西島櫂》《速水奏》《久川凪》

《久川颯》《双葉杏》《本田未央》《三村かな子》《依田芳乃》

 

 

デッキコンセプト

ラウンド1を捨てる勢いでPPを稼ぎ、遅くともラウンド3までには《安部菜々》《速水奏》のどちらかを立てる。その後は対戦相手によっては《久川凪》を探し、そうでないなら枠を開けて速やかに殴り切る。どちらかというとアグロ*3寄りのランプ*4デッキ。

そもそもマナソースが11点のパンチになり試合を速やかに畳むことができるので、生半可なデッキでは太刀打ちができない。デバフで戦うデッキや汎用メタ札である《双葉杏》に対してはコンセプト否定としてマッチアップの時点で非常に有利であり、またどのような相手に対しても《久川凪》+《安部菜々》《速水奏》の「凪ミンコンボ」を揃えれば(相手も《久川凪》を使ってこない限り)勝利が可能である。また、超汎用メタカードである《双葉杏》を腐らせることができるのも強み。

アグロ気味であるためそもそもコントロールデッキである【あんきらコントロール】に対しては有利であり、【スーサイドヘレン】に対しても「序盤が弱い」という欠点が利点として働き、ヘレンの序盤のパンプアップを遅らせつつ凪ミンコンボの完成をある程度待つことができる。ただし【グロウビート】*5に対しては《双葉杏》か《久川凪》の引き次第になるため五分~微不利。

 

 

デッキ解説

 

・コンボパーツ

安部菜々》(Cu)・《速水奏》(Co)

11/10 楽曲開始時、自分アイドル全員のアピール値を11固定にする

デッキコンセプト。自陣のアイドルを等しくそこそこなパワータイプに育てるウサミンとハヤミンのWミン。基本的にはラウンド2、遅くともラウンド3までにこのアイドルを探しスカウトすることを目的としている。

基本的に無敵だが、打点を超えられることと《宮本フレデリカ》《上条春菜》《久川凪》を置かれることに対しては弱いというか後者については対処法が無いので注意が必要。置いた後も打点効率を重視して枠を買うか《久川凪》や《双葉杏》を探しにリロールするかの見極めは必要。

 

・マナ加速

緒方智絵里》(Cu)・《衛藤美紗希》(Pa

0/1 ラウンド終了時、PPを2アップ

1コストのマナ加速は《極楽鳥》以来強いと言われ続けている。ただしラウンド1は2コスト2枚と1コスト1枚と動いて3枚マナ加速を揃えたいため、枚数は3枚ではなく2枚。また基本的に相手にエモを献上するので、そこも含めて枚数をフル投入ではなくしている。

 

《五十嵐響子》(Cu)・《橘ありす》(Co)

1/2 ラウンド終了時、PPを2アップ

2コストの無条件2マナ加速。こちらも基本的には負けることやマナカーブを考えて2枚。基本的にマナ加速で同じ効果を持っているアイドルに関しては、Wミンを引けない場合に少しでもダメージを抑えられる可能性があるようシナジーを重視する、あるいは単に趣味で選んでいる。

 

《依田芳乃》(Pa

3/1 ラウンド終了時、PPを1アップ

1コストのマナ加速だが1点加速になっている代わりに打点が3ある。序盤の打点を抑えたいオシャレ枠、かつ友人の担当枠。ミラーマッチだとお互いにWミンを置いた場合は凪がない限り最初のゲージの差がそのまま勝敗の差になり得るので、意外とバカにならないことも多い。

 

《乙倉悠貴》(Cu)

0/2 ラウンド終了時、お互いのPPを3アップ

2コストのお互いマナ加速。コスト対加速の面においてラウンド1で置けると非常にやりやすいが、現在はアグロデッキよりもビッグマナ系のデッキが多く、相手にもPPを与えてしまうことでこのデッキの強みである速さと均質さを活かしきれなくなる可能性があることを考えて1枚のみの採用。環境によっては後述の《ライラ》を加えて2枚にする、あるいはこの枠も抜いて3/1の1加速にしてもいいかもしれない。

 

