このブログのどこからでも切れます

困ったときは遺書としてお使いください

オタクレクリエーションゲームのルールを整備したら薄い合同誌に参加させられた話

 

(記事を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説


お疲れ様です。斬進です。

私のことを知っていて既にこのブログの存在を覚えている人はおそらくいないでしょう。定期的に引っ掛かる限界カルタについて知りたい人を除いて。マジでなんなんだ。凄くたまにアクセス数覗いてみると急に伸びてたりして怖い。

本日は告知というか、久々に身の上話をしようと思ってキーボードを午前6時に叩いています。深夜テンションでしか作業ができないダメ人間とは私のことよ。シンプルなクズかな?

そして上記の関係上死ぬほどどうでもいい話が多いし全体的に短いので、どうでもいい話がどうでもいい人はブラウザバックするなりこっちにクソリプ送ってくるなりしてください。なおあんまりなリプは今後の付き合い方を考える場合がございますのであらかじめご了承ください。

ということでOKな方のみ先にお進みください。このタイプの警告どこで見たかなと思ったら手描き動画とかのヤツだ。このしぐさいつからあるやつなんだろう。調べると深淵になりそう。

 

 

 

 

本題という名のカルタのその後

 

前回・前々回の記事の内容関連になるので、そっち方面に興味のない方はわざわざスクロールしていただいて恐縮ですがやっぱりブラウザバックしてください。ちなみに今眠すぎて「バック」と「バッグ」を2回間違えました。

 

zanshinm9.hatenablog.com

zanshinm9.hatenablog.com

 

こちらの記事で書いた通り、「限界カルタ」なる遊びのルールアレンジと主催まがいのことをさせていただいています。ちなみに今これを書いている時点の予測では、3月の頭には第20回が開催されていると思います。思い立って書いているのでそもそもこの記事がいつ公開されるかわかりません。現在何回なのかは多分未来の自分が注釈で教えてくれてると思います。*1

前掲ブログを読まずにここを読んでいる綱渡り好きな方に説明すると、「出てきたお題に対してみんなで即興の妄想またはSSちょい未満なものまたはプロットを投げつける」ゲームです。字面の酷さは自覚しています。

そもそもルール整備といっても、自分のやったことはそう多くありません。百合のオタクが多い環境だったので具体的なキャラクター名を伴うカップリングに限定してみた*2り、次のお題は優勝者が決めるということは新設したり。最近では追加オプションとして、直前まで誰が提出したかわからないようにする、あらかじめ各人から提出されたカップリングを場札として公開してそこから取っていってもらうようにする*3、といったオプションを皆さんの協力の下考察してはいます。しかし基本的に記事内のルール説明のところでも提示したあの元ツイートに忠実に開催されるし、もう割と回数こなして皆さん手慣れているので放っておいても進行する*4ぐらいなのですが。

その結果、一課に「カルタを見たい」という理由で6人ぐらいいらっしゃいました。2週間に1度定期開催されるようになった自分主催のカルタ会は20回弱までつもり、取られた下の句は400件超。課長曰く「SSとして成形してカルタ産みたいなタグつけてどこかに流せば物量作戦で戦争に勝てる」とのこと。我々はいったい何と戦っているんでしょう。

そして一度やってみたかったと課長が語る『合同誌』なるものが、限界カルタに類似した形式で執筆されることに決まったのが去年の9月下旬でした。

いやこの記事書くために調べなおしてなんなんだけどカルタから合同まで早すぎないか? 6月末だぞ第1回カルタ会。最近の若者のフットワークの軽さたるや。偶然にも(?)コミケに参加したことのある人やボランティア参加したことのある人、小説本をたくさん出したことのある人が一課にいたのも相成ったとは思うけど早いほうだろ多分。

まあコミックマーケットには応募はしたものの、流石に天下のコミックマーケット。競争率の問題もあるし、ゴールデンウィーク開催になるんだったら祝日で休みやすいし参加人数は更に増えるだろう。そうなればわりと当たらないだろうし、歌姫庭園とかになるだろう、などと考えていました。

 

 

 

 

ということで二桁名の方が集まったアイドルマスターシンデレラガールズ百合ごった煮合同、『Tick T@ck Time!!』が2020年ゴールデンウィーク開催のコミックマーケット、C98の3日目5/4(月)に南イ19-b「アイマス庁捜査一課」にて発刊されるはこびとなりました。約70ページにわたって「時間」をテーマにそれぞれの参加者が遠慮なく自分の妄想を爆発させている様は多分必見です。多分。

追記:もしコミックマーケットが中止になるなどした場合は、近々に開催される別のイベントにて頒布することになると思います。

 

以下は参加者紹介とカップリング等の紹介になります。詳しい頒布情報につきましては、お品書きとか出たらツイートのリンクを貼っておきます。忘れるなよ未来の自分。

なお、本記事内でのカップリング表記の前後と作品内での精神的受け攻めについては必ずしも一致しないことをご了承ください。また参加者紹介文章は予告なく変更される可能性があります。

 

追伸:頒布先について

 

 

 

 

参加者紹介

 

いかざこ

担当は北条加蓮速水奏ほか。世界のあらゆる事物を担当とオリキャラに結び付けるタイプのオタク。今回の編集者。

北条加蓮Discordサーバー『MINTCORD』サーバー管理人を務めるほか、北条加蓮オンリーの主催をするなど精力的に活動する加蓮P。北条加蓮中心小説サークル『現実性探査機』としての活動のかたわら某大学のアイマス研究会代表も務めるなど、こういったイベントへの参加回数も多い。

今回のメンバーの中では唯一自分のアイマス系活動サークルを持っている。加蓮がプロデューサーになってオリジナルのアイドルをプロデュースするシリーズを絶賛執筆中で、当シリーズを書くにあたって作詞をした。また整合性について真摯に向き合っており、満月の夜の話を書くために作内で日付を指定することも。

そこそこ軽率にタスクを増やすためいつも〆切に追われているが、常に体調が悪く睡眠時間が両極端なため心配され続けている。

今回は「かなかれ(北条加蓮×速水奏)」執筆。タイトルは『永遠の陽射しの頂』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=10332191

 

ひでん之

デレマスの推しは一ノ瀬志希・二宮飛鳥・白坂小梅*5 1000のあだ名を持つ人。

様々な界隈で独自のネットワークを築きあげており、人徳が非常にある。Amazon経由で特定のお酒が送られてくるレベル。また彼が「推しカプください」と言うと、どこからともなく大量の推しカプが彼のマシュマロに送られてくる。打ち出の小槌を持っている、という説が現在最も有力。

文章についても誘い出しから一点でキルを取りつつ、それ以外の表現においても光るものを見せつけてくるタイプ。言葉選びについて一日の長があり、デレマスではコピーの難しい一ノ瀬志希・二宮飛鳥についても「らしさ」をしっかりと出してくる。最初期はト書き形式で文字を書いていたこともあり、その方面でも執筆が可能というマルチプレイヤー

「あげもの」「ウロボロス」「檸檬*6」などの名前を見たらだいたいこの人。

今回は「しきあす(一ノ瀬志希×二宮飛鳥)」執筆。タイトルは『たったの0.2秒間』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=14571959

 

元ゴリラ

担当は北条加蓮・黒埼ちとせほか。クソ映画とTCGと越境と胡乱の人。

普段はロクでもないことを考えたり本人曰くどうでもいいことでバズっている元ゴリラ。伝説の暗黒遊戯『ゴリラTRPG』が誕生するきっかけになった人らしい。担当を見て分かる通り(?)「強い人間」「強くなければいけなかった人間」が好きで、1回「停滞は死だし弱さは罪」と言ったらフォロワーとあわや解散の危機になった。

自ら「百合を書くのには向いていない」と称するが、キャラクターとキャラクターの関係性を描いていくことに対しては非常に真摯に向き合っている。ただしたまにその手段が他人から見ると理解不能だったりする*7。「これは〇されても仕方ない」みたいなことを言いながらそれでも酷いことを書いたりもする。今回はいつも考えている越境ものを提出しようとして1回怒られた。

元ゴリラなので今はゴリラではないはずだが、都合が悪くなるとゴリラのふりをしてやり過ごそうとする。

今回は「ちと千夜(黒埼ちとせ×白雪千夜)」執筆。タイトルは『The Night of the Milky Way Train』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=12436040

 

姪谷凌作

担当は依田芳乃。胡乱なアイマスプロデューサー団体「アイマス庁捜査一課」一課長。今回の発案者兼責任者*8

課長といっても開設当初のノリで付与されたらしく、基本的には放任主義。しかし今回の合同誌についてだけでも真っ先に原稿を完成させ、他人のスケジュール管理や都合のつかなくなった参加者の代理を立てるなど、責任についてはきちんと負う上司タイプの人間。

文章においてはアイデア系かつ別アプローチを真っ先に模索するタイプ。いわゆる「限界カルタ」においても、お題の解釈やそれに合わせたカップリングについて少し視点をずらしてみた作品をよく出してくる。担当と日本語についてもきちんと向き合っているため、非常に読みやすく脳内で再生しやすい文章が大きな特徴。

側溝に落ちた話を2種類持っていて、よくウケるので初対面の相手にする。そのせいか「側溝の人って存在は知ってるけどそれ以外の情報一切知らない」とフォロー外の人が言っていて少し凹んだことがある。

今回は「よしのの(依田芳乃×森久保乃々)」執筆。タイトルは『おおきな切り株』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=24826462

 

パナくま

担当は双葉杏・久川凪・久川颯ほか。アイマス庁捜査一課メカニック。ソフトもハードもいじれるらしい。今回の事務処理担当。

基本的に多忙だがノリを重視する人で、その面だけ見れば恐らく最も正しく大学生のオタクをしている。某大学アイマス研究会所属、かつ技術系カンファレンスにネットワーク機材の貸し出しやらなにやらをしているらしい*9ので、本名その他がフリー素材らしい。

本格的な二次創作行為歴が恐らく今回の参加者の中では最も短いが、恐らく最も「自分の見たい話を書く」という原点に対して忠実かつ誠実、かつ原作や先行創作に対しても非常に丁寧に向き合っている。経験を積めばかなりのやり手になると目されている。

今回の原稿に際して、締切の2日前にプロットを書きなおし始める暴挙に出た。

今回は「なーはー(久川凪×久川颯)」執筆。タイトルは『チカク/テ/トオイ/ワタシタチ』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=8051979

 

ペルチェ粒子

担当は双葉杏輿水幸子ほか。胡乱なアイマスプロデューサー団体「アイマス庁捜査一課」一課副課長。

若さゆえか他人をコミュニティに誘うことに躊躇がなく、一課拡大の最大の要因となったであろう存在。かなりの時間インターネットにいるせいで「サイバーエルフ」と呼ばれ、彼を通じたネットワークが広大かつ凄まじい人間に行き当たるため「地獄門」の異名をも持つ。推しカップリングをねだることに余念がない。

執筆歴は短いが、重要な部分に合わせて詩的な表現を上手く混ぜ込んでくる天性のセンスが光る文章が特徴的。自分の担当についての造詣が深く、思考の流れをひとつひとつ丁寧に追っていくような書き方をする。

一説には電子生命体とされている。

今回は「こしあん輿水幸子×双葉杏)」執筆。タイトルは『resin』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=31725097

 

9り

担当は双葉杏ほか。自己紹介を求めると「女児です」か「5歳です」しか言わない。

推しに人生を捧げる自称5歳女児。それ以外の情報は「交通の便が不便」「社会生活を呪っている」ぐらいしか出てこない、おそらく謎の多い人物。よく推しに命を奪われているし、なんでもないものから連想ゲーム的に命を奪われることもしばしば。

イラストも描けるし文章も書ける、天に二物を与えられた存在。物語に引き込むという点において一切の容赦がなく、そのためにはイラストや写真を挿絵として使う・Discordの編集機能を使う・表現を歪めるなどといった手管をフル活用する。「すこしふしぎ」という方向性でのSFチックな話にも定評があり、今回の作品もそのような傾向があるとかないとか。

限界になったときの言語センスに定評があり、格言を生み出すこともしばしば。

今回は「しゅがみん(佐藤心×安部菜々)」執筆。タイトルは『永遠ではない時間の中で』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=10316462

 

ふじこ

担当は依田芳乃。とある一課メンバーに小説の感想を言いにTwitterアカウントを新設したら一瞬で囲われた人。

基本的にはどこにでもいる芳乃P。水泳や音楽関係やデータ収集など、様々なことに手を出しているわりあい多趣味な人間。しかし未だその生活の多くは謎に包まれており、「個人情報を晒さない」という古のインターネットしぐさを実行し続けているそこそこ少ない若者のひとり。

文章はユーティリティプレイヤー。ギミックのある文章からのんびりとした文章まで満遍なくこなすことができる。基本的にはのどかな世界を描くことが多く、掌編を書けば「世界観が概ねまんがタイムきらら」などと称されることも。『BanG Dream!』の合同誌に参加したこともあるらしい。それなのに今回の参加者で唯一Pixiv等の作品発表媒体の投稿用アカウントを持っていない。

最近ボイスチェンジャーを実装したが、そこそこ適性があった。

今回は「おとより(乙倉悠貴×依田芳乃)」執筆。タイトルは『時の赴くままに。』。

 

ヌコスキー

担当は星輝子・森久保乃々ほか。「クセになってんだ、他人にSS投げつけるの」。

自称有袋類のほのぼの主義者。正式役職ではないが、限界カルタの宣伝を多方面に行った実績から「アイマス庁捜査一課」の広報と呼ばれることもある。わりあいカップリング厨に近い存在で、普段バイト中からSSのネタを考えている生粋のSSライター。たまに作る料理のサイズがおかしい。

筆の速さ・それに対する完成度・雰囲気を纏める能力、の三拍子揃った、一課きっての掌編ライター。基本的にはハッピーエンド・ほのぼの主義者だが、求められればややダークな作品も書き下ろすことができる。また執筆の最大の動機が自身の飢えではなく「友人が好きな話を書くため」、というなかなか珍しいタイプ。そのため履修範囲も広く、かなりのアイドルの話を書くことができる。シチュエーションに対しての文章量が適切で、「書きすぎない」描写分量を見極めるのが得意。

「推しカプ欲しいって言ってたから」という理由で一晩に9本同じカップリングのSSを書いて寝ている相手*10にリプライで纏めて送り付けた結果、その相手が夢だと思って二度寝して遅刻の憂き目に遭った。

今回は「しょうこうめ(星輝子×白坂小梅)」執筆。タイトルは『ふたりのいつものオノマトペ』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=6677069

 

流流流

担当は一ノ瀬志希・今井加奈・西園寺琴歌ほか。分類はクジラ目ハクジラ亜目マイルカ科シャチ属。

Twitterのアイコンが鯱であるため「シャチさん」と呼ばれる一課のマスコット枠。今井加奈の可愛さと無限の可能性について熱く語ることに定評がある。わりあい多忙な存在だが労働環境について訊ねるのはご法度らしい。絵は本人曰く「練習中」で、定期的にイラストをアップしている。

典型的な「見て」物を書くタイプで、アイデアから自分の頭の中でキャラクターたちが動く映像を見てそれを文章へと書き起こす。本人はそれを「電波が降ってきた」と呼ぶ。また設定を練りこむことを好む関係上短編よりは中編以降の方を得意としているが、様々な事情により中編以上を書く機会に最近は恵まれていないため今後の予定に期待がかかっている。

たまにうっかりマイクミュートを解除し忘れたり別のチャットに書き込んだりする、やや天然タイプ。

今回は「しき加奈(一ノ瀬志希×今井加奈)」執筆。タイトルは『かなかな☆ないと おうる』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=32061983

 

梓松

担当は高森藍子小日向美穂。数少ない常識人(ただし担当についての一部言説を除く)。

たまに更新される長文のブログを運営している以外はいたって一般的な社会の人。デレマス・シャニマスを通してティーンエイジャー寄りのアイドルを好きになるイメージ*11。普段は非常に忙しいらしく、今回の合同誌参加が久しぶりの正式な原稿執筆になるとかならないとか。コブクロの熱烈なファンで、3次元での一番の推しらしく「この世で一番好きな2人」と語る。

文章は堅実にして鮮やか。主として高校生~大学生近辺の年齢層のアイドルの心情描写や少女性の描写に長けており、シチュエーションの細部への拘りも相当なもの。丁寧な描写を積み重ねていく読みやすい文章も特徴的。楽曲からイメージを膨らませて文章を執筆することがままある。

今回は「みおあい(本田未央×高森藍子)」執筆。タイトルは『ずっと、』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=16136637

 

軍鶏

担当は小日向美穂北条加蓮ほか。オタクを解釈の暴力で殴れば世はなべてことも無し主義者。

わりあい色々な沼に足を突っ込んでみて、後から「やっぱりダメでしたね」と笑うタイプのオタク。かつ足を突っ込んでみたことに対してしっかりと研究をして自分の世界解釈を構築していくタイプのため、深刻に沼に嵌りやすい。一課に参加してから手段としての文筆を手に入れた。

前述の通り、「自分のアイドル解釈を読んでもらい納得してもらう」ことを目的として執筆している。そのため強固なアイドル観が完成されており、それに裏打ちされたキャラクターの動かし方に定評がある。

久川颯ガチ恋勢になりかかっており*12カップリング厨の自分との間で苦しんでいる。

今回は「新田ーニャ(新田美波×アナスタシア)」執筆。タイトルは『スターゲイザー』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=11681740

 

 

斬進

担当は特になし。*13

普段は中学生時代に1度知り合っていたインターネット顔見知りの某氏と「ないん」という共同名義でキーボードを叩いている。基本的にはネタ出し担当兼執筆以外の雑務担当兼文責多忙の際の代理執筆係。みくりーなのオタク。

今回は「みくりーな(前川みく×多田李衣菜)」執筆。タイトルは『タイマー、スタート!』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=18863236

 

Timian(ゲスト)

担当は依田芳乃。姪谷課長のみが連絡を取ることのできる幻の外部委託業者。

そもそも課長がある日突然「別名義で毎日1作ずつぐらいのペースで短編を投稿しよう」と思い立ち、一課外の知り合いを一人捕まえてきて共同執筆者にしたらしい。名前の由来は「Meitani」のeを抜いたアナグラムで、「良い(e)を抜いた」というとんちから彼の投稿は「よからぬこと」と課長に称されている。

課長との仲は良好らしく、好みのキャラクターや履修範囲もほぼ同じ。ただどちらかというと手が広い方なのか、課長がデレマスだと依田芳乃関連の話をメインに考えるのに対して、彼はそれ以外のアイドルの話を書くことが多い。最近は『SHOW BY ROCK!!』の二次創作を二人で考えているらしい。

今回は「ともかりん(藤居朋×道明寺歌鈴)」執筆。タイトルは『Let's leap』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=41075478

 

ないん(ゲスト)

担当は不明*14。上述の「ないん」文責、別名義不明*15

参加者の多忙により参加人数が減ってしまった数合わせ人員として、とある一課メンバー*16にフォロー外からSSをマシュマロを送り付けた罪で立件・寄稿させられた。一課に顔を出したことはない。共同名義の人間にもほぼ一切の個人情報を明かさないからここに書くことが少ない。

今回は「はるひな(上条春菜×荒木比奈)」執筆。タイトルは『九秒間は運命の』。

https://www.pixiv.net/member.php?id=18863236 (同上)

*1:3/14に第20回が開催されました。

*2:最近は要望の声に合わせて3人以上や単純なアイドル話にも対応したりはしました

*3:このオプションが考案されたのは、課長の「限界カルタ、カルタってわりには皆懐から下の句出してくるじゃないですか」という至極真っ当な指摘がきっかけ

*4:むしろ自分がテンプレ的にゴネるのがテンポ悪くしてるのは自覚していますが、あれはテンプレ芸みたいなものなので勘弁していただきたい

*5:本人の意向を重視して「担当」ではなく「推し」という表現をさせていただきます。

*6:檸檬堂は日本コカ・コーラ登録商標だと思います。多分。

*7:例えば速水奏と橘ありすの関係性を描くためにクソ映画を見せたりカードファイトさせたりする

*8:だいたい一課関係ではいつも

*9:筆者はそのあたりド素人なのでよくわかっていない

*10:副課長。

*11:個人の感想です。

*12:手遅れという説もある

*13:担当と言えるほどアイドルに詳しくなく、推しと言えるほど一人のアイドルに傾倒できない

*14:多分上記と同じく特になし

*15:Twitterアカウントもあるにはあるらしいが教えてくれない

*16:ひでん之。

よさみカルタを改造してプロデューサー達でやってみたら幻覚を見るオタクの宴になった・後

 

※今回の記事にも主にアイドルマスターシンデレラガールズアイドルマスターシャイニーカラーズの百合二次創作要素が今までよりも多分に含まれています。苦手な方やよくわからない方はご注意ください。

 

(諸々を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説

 

お疲れ様です。斬進です。前編の記事(

よさみカルタを改造してプロデューサー達でやってみたら幻覚を見るオタクの宴になった・前 - このブログのどこからでも切れます

)がフォロー外に少しだけ拡散されたのを見てバケモノを生み出してしまったバイオ研究員の感情が少しわかるような気がしました。でもそれはそれとして他人がやったこのゲームのログは見たい。推しについて語れば世界は平和。逆カプ除く。

今回もTwitterで流れてきた「よさみカルタ」を二次創作用に多少ルールを改造して深夜12時半から4時にかけて行った記録をブログに残しておきたいと思います。第2回カルタ会のログ取りは自分以外になると思います。前半の記事22,566文字ってなんだよ。纏めろ。

参加メンバーは相も変わらず謎のデレマス・シャニマス二次創作プロデューサー集団、通称『一課』の面々です。今回参加されている方以外にもけっこうな数の方がいらっしゃりますが、だいたい負けず劣らずのやべーやつばかりです。個人的には「普通」と「一般」と「常識的」の違いについて詳しくなれる場所だと思います。

また今回も某人からの要望によりやや物語チックな書き方のテキストカバレージとなっております。時間がかかりすぎてノリで押し切れない感満載です。後半はそもそも妄想そのものの長さも減っていますが。

(追記:この競技を何故か就活に活かす人間が現れたうえに、彼の就活用の資料に前編のブログURLが付記されました。世の人間の発想に恐れ戦いています。)

(追記2:この競技を何故か就活に活かした人間はインターン面接に合格したらしいです。このブログの話もしたらしいです。正気か?)