《西島櫂》(Pa

2/2 ラウンド終了時、アピール成功していた場合、PPを5アップ

2コスト、かつ攻撃が通れば5点加速のハイリターン。非常に環境依存・相手依存だが、後述の《久川颯》《岸部彩華》がシナジーの関係上入れやすいこと、それらと合わせてラウンド1に2枚セットで取れることを考えてピン差し。これも上述の《乙倉悠貴》と同様に環境と応相談。【スーサイドヘレン】に対してはかなり弱いことを留意されたし。

 

《月宮雅》(Cu)

3/3 ラウンド終了時、アピール成功していた場合、PPを7アップ

《西島櫂》の3コスト、かつ7点リターン版。基本的には上述した通り。シナジーが存在し、マナ加速であるため採用。ラウンド1《久川颯》《月宮雅》は基本宇宙。Wミンが次ラウンドで買えればさらに加速するため、《久川颯》を探しに行くPPを確保することもできる。

 

鷺沢文香》(Co)

4/4 ラウンド終了時、PPを3アップ

4コストの無条件3点加速。やや重いため序中盤には向かないが、BRIGHT:LIGHTSシナジーが存在し加速同士で組めるという点でサブプランのビートダウンでのアドバンテージ確保に貢献できる。PPが10を切ってしまった際の購入検討先としても非常に優秀で、実質1PPで頭数を増やすことができるのはぶん回り初期のあんきら系デッキに対してダメージを抑えるチャンスを増やすことに貢献できる。

 

・メタカード

双葉杏》(Cu)

0/1 相手のアピール値を99ダウン

人権。【あんきらコントロール】最大の敵にして【グロービート】【スーサイドヘレン】に対しても配置ゲーに持ち込むことのできるほぼ防御不可の最強メタ。2コストのアイドル2枚+このアイドルという動きがあまりにも強すぎるのでおそらくすぐに2コストになる。さもなくば特訓してもスタッツが0のままか。

 

《久川凪》(Pa

3/3 相手のアイドルのアピール値を5固定にする

準人権。打点を上げるというこのゲームの必勝法を真っ向から否定する変わり者。杏と違うのは自分自身はそのままだと負けること。しかしこのデッキにおいてはWミンのおかげで相手を5に固定したうえで11で殴るという非人道双子の姉になる。同じ効果を持っているアイドルには《宮本フレデリカ》と《上条春菜》が存在するが、今回はサイレンス系の曲*6対策として、軸であるWミンと属性が被らないPaである凪を採用している。

 

・サブプランその他シナジー

小日向美穂》(Cu)

1/2 ラウンド終了時、このアイドルの基礎アピール値を3アップ

サブプランその1。ラウンド1で美穂を購入しスケールさせていく【小日向コントロール】に近い動き。場繋ぎと安定を得られるほか、コンパクトに纏まったシナジーにより採用。ただしスケールは他のTier1デッキに比べて遅めであるので、環境と要相談。

 

《久川颯》(Co)

0/2 次のアイドルのアピール値を6アップ

自分の勝ち点をひとつ後ろに託すバッファー。2コストであることで初手に買いやすく、攻撃が通った場合に加速するアイドルの強力な補助ができる。同条件の中でも、《久川凪》と2枚でシナジーを構成できるという点が採用を後押しする。

 

《岸部彩華》(Co)

0/3 次のアイドルのアピール値を7アップ

一回り大きい《久川颯》。ガールズ・パワーシナジーが構成できるほか、デバフ系のデッキに対して無理矢理こじ開けることもできる。《西島櫂》との相性も良い。

 

三村かな子》(Cu)

4/3 楽曲開始時、自分キュートアイドル全員のアピール値を1アップ

Cu全体1点バフ。《安部菜々》からデッキを構築した結果ややデッキがCuに寄ったこと、汎用性の高い《双葉杏》とマナ加速である《緒方智絵里》とキャンディアイランドシナジーを構築でき、シナジー全体で5コストと非常に安価であるうえ杏が打点に化けることなどを考慮し採用。

 

 