 

 

 

 

 

ルール説明(前編と同じ)

 

元ネタ

 こちらをもとにしたルールを構成しています。

 

ゲームの流れ

1.読み手が単語をひとつ、「上の句」として提示する。
2.取り手がその単語で考えられる関係性(カップリング)を一人ひとつ、早い者勝ち「下の句」として提示する。
3.「下の句」が全員分揃ったなら、取り手は提示した順に自分の「下の句」は「上の句」の単語をどう活かしていくのか読み手にプレゼンする。
4.読み手は独断と偏見で最も心にきた「下の句」を選ぶ。
5.勝者を称える。
6.勝者を次の読み手として1.に戻る。

 

上の句について

読み手がアドリブで思いつく場合はそれを提示する。
思いつかない場合は主催が用意した診断を使ってもよい。

shindanmaker.com

 

今回のローカルルール的注意点(お好みでどうぞ)

・参加者の中に未成年がいるため全年齢対象版。エロ・グロ問わずなるべくそのような表現は避ける。
・二次創作者の集まりなので二次創作可。キャラクター名を出すかどうかは自由。
・推しに関わりのある単語が出ても限界になりすぎない。カルタをすること優先。
・あくまで妄想やネタを投げる。SSをそのまま書いて投げない。

 

 

 

 

 

イカれた参加メンバーの紹介(敬称略)

 

ひでん之

前編の下の句はしきあす・【読み手】・かほなつ。昔掲示板にSSを投下した後暫く創作活動をしていなかったが、最近になって物書きに復帰し掌編を作ったり合同誌に参加していたりする。合同誌で挿絵を商業漫画家の方に描いてもらったり、直接感想を貰ったりといった経験まである。通話するために深夜に散歩していたら、家の目と鼻の先で職務質問を受けたことがある。

https://www.pixiv.net/member.php?id=14571959

 

9り

前半の下の句はかほちょこ・こがきり・【読み手】。急に知り合いの推しカプの話をして相手を限界にする「刺しあい」を一課で初めてやりあった人。片手で数えられるほどの回数だがシャニマスのコミュを読む配信をしたことがあり、半泣きになりながら限界を迎える9りの声と元気な小宮果穂の声と窓の外で熱唱するカエルの群れの声が相成って、さながら田舎のお通夜のワンシーンのような配信になった。

https://www.pixiv.net/member.php?id=10316462

 

姪谷凌作

前半の下の句はオリジナル・よりななみ・おとより。一課の課長と呼ばれているがわりと放任主義。最近特に深い意味はなく別名義を作り1日1作SSを投稿していたことが発覚した。ご飯を毛布で包んで猫に見立てる行為については、「僕が初めてやったときにそれが湯たんぽだったら湯たんぽが猫だったかもしれないけど、ご飯くるんで猫にしたんでご飯が猫なんですよ」と語る。

https://www.pixiv.net/member.php?id=24826462

 

シズク

前半の下の句はかえみゆ・しきあす・かえみゆ。本人の好みはいわゆるカッコいい系のアイドル。暫く忙しかったらしく一課に顔を出さなかったが、落ち着いたのか最近復帰した。この企画が一課本格復帰初の参加となった。部屋にはアイドルの名前のラベルが貼られている透明な液体の入った小瓶が並んでいるらしい。本人は中身をアロマだと主張している。

https://www.pixiv.net/member.php?id=14105829

 

斬進

前半の下の句は【読み手】・なおかれ・みくりーな。今回の主催。ネタ出しなのでこの中で最も文章力が低い。

 

 

 

 

 

物語風味のログ本編

 

 

第4句 「猫」

「じゃあ私といえばね、『ご飯』と迷ったんですけど『猫』で」

第3句に引き続き汎用性の高い上の句となった。猫のようだと称されるアイドルもいれば猫の格好をしたアイドルもいる、猫を飼う話でも猫を見つける話でもよい。ありとあらゆる方向に伸ばすことのできるアンテナを一極に集中させ、その先に自分の妄想できるカップリングが存在するか。最初の方角決めが鍵となることを予感させた。

しかし、前の句からの流れはとどまることを知らない。すなわち、好きなカップリングの妄想をすることを優先させた蛮族戦法である。トリッキーな策を仕掛けてきそうな参加者のうち姪谷は今回読み手であり下の句には不参加、主催はそもそもの文章力が足りていないということを鑑みれば、この戦法が最も強いというのもある意味理に適っているのかもしれない。そこまで考えていたかはわからないが。

第4句、最も早く動いたのは9りだった。今までは下の句を『取る』のに多少時間がかかってはいたが、ここにきて絶対的にも相対的にも早く、そのカップリングの名前をボイスチャットに乗せる。

「『しきフレ』」

小さく呻き声がしたのは、ひでん之からだっただろうか。かたや[アイロニカル・エトランゼ]では猫と戯れ、本人もまた猫っぽいと言われるアイドルである一ノ瀬志希。かたや高田純次の女体化とも言われるほど自由奔放で気まま、しかししっかりしているところはしっかりしており猫のような気品も漂わせるクォーターアイドル宮本フレデリカ。「雑に顔がいい」とも評されるこのふたりだが、いかんせん天才と自由人である。こがきりと違って思考回路がどのようになっているのかの再現が難しいため妄想でも動かす難易度は下がらないと考えられるが、9りはふたりをどう猫へと導くのか。

そこからそう間を開けずして次に下の句を提示したのはシズクであった。

「はい、『りんのの』で」

渋谷凛と森久保乃々。エイプリルフールにデレマスで開催されたアイドル召喚マスター共闘バトル型ヴィジュアルノベルイベント「シンデレラパーティ ~ドリーム・ステアウェイ~」で初登場した組み合わせである。引っ込み思案の乃々と他者を先導する正統派クールの凛ではあるが、乃々は森のなかまたちと言って森に住む小動物を好み、凛は実家の花屋で犬を飼っているという描写がある。このふたりがどのようにして猫と絡み、また猫を介してどのような関わりを見せるのか。こちらもしきフレに引き続き目の離せない下の句となることが期待される。

さらに下の句の提示ラッシュは続く。切り出したのは主催。

「ここでね、参加できなかった方々にログ見て悔しがってほしいんですよそろそろ」

非常に性格の悪いことを言い出す主催。チャットに各々提示した上の句と下の句をメモしていて、チャット欄には単語の後にカップリング4つ、が続いていた。そして主催の言ったことは、要するにここにいない人物の推しカプを出しておけば、そのカップリングの話をしたことはわかっても内容が分からないのではないか、ということだった。

「ということでね、ここでひとつ『こしあん』行きますか」

押しも押されぬ人気アイドル、輿水幸子双葉杏カップリング。最近[あんず色の青春]で映り込んで界隈を阿鼻叫喚の地獄絵図に変化させたが、この一課においては特に重要な意味を持つカップリングである。何を隠そうこのこしあんというカップリングは、放任主義気味の課長である姪谷に変わって積極的に一課で活動をしているとあるプロデューサーが愛してやまないカップリングなのだ*1。しかしこしあんは描写する人間によって関係性や向き合い方が大きく異なることが多い、言うなれば非常にブレが激しいカップリングである。今回のこしあんはどの方向に舵を切るのか、『取った』のが主催という部分も含めて不安が立ち込める。

本日2回目の4番手となることが確定したひでん之であったが、彼もそう長くは悩まずに下の句を取る。

「んー、じゃあ『かなふみ』で」

今度は主催の口からお、と感嘆の声が漏れた。ミステリアスで思わせぶりな言動、しかしやや損な役回りもこなせる速水奏と、天然の気がある本の虫アイドルの鷺沢文香。こちらもまた、ひとめ猫とそこまで縁のないふたりである。勿論読書中に猫が、などと組み合わせることも可能ではある。しかし9りと片被りとはいえ、公式で猫っぽいと言われているうえに得意分野である一ノ瀬志希、そこから専門のしきあすに繋げるというルートを蹴ってまでこのかなふみの札を選んだということで、ひでん之には何か秘策があるのでは、と思わせるチョイスとなった。

今回も第3句と同様そこまで長い時間がかからずに4つの下の句が出揃った。特徴としては、猫とアイドル達の関わり方の予想がつけづらい、という点だ。9りのしきフレは両方に猫の要素があるうえふたりの思考回路がどのように接続するかの予想が付きづらく、残りの3人においては逆にどのアイドルもそこまで強く猫と関わっていないためどこに猫が関わっていく間隙があるのかがよくわからない。午前2時も15分強過ぎて、いよいよ他人には見えない幻覚の道を各々見始めたとも言えるだろう。

幻覚をいかに繋ぎ止め、表現し、他者に納得させるか。丑三つ時を迎えて鈍くなってきた頭をフル回転させ、参加者たちは第4句のプレゼンを始める。

 

 

「まず、『フレデリカ、猫やめるよ』です」

9りがそう切り出して、私は思わずなるほど、と呟く。『フレデリカ、猫やめるよ』はその名の通りフレデリカのソロ曲の2曲目として制作された、黒猫フレデリカを主人公とした楽曲である。これの名前を出したということは、意味はどうあれ今回の「猫」はフレデリカということなのだろう。そしてその推測は、9りの次の言葉で肯定されることとなる。

「フレデリカは猫で、志希ちゃんのことをずっと見てるんですよ。で、志希ちゃんも家の前の塀のとこにいるフレちゃんを撫でてから出かけるのが習慣になってるんです」

比喩的な猫ではなく、本物の生物学上の猫になったフレデリカ。どうやら語る彼女の口ぶりからすれば、夢の中という訳でも志希の薬でなったという訳でもなく、このフレデリカは先天的に猫ということらしい。しかしフレデリカは人間として自由に生きる志希に憧れる。人間にではなく、志希に。そしてある日、なにかの形でその願いが叶うこととなる。些事はどうあれ人間の形を得たフレデリカは、志希に会いにいつもの塀の前に歩いていく。猫の時と何ら変わらない軽快な足取りで志希の家の前まで辿り着くと、ちょうど志希が玄関から出てくるところだった。しかしフレデリカは彼女に声を掛けない。塀の上を見遣って、寂しそうな顔をした志希を見たからだ。

ここで終わったとしても違和感のない展開だったが、9りはなおも続ける。言いたいことを全てメモに纏めてから話し始める、と語っていた彼女がそうするということは、この先にも彼女の中で大事ななにかがあるということだ。

フレデリカは夢から覚める。フレデリカは変わらず猫で、志希の家の塀の前にいた。玄関の扉が開いて、志希が夢の中とは違って少しだけ嬉しそうにフレデリカを撫でて、いってくるね、と歩いていく。その背中をフレデリカは追う。猫をやめることをやめるとして、それでもなお一ノ瀬志希という人間のことが知りたいから。

やがて事務所に辿り着いたフレデリカは、そこで志希に気付かれる。志希に抱え上げられて自分の家の前にいる可愛い猫なんだ、とアイドル達に紹介されたその猫は、少し誇らしげににゃあと鳴いた。

前述した通り、一ノ瀬志希宮本フレデリカはどちらも猫のようなアイドルだ。前川みくを除けば真っ先に出てくるアイドルとして挙げてもいいだろう。そのうえで、『フレデリカ、猫やめるよ』という曲のタイトルから物語を構築するのであれば、[アイロニカル・エトランゼ]のイメージと合わせて猫のフレデリカと人間の志希、という組み合わせも、言ってしまえば発想そのものはそこまで難しいものではない。しかし、9りはそこからまた絶妙に外してみせた。猫をやめてしまったことですれ違ってしまった悲しい物語ではなく、それを投げ捨ててもうひとつぶんだけ物語を展開する。ベタを知り尽くしあえて踏襲したうえで、それにプラスワンをする9り。玄人の技と言わざるを得ないだろう。

 

次にプレゼンが行われるのはシズクのりんののである。彼もまた、前提知識の共有を手短に済ませてから語りだした。

「まず、乃々はたくみんと猫カフェに行ったことがあるんですよ。それで今度は凛を誘って猫カフェに、ってことになったんですね」

猫カフェの出典はデレぽ、2018年の12月の投稿。その時はどちらかと言えば拓海にフォーカスが当てられたような扱われ方だったが、今回は乃々を主役に物語が進む。猫カフェを訪れたふたりは、当然ではあるが猫と戯れることになる。幸せそうに猫を抱いて微笑む乃々や、少し戸惑ったように触れる凛を見て、お互いに不思議な感覚を抱くとシズクは言った。

「凛ちゃんはオオカミで、乃々はリスなわけじゃないですか。でも、今ふたりは猫とふれ合って、猫の仲間というか、猫を通してお互いを見ているわけです」

乃々は[困惑の小リス]、凛は[シルバースピリット]でそれぞれリスとオオカミをモチーフにした衣装を着用している。つまりこれらのイメージは、彼女たちのプロデューサーも承知しているほどの強いイメージであることは容易に想像がつく。しかし、オフの彼女たちがふたりで出かけふれ合っているのは、そのどちらのイメージにもやや似合わない猫。普段とは違う一面や感情の動きを猫を通して垣間見ながら、アイドル達の午後は過ぎていく。

シズクの妄想はかなりコンパクトに纏まった、それでいてかなりトリッキーなものに仕上がった。シズクはいわば、違和感を違和感としてそのまま提供したのだ。渋谷凛と森久保乃々という、猫と関わった実績はなくはないとしても直接猫と結びつけるにはやや違和感を覚えるようなふたりのアイドルを出し、その違和感を覚えるからこそ「別の一面を見たような」感じをお互いに感じさせる。もちろん荒唐無稽にただ猫との関わりがないアイドルという理由で選べば、ともすればキャラ崩壊の誹りを免れえないこととなっただろう。猫カフェに行ってのんびりとした時間を過ごしそうなイメージがぎりぎりあり、なおかつ相手と長い時間そのようにして一緒に過ごすことが考え得るような愛の深そうなカップリング。シズクのカップリング選択の嗅覚が光る一作となった。

 

「まあお察しの通り、全然こしあん分からないので、まあ各々適当に聞いててください」

主催の第一声は言い訳であった。数度某氏に頼まれてこしあんのネタ出しを行ったとはいえ、いまだ輿水幸子双葉杏のパーソナリティを掴みきれない主催。無事に辿り着くことすら怪しい航海が始まっていた。

「とりあえず、輿水幸子さんは双葉杏さんをどうにかこうにか連れ出して一緒に買い物に行くことに成功した、というところからね」

自分でも苦笑しながら主催は続ける。ふたりで道を歩いていると、路地裏の少し入った先に1匹の野良猫を見つける。幸子は小走りで猫に近付いて、杏はその後ろを気だるげに歩いて近寄る。野良猫は人馴れしているのか幸子を目の前にしても逃げることも抵抗することもしない。

「で、幸子ちゃんが杏にスマホを渡して、SNS用の写真を撮ってください、って言うんですよ」

下手に路地裏の様子を写すと特定とかされそうだけど、などと言って撮影を渋る杏に、ボクと猫をアップにして写せば問題ないでしょう、と反論する幸子。少しの議論の末、杏はスマホを構える。大通りの喧騒を尻目に響いたシャッター音のあと、杏は幸子の方のスマホを返す。

「まあそこにはドアップになった猫しか写ってないんですけど」

参加者たちから案の定、というような笑いが漏れる。幸子は当然猛抗議するが、先程言った特定性の問題や幸子のSNSらしさの問題、フォーカスの問題などを杏に流れるように指摘され妥協せざるを得なくなる。少し頬を膨らませて、幸子は今日一日杏を容赦なく買い物に連れ回すことを改めて宣言する。

「――で、大通りに戻っていく幸子の後ろで、杏が自分のスマホで取った幸子のアップの写真をこっそり確認する、みたいな、そういう感じで」

第3句と同じく、主催の妄想は以上です、の声と共に終わりを迎えた。

半ば不純な動機によって選択されたこしあんだが、一課で最も詳しい人間はこの場にはいない。しかし読み手の姪谷も、彼と関わっていくうえで多くのこしあんに触れてきたことは疑いようのない事実である。この妄想が輿水幸子双葉杏らしい作品であったかの審判は、次の妄想の後に下される。

 

「えーっと、皆さん『焼きそばハロウィン』というユニット……? についてはご存じでしょうか」

本日2回目の最終プレゼンとなったひでん之が最初に確認したのは、あるユニットについてだった。

焼きそばハロウィン、というのは2018年のデレマスとローソンのコラボに起用された一ノ瀬志希鷺沢文香・城ケ崎美嘉の3人をユニットとして見た場合の非公式呼称である。この3人はそもそもが2014年のガチャからたびたび共演があり、アニメでもProject:Krone候補として集められたアイドル達である。ローソンコラボを切っ掛けにこの3人の組み合わせが広く知られることとなり、とある劇場5コマで焼きそばの匂いに3人ともなぜか釣られていたことと、ローソンコラボのそれぞれの衣装がハロウィンをイメージしたものであったことからこの仮称がつけられ、なかなかに浸透しているらしい。ひでん之の妄想は、そんな彼女たちがハロウィンのおよそひと月弱前にコラボに使う写真等の撮影を終えた後、本来衣装を着ることもないはずのハロウィン直前から始まった。

美嘉が事務所に入ってくると、そこには何故かハロウィン衣装の文香と志希がいた。志希に聞いても埒が明かないため文香にその理由を聞けば、どうやらプロデューサーとちひろさんに今年のハロウィン衣装を着て事務所内でのハロウィンの盛り上げ係を頼まれた、ということらしかった。ウィッチ姿の志希に自分の悪魔モチーフの衣装を手渡され、どこで着替えるか美嘉が悩んでいたとき。

「志希ちゃんが、急に文香さんの首の、チョーカーのところに南京錠みたいなのをがしゃっとつけるんですよ。そしたら、文香さんの声が全部猫語の、『にゃあ』とかとしか聞こえなくなるんですね」

ひでん之は説明する。文香のローソンコラボでの衣装は黒猫をモチーフとしたライカンスロープ*2なものであり、志希はそれに便乗して面白半分にこの装置を作ったのであろうということを。

照れと困惑が入り混じったような表情をしてにゃあにゃあと鳴く文香を志希は自分のスマホで撮影し、メッセージアプリで誰かに向けて送信する。数分も経たないうちに事務所の扉が勢いよく開いて、現れたのは果たして速水奏であった。どういうことかしら、と物凄い勢いで志希を問い詰める奏に、志希は見た通りこういうことだよ、と奏の顔をを鳴き続けている文香の方へ向けさせる。自分の方を見てにゃあ、とまた一声鳴いた文香に怯んだ奏の隙を見逃さず、志希は鍵のような何かを押し付けて風のように事務所を去っていった。

めくるめく状況の変化に取り残された美嘉に、溜息とともに状況の説明を求める奏。美嘉の見たままの状況――急に志希が喉に装置を取り付けてそれ以降文香が猫語になってしまったことを伝えられ、奏の溜息は深くなる。これは私がどうにかするから美嘉は志希を捕まえてきて、と美嘉に依頼をして、奏は衣装も言葉も猫になってしまった文香とふたりきりで向きなおり――

ひでん之の語る妄想に夢中になっていた参加者たちだったが、その世界を切り裂いたのはひとつの音だった。

ちん、と卓上ベルの音がボイスチャットに鳴り響いて、暫くの沈黙の後にボイスチャットが爆笑の渦に引き込まれる。実は第3句の終了時点で、夜も更けてきたため以降の作品は一定時間が過ぎると卓上ベルが鳴らされる、というルールが追加されていたのだ。その時は半ば冗談のような取り決めであったが、主催は本当にそれを実行したのだ*3。これによってひでん之は、この場で妄想を畳むことを余儀なくされる。

「まあどうせこっから全然広がらないんで」

笑いながらそう言ったひでん之は、早回しで妄想を展開し、また畳んでいく。

奏は文香の様子を見て鍵を使う決心がなかなかつかず、延々と悩んでようやく文香の喉元に鍵を差し出し、南京錠を開錠しようとする。そしてその瞬間、文香の声が奏の耳を打つ。

「――『かにゃでさん』、って、感じで、いや長くなって申し訳ないです本当」

ひでん之曰く、志希の作った装置は基本的には装着者が何か発声するのに合わせて猫の鳴き声を流すだけの簡易なもので、声を張らない文香は自分の声がかき消されていただけだった。しかし「奏さん」だけは何らかの方法で「かにゃでさん」になるようにされていたのだ、と。