島村卯月》(Cu)・《渋谷凛》(Co)・《本田未央》(Pa

2/2 楽曲開始時、自分キュート(クール・パッション)アイドル全員のアピール値を1アップ

古き良き【ニュージェネビート】のパーツ、ミッドレンジの代名詞とされた3人。強化効率で言うと3人そろえば6コストでスタッツ8が3人と非常に強いが、このデッキではややスケールに劣る点はある。凛と未央は差し替えを悩んでいる。

 

 

・差し替え候補

《ナターリア》(Pa

1/2 ラウンド終了時、PPを2アップ

《ライラ》(Co)

0/2 ラウンド終了時、お互いのPPを3アップ

2枚でシナジーを構成できるマナ加速コンビ。サブプランを削減する場合はおそらく真っ先に候補に挙がる。現在はメタの関係上《ライラ》の採用が難しく、それに伴って《ナターリア》も採用を保留している。

 

《藤原肇》(Co)

2/3 ラウンド終了時、アピール成功していた場合、基礎アピール値を7アップ

【グロウビート】のキーカード。新たなるサブプラン。《依田芳乃》と2枚で山紫水明シナジーを構築でき、また現在入っているバフ系でサポートをすれば高速で手の付けられない打点まで育つ。ただしキーカードであるWミンとの相性は芳しくなく、デッキの大部分を占めるマナ加速とも特段相性がいいわけでもないのが難点。

 

 

プレイング

1.マナ加速をします。ラウンド1はなるべくマナ加速アイドルを取ること、なるべく3人のアイドルを揃えることを頭に入れます。ダメージは気にしない。

2.10PP溜まったら全力でWミンを探します。あったら置きます。

3.相手が11点打点を早めに超えてくるデッキなら《久川凪》を探し、そうでないならPPを枠の開放に使って速やかにゲームを畳みます。

簡単ですね。

 

 

 

 

 

おわりに

まあこのゲームPvPないんでメタ回らないんですけどね。

ということで今年のエイプリルフールネタでした。かなりカード評価は適当に書いたのでちゃんとエイプリルフールです。まあエイプリルフールと言っても実際にこのデッキを持っていけばかなり簡単にCPU戦を戦えるのでオススメです。エンディングのデレスポを手軽に自分で見たい方はぜひどうぞ。

既に徹夜して朝も7時を回ってきたのでこのあたりにします。オートチェス系のゲームは初めてやったのですが、今回のエイプリルフールはアイドルでやる理由が明確になっていて面白いと感じました。シナジーの効果を打点アップ以外に用意するなど改善点として考えられる点はいくつかありますが、それはそれとして正式リリースしてくれ、暫くやるぞ。

あと次回の記事更新予定はなぜか既にあります。某氏が「語りたいけどブログとか作るの面倒で」って言ったからこのクソブログで良ければって言いました。ご期待ください。

とりあえずその方の原稿が上がりましたら。

 

 

 

 

 

追記

 

何だかよくわからんがこの記事の寿命は延びたらしい。PvPはスコアアタックしかないけど。ちなみにスコアアタックは完全に試行回数ゲーになると思います。バフ編成のCPUを引いてこっちの初手が杏+マナ加速2枚、になってから当たり運が良くてノーダメージなら勝てます。というかどのデッキでも基本初手運次第だし、スーサイド系デッキには初手からノーダメで勝つのは難しい。

*1:諸星きらり》を使ってド派手にフィニッシュする、相手が双葉杏を引いていないことに命を懸けるビートダウン。

*2:PP効率が高い代わりに相手にエモを与えるアイドルを使って能動的に《ヘレン》を育てて1~2ターンのバーストで殴り切るコンボデッキ。

*3:相対的に最も強いタイミングが試合の序盤にあるデッキ。

*4:いわゆるマナソース(この場合はPP)を稼いで大きなアクションを通常よりも早く叩きつけるタイプのデッキ。

*5:《関裕美》《藤原肇》《黒埼ちとせ》《篠原礼》のライブ成功時にスタッツが大きく上昇するアイドルを1~2人同時に育てていくビートダウンデッキ。

*6:特定属性でないアイドルの特技が使えなくなる曲。「未完成の歴史」「Spring Screaming」「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」「凸凹スピードスター」などが該当する。