こうして、途中に横槍は入ったもののひでん之の妄想は終わりを告げた。ローソンコラボの猫の衣装、というすぐには思いつかないような部分から猫要素を引っ張ってきたうえでさらに猫要素を被せ、自分の専門である一ノ瀬志希も自然にそこに絡ませて動かす。非常に練られた物語構成ではあったが、いかんせんルールに抵触してしまったのが逆風となり得る要素であった。しかし描写の精度、平たく言ったところの「本人らしさ」は依然高いクオリティを保っており、これが丑三つ時を迎えてもなお衰えることのないひでん之の頭脳のタフさを物語っている。

 

姪谷は結構な時間を優勝者の決定に費やし、しかし最後には答えを出した。

「えーっと、今回の優勝はシズクさんで」

 深夜とはいえ惜しみない拍手がシズクに送られる。姪谷はその勝因を、綺麗だったからと表現した。曇りのない長閑な日常のワンシーンを描き切ったことが姪谷の心に刺さった、ということだろう。振り返ればこのシズクの下の句は、今までの彼の下の句の各所に散りばめられていたシズクらしさのない、言い方を変えればシズクらしさの薄い下の句だ、ともとれるかもしれない。しかし、それは悪いことでは一切なく、また彼らしさを捨てたということでもない。広い文やシーンの選択肢の中から、今回は単純にシズクらしさを出さないという選択肢を取っただけである。逆に言えば、このような形式の下の句で優勝をもぎ取ったということは、シズクの幅の広さを示したということだと言えるのだ。

 

第4句も一部の人間を除いて第3句からの流れを引き継ぎ、自分の好きなカップリングを指定しそれをどれだけ上手く、短く纏めるか、という勝負になったように思える。また徐々に参加者たちが短い中で山を作ることを試行錯誤し始めた、というようなことが見て取れるような痕跡もあり、夜が更けていくとともに妄想の物語性が更に高まっていくことも期待ができた。3時を目前に、参加者たちは各々どのような進化を遂げるのか。

姪谷と同じように、シズクも持ち込みの上の句があると言った。他の参加者とともに何度か上の句の単語を推敲し、その上の句を発表する。

 

第5句 「外套」

「えーっと、『外套』、マントとかコートとかの上着、って範囲でお願いします」

最初は『コート』だったその上の句がテニスコートなどの可能性を指摘され『外套』に落ち着いてから暫くは沈思黙考の時間が続く。外行きの上着、という指定範囲には「コート」以外にも「マント」などは含まれるだろう(それで妄想しようとする人間がいるかは難しいところかもしれないが)。仮に外套の上の句をコートだと限定するのであれば、舞台は十中八九秋から冬になるだろう。その周辺の季節に合ったカップリングが自分の中にあるか、という部分も問題となる。

暫しの沈黙を挟んだ後、今度はひでん之が最初に動く。

「えー…… これ、『りんちょこ』で、行きます」

 放課後クライマックスガールズの青色担当、大和撫子を絵に描いたような女性である杜野凛世と桃色担当、ユニット内随一の普通の女子高生*4園田智代子のカップリング。[をとめ大学]で少女漫画に関連したエピソードを通して凛世の巨大感情が露呈したことにより一躍脚光を浴びたふたりであるが、未だ作品そのものの数は少ない。これはもうこれしかないです、と言いながら下の句を取ったひでん之の脳裏には、いったいどんな欠片が浮かんでいるのか。

多少悩んだように最初の下の句を取ったひでん之であったが、次の取り手も悩みながら自分の下の句を手にした。

「えー、エアプだけどやるかー…… 『あさふゆ』」

あさふゆ――シャニマスの最新追加ユニットであるStraylightのメンバー、芹沢あさひと黛冬優子のカップリングを『取った』のは、主催であった。

中学2年生とは思えないほどの奔放さや興味が湧いた事項への熱しやすさ・冷めやすさ、そしてダンスの才能と集中力に溢れた*5芹沢あさひと、アイドルとしての意識が高くどのようにすればより高みに登れるかという研究に余念がない*6黛冬優子。正反対のタイプであるふたりは、最近開催されたStraylight初主演のイベントによって大ムーヴメントを引き起こしたカップリングである。しかし、取ったのは主催である。「エアプ」と言った通り、主催はシャニマスのアカウントすら持っていないのだ。一課で何人かがやっているシャニマス配信と、Twitterで流れてくるファンアートの情報から、いったいどれだけのあさふゆが作れるのか。主催は暗雲の中を進んでいく。

 それからまた少しの間をおいて、次に下の句を宣言したのは姪谷だった。

「んー…… 『ゆいちな』で」

この上の句では初となるデレマスのカップリング、大槻唯と相川千夏のゆいちな。サクラブロッサムというデレマス初の公式言及ユニットを結成したふたりであり、いわゆるモバマスデレステを問わず、ボイス実装アイドルと未実装アイドルという垣根を越えて定期的に交流の様子が描かれるふたりでもある*7。出会いの経緯からして文学性が高く根強いファンも多いこのカップリングを、マイナーを捌いてきた姪谷はどう構築していくのか。期待がかかる。

そして最後に残ったのは9りであったが、彼女もまた姪谷に続くように下の句を取る。

「『しゅがみん』、で」

続いたその下の句に、また少しどよめきが起こった。

佐藤心安部菜々カップリングであるしゅがみんは、ふたりの強いキャラクターと後がない年齢という共通点からコメディ色を強くするかシリアス色を強くするかの匙加減が非常に難しい繊細なカップリングである。コメディが強すぎれば「カップリング」よりも「ユニット」という意味合いが強くなってしまうし、シリアス色が強すぎればそれもまた深夜帯であるこの競技においては評価が難しくなるだろう。しかもその調整を即興でやらなければならないのだ。9りの高い腕前は既に証明されているとはいえ、彼女がどのようにふたりを描き、また上の句を回収するのか全く予想ができなくなった。

第5句は、スムーズに下の句が揃った前2句と比べて多少揃うまでに時間を要した。当然今は夏であり冬の物語を考えづらいという季節の問題もあっただろうが、それ以上に彼らを悩ませたのはある種のプレッシャーなのかもしれない。今までに4句を経験し、周囲も非常にレベルの高い句を纏めている。いかに自分も他の参加者に負けない句を作るか、という部分を無意識に考えていた可能性は否めないだろう。

最初にブレイクスルーを掴み、蛮族戦法から青銅器を掴み取るのは誰か。本格的に進化が問われるなか、ひでん之の事前情報の共有から第5句は始まった。

 

「まずですね、凛世さんは寮住みなんですけど、ちょこ先輩は事務所から家が一番遠いんですよ」

そう切り出したひでん之。放課後クライマックスガールズは2人が寮生活、3人が実家暮らしであり、また実家暮らしの3人の中では智代子の家が最も遠いということは公式で度々言及されている。そのうえでひでん之はそのふたりに冬の屋外、事務所の最寄り駅の前で待ち合わせをさせる。

「で、凛世さんはちょっと人込みを避けて駅が見える方の壁に寄り掛かって、自分の指先にはーって息を吐きかけながら、待ってるんですよ」

暫くそのまま凛世は駅の出口を眺めていたが、そのうち智代子が息を切らせて出口から出てきて、凛世は手を後ろに回して壁から数歩離れる。ごめん待ったよね、という言葉にそんなことはありません、と返す、それこそ少女漫画趣味という共通点を持ったふたりに相応しい会話。さりげなく後ろに回された凛世の手を掴んで、智代子はその赤くかじかんだ指先を見る。やっぱり、と呟いて、智代子は自分の着てきたコートを少しばつの悪そうにしている凛世の肩にかける。

「『私、走ってきたから今あったかいんだよね』ってちょこ先輩が言って、凛世さんは智代子さん、って呟いて、まっすぐにちょこ先輩の方を見るんですよ」

しかし智代子はその漏れ出てしまったような凛世の感情に気付くことはなく、さらにともすれば凛世の地雷を踏みかねない言葉を口にする。プロデューサーに手袋貸してもらったことがあるからそのおすそ分けしてあげるよ、と智代子は笑ったのだ。その悪気の一切感じられない笑顔に、凛世は一瞬だけ眉を顰める。しかしやはり智代子はその感情の機微に気付くことはなく、手を繋いで一緒に事務所へと向かう。プロデューサーの手袋が嵌った手を、凛世と繋いで。

ひでん之のプレゼンが終わると同時になるほど、と声が上がる。この語り口では凛世が眉を顰めた理由はそれ単体ではわからない。プロデューサーに対して好意を抱いていることが公式で明確に表現されている凛世では、「プロデューサーの手袋を智代子が貸してもらっていたこと」に対しての表情の可能性も、「智代子が自分と手を繋ぐ理由にプロデューサーを出したこと」に対しての表情の可能性もあるからである。しかしその前の智代子さん、というたった一言の呟きから凛世の感情が智代子に向けられたものである可能性が高いことが読み取れるし、そもそもこの感情の答えを本人すら分かっていないという可能性も存在する。その文脈による方向性を定めつつ、最後まで詰め切らせず曖昧さを残すという描写が、見事に杜野凛世というキャラクターと合致していた。

また今回のひでん之のプレゼンはかなり詳細な手指の動きや表情の変化を口頭で説明していたのも印象に残った。今までの彼は外見よりも心情の機微などの内面の描写や話の流れに重点を置いて語ることが多かったが、今回は違った。「第5句のちょこりんぜは単純な映像の紹介だった」と本人は後に語っていたが、ゲームを始める遙か以前から『画像』でネタを見られない、と言っていたひでん之がついにそのコツを掴んだ、という事実はかなり大きなものであることは間違いないだろう。

 

次は主催の番であったが、主催は話すのを渋っていた。当然と言えば当然である。しかしいつまでもそうしているわけにはいかない。本当に話さなきゃ駄目ですか、という質問が一蹴されたところでようやく主催は話し始めた。

「相当勝手なイメージなんですけど、黛冬優子さんは冬は大きめのダッフルコートを着てそう、ってのがまずありましてね」

それだけ前置きをして主催は妄想を展開しはじめる。ある冬の休日の早朝、マスク越しに白い息を吐き出しながら冬優子が事務所ビルを訪れると、ビルの前にやけに丸っこくなったあさひが立っているのを認める。ため息をつきながらどうしたのか訊ねると、あさひは親に自分じゃ着ないからと上着を多めに着せられ、事務所に着いてからプロデューサーにも待機時間に外で遊ぶならと着せられ、結果この状態になったと答えた。冬優子はもう一度溜息をついて、危ないからと言って過剰に着せられた上着を脱がせ、それから自分の羽織っていたあさひにはかなり大きいダッフルコートを着せる。

どうして自己管理もできないアイドルと組まなきゃいけないのかしら、と悪態をつく冬優子*8を前にしてもあさひは無邪気に喜び、冬優子はそれを見てさらに溜息を深める。

「……それで、最後に何気なくあさひちゃんがダッフルコートの匂いを嗅いでめちゃくちゃ怒られる、ってところで終わりです」

参加者たちの間に多少の笑いが起こって、主催は以上です、と妄想を締めた。

匂い嗅ぐのはやりそう、という声もあり、参加者から極端な解釈違いや悪評が出ることはなかったが、結果として直前のひでん之の妄想と「自分のコートを着せてあげる」という部分が被っているところに関しては読み手の好み次第とはいえ難しい部分であるように感じた。ファンアートとタイムラインの知識で建てた砂上の楼閣は、読み手の目にどう映るのか。

 

「まず言いたいのは、ちなったんコート似合うよね、ってことなんですよね」

姪谷は開口一番にそう言って小さく笑った。どうやら数あるカップリングの中でゆいちなを選び取った最大の理由はそこだったらしく、姪谷はその後を悩んでいたようだった。しかし言葉少なでありながらも、姪谷の中にある確たるイメージを彼は口にする。

冬の近い秋、当然のように一緒にいるふたり。唯は千夏に対して、コートを選びに行かないかと誘う。千夏が唯の突然の提案にやや意地悪をするようにどのお店に行くのかと訊ねると、唯は少し考えてイギリスやフランスの名前を出す。流石にそれは無理よ、と千夏が笑うと、唯もまた笑い返して手元のファッション誌を千夏の前に差し出して、じゃあココとかどう、と本当の相談を始めるのである。

そういう風景が見たいだけなんですよ、と語った姪谷に参加者たちは賛同し、次々とそれに連なる風景を口にしていく。一緒に買い物に行った店のショーウィンドウを撮影してSNSにアップする唯や、暫くしてそのショーウィンドウに映っていたコートを着ていることが確認される千夏、数週間後にそれらの情報を照らし合わせてようやく「あの時の唯のショッピングは千夏の服を見に行っていたのか」と理解する彼女たちのファンたち。最後に関してはやや考案者本人の願望が混ざっている気がしなくもないが、しかしそれは彼の今回の妄想の拡張性の高さを如実に表しているとも言える。完全に作者の中で完結する物語も勿論いいものであるが、聞き手側に想像させる物語にもひとつの良さがある。カップリング厨はふたりを見守る傍観者たれ、とはよく言ったものだが、今回の姪谷のプレゼンには他人を傍観者たらしめる何かがあった、ということなのだろう。核となる姪谷の妄想そのものが実際にふたりがしていてもおかしくのないほどイメージに沿ったものだったからこそ、と私は考える。

 

「まず冬で、しゅがみんのふたりで外で出かけてる」

9りは第1句から変わらず、平坦気味な口調で自分のプレゼンを読み上げはじめた。

「で、菜々さんは寒がりなんでコートを羽織ってるんですけど、しゅがはさんは寒いの大丈夫なんで、コート羽織ってこなかったんです」

昼からふたりで出かけているのか、それでも寒すぎる・熱すぎるなどといった不便はなくふたりの外出は進んでいく。しかし別れしな、電車で帰る菜々を徒歩で帰る心が見送る段になって、菜々は心にコートを貸そうとする。風邪をひくといけないから、とコートを手渡そうとする菜々と、大丈夫だし返すのが面倒になると問題だから、とそれを断ろうとする心、最終的に勝ったのは菜々だった。心の手に自分のコートを押し付けるように渡して、逃げるように改札口に走っていく菜々。心はその背中を呆然と見送って、やや違和感をおぼえながらもコートを羽織って歩き出す。そして何気なく心がコートのポケットに手を突っ込むと、紙の擦れる音がした。何事かと心がそれをポケットから取り出してみると、どうやらそれは手紙のようだった。

この時点で既に他の参加者たちはこの後の展開を察したのか、感嘆の声や呻き声がそこここから聞こえはじめる。しかし9りはそれを気にしていないかのように、テンポを変えることなく続けていく。

心が帰宅しその手紙を読んでみれば、果たしてそれは自分宛のラブレターであった。つまり菜々が心に半ば無理矢理とも言える形でコートを手渡してきたのは、これを渡したかったからだったのだ。当然心は驚く。そのような手紙を渡されたことにも、心が気付かなければそのまま無視されて手元に帰ってきてしまいかねない方法を菜々が選んだことにも。そして心は手紙を裏返し、愛しの「パイセン」への返事を認める。書き上げたそれをどうするか一瞬だけ迷った後、心は手紙の元あった場所――コートのポケットにそれを返した。

誰からともなく、拍手をしていた。9りの妄想は完璧な空気感を伴っていた。いわば「ギリギリの年齢」である彼女たちがおふざけなどではなく本気でやりそうであり、またそれが許容されるギリギリの青春、というラインを9りは完璧に読み切っていたのだ。また、ひでん之や主催と同様にこの話は「コートを着せてあげる」話でありながらも、それだけでコートの出番を終わらせることなくコートを「手紙を運ぶ手段」としても用いることでより上の句と物語そのものを密接に関わらせている。即興とは思えない完成度を誇る、非常にレベルの高い一句だと言える。

 

「いやぁ、ここは9りさんのしゅがみんで、優勝は」

シズクの決断は素早く、またそれに異論を唱えるものも当然の如く存在しなかった。改めて9りに惜しみのない拍手が贈られる。

9りの物語は前述の通り物語そのもののクオリティも高かったうえに、物語の構造も高い評価を得た。菜々が逃げるように去ったところで聞き手側に「菜々はコートを渡すことが目的だった、なら渡すことによって何があるのだろう」と想像をさせ、手紙が出てくることでその疑問を解決させながら物語としてひとつの山を作る。さらにそこで終わらせるわけではなく心に返事を書かせ、それをコートのポケットに入れたところで物語を畳む。あくまでも上の句である「コート」に主軸を置いた、ある種この競技の基本に帰ったようなその下の句は、深夜も3時半を前にした参加者たちの心を大きく揺さぶったのだ。

 

振り返れば第5句は挑戦の句であった、と捉えることもできた。ひでん之は『画像』を見てそれを自分の妄想として語ることに、姪谷は最低限の表現と断片的なワンシーンから実存性を描き出すことに挑戦していった。その中で9りが優勝をもぎ取ったというのは、決して彼女が研鑽をせず物理で殴り倒したということではなく、今までと同じ武器をそのままアップグレードさせたということに他ならない。自分の持ち味を生かした武器をそのまま強化して使えるのであればその方が圧倒的に手に馴染む。9りの成長性がこの句を制した、と言っても過言ではないだろう。

参加者たちの眠気も限界点に達しようとしていた。全員が1回ずつ読み手をやったことだし次で終わりにしよう、という決定が為された後、2回目の読み手となった9りは再び用意された診断を回す。その結果を見て少し困惑したような声を上げたものの、最後の上の句を読み上げた。

 

第6句 「てのひら」

「え、大丈夫かなこれ、『てのひら』です」

最後の上の句は『てのひら』。身体の部位でカップリングの妄想をするのであればオーソドックスな部類に入るであろう部分である。人間の中でも発達した身体の部分のひとつでもあり、その動きや文学的表現は多岐にわたる。それ故に、てのひらをどうするか、という選択によって、それに似合うカップリングもまた変わってくる。書きたいものを先に決め上の句を合わせる蛮族戦法も、上の句の活用法から考えるトリッキーな戦法もとりやすいという、最後に相応しい広さと深さを持った上の句であった。しかしそれ故、停滞した時間が取り手たちの間に流れる。

9りが「参加できるならこれこそ小宮果穂さんだった」とこぼした。それに対して姪谷が「いや、これこそよしのんなんですけどね」と返し、行きます、と声をあげた。

「えーっと、また呼び方が分からなくて申し訳ないんですけど…… 『藤居朋×道明寺歌鈴』ちゃんで」

うわっ、と参加者たちが声をあげ、頭を抱える。それも当然の話、藤居朋は占いを趣味としているアイドル。自分で様々な占いが可能であり、そのひとつに手相占いも含まれているのだ。『てのひら』を上の句とするのであればこれほどにない恰好のアイドルである。しかし、参加者たちには藤居朋と誰か、というカップリングの発想がなかったため、その恰好のアイドルが見えていなかった。そのうえでさらに姪谷が選んだ相手はミス・フォーチュン・テリングでの共演経験もあり、半ば超常現象的なドジに巻き込まれる不運なアイドルである道明寺歌鈴。おそらく行われる「藤居朋が手相を見る」という行為の相手としては十分すぎる理由が既にそこにあった。マイナーなカップリングでも上手く捌くことのできる姪谷の面目躍如とも言える、素晴らしいチョイスだった。

姪谷の下の句にひととおり呻いた取り手たちの中で、次に動いたのはシズクだった。その選択に、またどよめきが上がる。

「はい、じゃあ『あんきら』で、お願いします」

双葉杏諸星きらり。pixivのデレマス百合カップリングで最も登録作品の多い、伝統のあるカップリング。同い年で一日違いの誕生日、低身長と高身長、働かないアイドルと精いっぱい仕事を楽しむアイドル。しかしその根底にあるものは似通っており、そこが琴線に触れたプロデューサーも多いという。かなり対応できるシチュエーションに幅のあるアイドルたちであり、シズクも以前「元少年兵の双葉杏」を考えるなどをしていた。そんなシズクがあんきらでどのような『てのひら』を描くのか。

そして次に下の句を取ったのはひでん之。彼も戸惑ったように、しかししっかりとその名を告げる。

「え、えっと、これは『じゅりなつ』、です」

西城樹里と有栖川夏葉、またも放課後クライマックスガールズ内のカップリング。[意地っ張りサンセット]のカードコミュに代表されるように、一見ケンカップルのように見えてその実シャニマス内の時間が経過していくにつれてそのような面というよりかは実力を認め合いお互いを尊重するという面が強くなっていく、時間による関係性の変化が非常に明瞭なふたりである。典型的な口の悪い不良少女系ツンデレであるところの樹里とストイックでトレーニングに余念がないが少女のような無邪気さをも内包している夏葉、放課後クライマックスガールズの中でもかなり人気のあるカップリングをひでん之は選択した。なぜかひでん之自身が挙動不審なのは置いておいて、優しさというよりも情熱であるじゅりなつと上の句がどう繋がるのか想像を膨らませられる下の句である。

最後に取り残されたのは主催。暫く唸って、苦々しそうな声色で最初から考えてはいたらしい下の句を挙げる。

「行ける気がしないんだよなぁー…… 『みおあい』で、はい」

参加者たちからまた小さく納得の声があがった、ような気がした。みおあい――本田未央高森藍子カップリングは、青春少女漫画のような甘酸っぱさに適性があるカップリングである。「友情番長」などと形容されることもあるほど多くの友達を作り、しかしこと恋愛となると話をするのも恥ずかしがったりとポンコツな面を覗かせる未央と、森ガールをイメージしたと思わせるようなおっとりふんわりさとパッション属性に相応しい積極性を併せ持つ藍子。無意識に藍子をリードするような未央も、奥手になってしまった未央を引き寄せる藍子も描けるこのカップリングにおいて、「手を繋ぐ」という行為にフォーカスを当てるのはいわゆるベタな当て方のひとつである。また藍子のソロ曲である『お散歩カメラ』には「手のひらの上にちょこんと乗る幸せを探しに行こう」という歌詞もあるため、その点でもこのカップリングには馴染むと言えるだろう。逆に苦しむ理由の無いはずの下の句で主催が苦しんでいるのは、その実力の無さ故か。

いよいよ最後の句となり、いっそう取り手たちに気合の入った第6句。下の句が出揃い、参加者たちは最後の殴り合いを始める。ある者は自分の手に馴染む武器を手に、またある者は上の句に合った急所をつくことのできる武器を手に。自分の持てる技術を駆使して、丑三つ時すらとうに終わりを迎えた夜に最後に立っているのは誰か。

 

「まあ、朋ちゃんが歌鈴ちゃんの手相を見てあげながら、とりとめのない話をするんですよ」

姪谷の第6句は、そんな語りから始まった。姪谷は直前の自身の句と同じように、言葉は少ないもののポイントを押さえて話をしていく。

ドジ体質から定期的に占いをしてもらう歌鈴と、手相を見る朋。朋の指先が歌鈴の手のひらをなぞるたびに小さく肩を竦めてくすぐったがる歌鈴を見て何がしかの悪戯心が惹起させられたのか、それとも自分に少しでもチャンスがあるようにという打算的な考えが鎌首をもたげたのか。朋は歌鈴の恋愛運について、少しだけ嘘を交えて話していく。例えばそれは歌鈴の恋愛運がやや好調であるといったようなものであったり、いわゆる運命の人というものが案外近くにいるだろうといった類いのものであったり。そしてそれに対して、歌鈴ははにかんで他の誰かの話をするのだ。一切の他意の無いその話を聞いて、朋はそれを狡い自分に下った天罰のように感じどことなく暗い面持ちのまま、顔を上げずに占いを続ける――

姪谷が語り終わったボイスチャットに溜息が満ちる。物語としての落とし方もさることながら、「天罰」という言葉のチョイスが参加者たちの心に深く刻み込まれたようだった。程度や向き合い方の差はあれど方向性として不運なアイドルである藤居朋が、それでも計画が上手くいかなかった「アンラッキー」ではなく「天罰」と思ったという事実が、参加者たちの心に突き刺さる。

第6句の初手として読み上げられた姪谷の句は、「マイナーなカップリングであっても捉えきり捌く」という前半の姪谷の句に見られた特徴と、「要点のみを抑え残りを想像させるような広がりを持たせる」という後半の姪谷の句に見られた特徴がミックスされた、まさに進化の一句であった。一課課長としての貫禄と威厳を見せつけたものとなったであろう。

 

「先に言っておくと、今回の私の話はめちゃくちゃ短いんで」

そう言った2番手のシズクの妄想は、本当に「小さい物語」だった。示されたシーンはたった2つ、言葉にしてしまえば30秒と保たない物語。しかし、その「小ささ」こそがシズクの用意した武器だった。

「きらりを助けるために傷付けた杏の手のひらを見て、杏の強さを知るきらり、っていうそれだけで、杏もきらりを包み込んで守ってあげられないから手のひらでしか守れない、っていう」

9りがまさに刺された*9ような呻き声をあげる。他の参加者も感嘆の声をあげた。

シズクの物語は今までのものと比べると極端に短い。ストーリーの規模としても完全に外界との関わりをシャットアウトしたふたりの世界での話であり、ふたりの間での対話すら存在しないという意味では姪谷の句よりも小さい世界の話と言えるだろう。しかし、この句はそれでいいのだ。何故なら、双葉杏の身体は小さいから。双葉杏の手のひらは小さいから。双葉杏がどれだけ諸星きらりを包み込むような愛と覚悟を持っていたとしても彼女の身体は小さく、そして手を握りこんでしまえば傷付いた手のひらを隠すことなど造作もないほど彼女の手のひらは小さい。その「小ささ」を表現することに長大な文章を使ってもよいのだが、シズクはあえてそれを放棄した。言わば杏の手のひらを無理に開かせることをしなかったのだ。そして、そのSSであればある種説明不足だと詰られても仕方のないそれは、この場で繰り広げられるのがSSではなく妄想だからこそ許される特権的行為であった。やや殺伐としたシズクの世界観とその中で無言かつ一瞬だけの感情の交錯というシチュエーション、双葉杏諸星きらりというアイドルのチョイス。すべてが完全に噛み合ったうえでの今までで最も小さい物語は、参加者たちに大きな爪痕を残したに違いない。

 

敢えて誤解を恐れず先に言うのであれば、ひでん之の第6句は妄想ではなかった・・・・・・・・

「――放課後クライマックスガールズのライブイベントで、プールみたいなとこで夏葉さんがソロステージをやっていて、樹里さんがそれを見てたんですよ」

それは前提知識の共有ですらなく、ひでん之の口調も前提の押し付けという感じのものではなかった。強いて表現するのであれば、記憶の中の光景を確認しながら思い出しているような口調。

「夏葉さんの手指の動きや衣装の翻りとか、そういうスポットライトの中の一挙手一投足で夏葉さんが世界中に『私は有栖川夏葉だ』っていうのを発信してるのを網膜に焼き付けながら、やっぱかっけーなって思ってたら、夏葉さんのソロ曲の最後のホルンの音が鳴って、それから一瞬だけ静かになってから聴きなれた樹里ちゃんのソロのイントロのドラムパターンが流れ出したんですね」

当然だが、現在アイドルマスターシャイニーカラーズにはソロ曲を持っているアイドルは1人たりとも存在しない。だがもはや、それを指摘する人間はこの場にいなかった。指摘することさえできなかった、の方が正しいだろう。何故ならその瞬間、筆者にはふたつの曲のアウトロとイントロが確かに聴こえたのだ。シャニマスに対する造詣が深くない筆者でさえそうなのだ、他の人間が指摘できる道理はないだろう。

「そのイントロで我に返った樹里ちゃんがステージに向かおうとして、そこにすごい楽しそうに歯を見せた夏葉さんが走って向かってくんですよ。で、夏葉さんがはけてから入るはずだったんですけど樹里ちゃんも走り出して、すれ違う瞬間にばしぃんっ、って思いっきりハイタッチをするんです。それから夏葉さんが舞台袖にはけてって、樹里さんがそのじんじんする手のひらをグッと握りしめて、『行くぜお前らぁ!』って拳を突き上げて、それで歌い始めるんですよ、はい」

ひでん之が語り終わったそこにあったのは、果たして沈黙であった。それは決してひでん之の句が参加者たちに受け入れられなかったということではなく、その句があまりにも真に迫るものだったがゆえの静寂だった。そして口を開いたのは読み手の9り。

「……いや、もう妄想じゃなくってただのライブレポじゃん」

読み手をしてそこまで言わしめる、まるで本当にあったことを語るような語り口。描写のこまやかな動きも相成って、参加者たちはそこにライブの幻を見た。ひでん之の見ていた幻覚を共有させられた。それはまさにこの競技のひとつの極点だ。

しつこいようではあるが、彼は『画像』で天啓を得て書き始めるような物書きではない。しかし今回この句に至って、ひでん之はその神髄を垣間見たように思える。強烈なワンシーンを手中に収め、それを表現の工夫によって受け取り手の脳内にも焼き付ける。それは作家たちの目指すひとつの目的地であり至高天。さながら『神曲』のダンテのように、彼はひとときであれどその至高天へと辿り着いたのかもしれない。

 

 (※第6句4枚目主催の『みおあい』について、自分で自分の拙すぎる妄想のレビューをするのがあまりにも地獄でとうとう耐えきれなかったため、この部分だけ第6句読み手の9り先生にご寄稿いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。なお、提出していただいた原文をそのままお送りします*10。)

    公園にお散歩にきていた未央さんと藍子さん。未央さんが飲み物を買いに行きます。

    藍子さんがかの有名な歌の歌詞「手のひらを太陽に すかしてみれば」と鼻歌を歌いながらこの歌詞の「太陽」に未央さんを見出して飲み物を買いに行っている未央さんに手を伸ばします。

    未央さんがそれに気づいて「真っ赤に流れる〜〜」と続いて歌う、という内容だったはずです。ざっくり言って。多分。間違ってたらごめんなさい。切腹します。

    これなんですけどね〜めちゃめちゃに暖かいんですよね。なんていうんだろう、空気感が好きです。優しくて柔らかくてあったかい。太陽でした(?)公園でいたらニコニコしちゃいそう。いそうってくらい存在がある。そういうことです。

    終わっちゃった、こんな短くてええんか?

 

 

最終句である第6句、その下の句のプレゼンが全て終了した。参加者たちは、それぞれ別の方向で自分の武器を進化させて最後の戦いに赴いていた。前半と後半のやや毛色の違う2つの妄想技法を融合させた姪谷、世界観に自分らしさを込めながらもメタ的な要素も含めて作品として仕上げたシズク、自分にはできないと言っていたものを克服し周囲を映像の世界に引き込んだひでん之。単純な優劣をつけ難いこの判定は、しかして9りの一言で決着を迎えた。

「え、すべてに金メダルをあげたい気分だ…… え、いいですかそれで」

ややあってボイスチャットに笑いがこぼれ、参加者たちも同意する。予定調和で陳腐な「おてて繋いでみんなでゴール」エンドと言ってしまえばそれまでだが、本当に第6句は全員の語り方から内容までが素晴らしく、参加者の誰も優劣をつけられないような状態に陥っていた。そのため、参加者たちも9りの提案に誰一人異を唱えることなく同意した。4時でもあったし。

9りはそれぞれに賞を決めた。カップリング選択の妙と「天罰」という言葉選びに優れていた姪谷の下の句には「発想一等賞」を。あまりにも少ない文章であまりにも多くの感情を予感させるような濃度の高かったシズクの下の句には「火力一等賞」を。誰もが実在を信じて疑わないほどの幻覚を描き出したひでん之の下の句には「現実一等賞」を。*11それらをすべて決め終わった後、9りは少し満足気にうん、と呟いた。

参加者たちは口々にねぎらいの言葉をかけ合い、自分のメモや主催のとっていたあらすじのメモ書きを見ながら感想戦を行う。感想戦とそれに付随した雑談は、日が完全に昇るまで行われた。

 

 

かくして、急遽開催が決定したカルタ大会は終了の運びとなった。

全体を通して振り返ると、やはり参加者は読み手の好みに沿ったものよりも自分の最大火力を出し切る方向に舵を取りやすいものと考えられる。そしてその中でいかに火力を通しやすくするために即興で様々な技芸を凝らし、ストーリーの山や谷を作るか。その瞬発力こそが勝負のカギを握っているのだろう。蛮族戦法であっても、ただ手に馴染む棍棒で殴っているだけではどうしようもないこともあるのだ。周囲の蛮族が成長していくのであればなおさら。

――しかし、参加者たちはまだ知らなかった。第2回のカルタ大会では、"近代兵器"を持った新たなる刺客が蛮族オタクの領域を襲うことを。 

 

 

 

おわりに

 

ということで第4句から第6句まででした。前回より文字数が長くなってるんですが、何故なんでしょうか。纏めるのが下手だからです。次回は別の人にもログを渡してあるのでその方が書いてくれると思います。

当日終わって朝5時ぐらいから書き始めて、現在は8月1日です。まる1か月かかりました。「このままではブログを書き終わる前に第2回カルタ会が開催されかねないため」じゃないだろもう第3回も終わって今週末には第4回が開催予定だよ。そこそこの人気がある企画かつ自分の筆が遅いことが何もかも悪い。文責も死んでたし。

ただ、実際非常に楽しい企画ではありますので、もしよろしければ同じジャンルのオタクたちで集まってやってみてください。楽しいですよ。深夜帯にやるとなおよし。そして終わったらみんなブログを書け。他人の書いた文章を読ませろ。自分の文章はもう見飽きたんだジョン。

 

ちなみにこの企画の名前は「限界カルタ」になりました。

 

レポート明けで死んでいる頭で書いていたら無軌道の極みになりそうだったのでこのあたりにします。これでようやく約束の3記事に辿り着いたので、もしかしなくてもこのブログが更新されることは未来永劫ないかもしれません。私には面白いブログを書けるような文章の才能がないので。才能って悲しい。みんなブログを書くんだ、ここにいる奴よりは上手く書けるから。

とりあえずまたなにか思いつきましたら。

*1:どれぐらい愛してやまないかといえば、自動でこしあんを検索するbotを作ったり、作品を作者含めて殆ど把握していたり、ことあるごとに一課のメンバーにこしあんを請求していたりする。ついた渾名がこしあん893。

*2:編者註:本人は『リカント的』と仰っていましたが、リカントでググってもDQの敵しか出てこなかったので表現を変更しています。また『ライカンスロープ』も本来人狼のみを指す言葉ではありますが、慣用的に他の獣に変化する獣人にも使われることを確認したうえで、雰囲気を重視してこの言葉を選択しております。殴らないでください。これが正しい注釈の使い方。

*3:主催曰く、「まさか速攻で本当に超えてくる人がいるとは思わなかった」。

*4:諸説あります。

*5:かなりボカして書いていることを察していただければ幸いです。

*6:鬼のようにボカして書いていることを察していただければ幸いです。こちらに関しては後で触れざるを得ないですが。

*7:pixiv大百科とかが最新の情報まではいかずともゆいちなという概念を知るのに便利なので読んだことのない方はぜひ読んでください。

*8:彼女は完全な他人に好かれるための可愛い「ふゆ」と、憎まれ口やぶっきらぼうにとられることもある感情と打算の「冬優子」のふたつの面を持つ。どちらが本当とかはないし、どちらも偽物の可能性すらある。直近のイベントでユニットの仲間には「冬優子」を見せた。

*9:前述の通り彼女は定期的にTwitterのフォロワーに向けて相手のツボをつくようなネタを放流し、やり返されて自分も限界になるという行為をしている。これを彼女は「刺しあい」と呼んでいる。

*10:以下のような文章が展開されるご本人曰く限界なブログ「髪洗いながら小洒落たブログ名考えてたらシャンプー2回やっちゃった」はこちら https://kyuri9ri.hatenablog.com/。ブログタイトルのセンスたるや。)

*11:ちなみに文責の下の句には「太陽一等賞」が贈られた。

よさみカルタを改造してプロデューサー達でやってみたら幻覚を見るオタクの宴になった・前

 

※今回の記事には主にアイドルマスターシンデレラガールズアイドルマスターシャイニーカラーズの百合二次創作要素が今までよりも多分に含まれています。苦手な方やよくわからない方はご注意ください。

 

(追記:後編を投稿しました。

よさみカルタを改造してプロデューサー達でやってみたら幻覚を見るオタクの宴になった・後 - このブログのどこからでも切れます

 

(諸々を飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前説

 

お疲れ様です。斬進です。最近インターネット上の知り合いに「理解できない、怖い」みたいなことを言われますが至って善良なる一般市民です。人権があるかは怪しいです。

今日はTwitterで流れてきた「よさみカルタ」を二次創作用に多少ルールを改造して深夜12時半から4時にかけて行った記録をブログに残しておきたいと思います。主催とはいえ一番文章力がない人間がログを書くのは間違っていると自分でも思いますが。結論から言うと早口限界オタクの幻覚のぶつけあいになりました。

参加メンバーは謎のデレマス・シャニマス二次創作プロデューサー集団、通称『一課』の面々です。わりと今でも何故ここに自分が所属しているかは謎ですが、面白い人達であることだけは確かです。姉にメンバー説明をしたら「弟よ、危ない人と関わりを持っちゃ駄目だって言ったでしょ」と言われました。否定はできません。

また今回は某人からの要望によりやや物語チックな書き方のテキストカバレージとなっております。時間がかかりすぎて数日間に渡って書いているのですが、ノリで押し切れるかどうか不安です。 

(追伸)このままだと2週間とか平気でかかりそうなので前半3句で一旦アップロードすることにします。後編も需要があるなら頑張ります。

 

 

 

 

ルール説明

 

元ネタ

 こちらをもとにしたルールを構成しています。

 

ゲームの流れ

1.読み手が単語をひとつ、「上の句」として提示する。
2.取り手がその単語で考えられる関係性(カップリング)を一人ひとつ、早い者勝ち「下の句」として提示する。
3.「下の句」が全員分揃ったなら、取り手は提示した順に自分の「下の句」は「上の句」の単語をどう活かしていくのか読み手にプレゼンする。
4.読み手は独断と偏見で最も心にきた「下の句」を選ぶ。
5.勝者を称える。
6.勝者を次の読み手として1.に戻る。

 

上の句について

読み手がアドリブで思いつく場合はそれを提示する。
思いつかない場合は主催が用意した診断を使ってもよい。

shindanmaker.com

 

今回のローカルルール的注意点(お好みでどうぞ)

・参加者の中に未成年がいるため全年齢対象版。エロ・グロ問わずなるべくそのような表現は避ける。
・二次創作者の集まりなので二次創作可。キャラクター名を出すかどうかは自由。
・推しに関わりのある単語が出ても限界になりすぎない。カルタをすること優先。
・あくまで妄想やネタを投げる。SSをそのまま書いて投げない。

 

 

 

 

 

イカれた参加メンバーの紹介(敬称略)

 

ひでん之

専門は一ノ瀬志希・二宮飛鳥・小宮果穂。某名刺メーカーなどの非常に小さなサイズ感できっちり「らしさ」を落とし込むことに長ける。何故かR-18の合同誌にしか参加していないという謎の実績を持つ。自身の下の弟を溺愛しており、たまに周囲から将来を危惧されている。

https://www.pixiv.net/member.php?id=14571959

 

9り

専門は双葉杏・砂塚あきら・小宮果穂。絵も字も書けるタイプの創作者。他のメンバーにはない独特の観点から物語を展開する。推しを連想させる単語を聞くと急に限界になるし急に過呼吸気味になる。最近水鉄砲の広告を見て限界になった*1

https://www.pixiv.net/member.php?id=10316462

 

姪谷凌作

専門は依田芳乃・乙倉悠貴・森久保乃々。謎の創作系プロデューサー集団『一課』の結成者。アイデアを短編SSに纏めるプロ。自称・元一次創作者。なんだかんだ幸せな世界が得意。炊きたてのご飯を毛布にくるんで猫だと見立てる行為を執拗に他人に推奨する。

https://www.pixiv.net/member.php?id=24826462

 

シズク

専門は東郷あい・森久保乃々・三船美優。自分の世界を展開できる固有結界能力者。ロボットものなど、血と硝煙の匂いがする話を考えていたりする。一次創作者でもある。幸せな世界を見ると試練を与えたくなるらしい。アイドルを見て感じた香りをアロマとして調合する趣味を持つ。

https://www.pixiv.net/member.php?id=14105829

 

斬進

専門は特になし。今回の主催。とある二次創作アカウントのネタ出し係を担当している。

 

 

 

 

 

物語風味のログ本編

 

始まり

6月末日、午前0時。前日の夜に企画が立ったが、参加者は5人いた。ひでん之、9り、姪谷、シズク、そして主催。事前に「地獄の性癖暴露大会になりそう」「ナイフの刺しあい」などの下馬評がついたこの企画、姪谷の「こういうのをやるなら理性がいい感じに壊れてきた深夜にやりたい」との要望により日付変更と同時の集合となった。

それぞれが得意なカップリングを持つ百合創作者である今回の集い、重要となるのは自分の得意ジャンルと読み手の好きなジャンルとの取捨選択だ。すなわち、上の句から直感的に感じ取った自分の得意なジャンルを脳直で取るか、多少苦手であっても読み手の好みを狙いに行くかだ。ネタ被りが大きな問題となるこの競技においてある種の先手の優位性は揺るがないが、それはネタを練る時間が短くなることをも意味する。自分がどちらに属するか、素早い判断が勝負のカギになるであろうことは簡単に予想がついた。

主催からのルールの説明があって、全員がログ記録用チャットルームに移動する。冗談のように自分たちの推しの話をしているが、もしかしたら牽制の意味がそこに込められているのかもしれない。

それでは、と主催が声をかけ、自らの用意した診断のボタンを押す。0時半を少し回ったボイスチャットに、長い夜の始まりを告げるクリック音が静かに乗った。

 

第1句 「パジャマ」

「1つめのお題は『パジャマ』です」

参加者たちは次々に懊悩の声をあげる。Twitterでバズっていたツイートで例に挙げられていたものがハイコンテクストなアイテムである「麦茶」であったことを考えれば当然のことだろう。パジャマ、という単語はあまりにも自我が強い。その自我の強さを活かしつつ、どれだけシチュエーションとしての発展性を広げていくか。経験の少ない参加者たちにとっては些かハードルが高いようだった。「パジャマっていうだけで果穂さんしか出ないんだよ」というのは9りの言。

数分。読み手の主催が上の句のリロールを提言し、制限時間までに半分以上の下の句が出ないようなら、と決まったところで、ひとりの参加者が声をあげた。

「え、これ、二次(創作)じゃなくてもいいんですよね?」

その参加者――姪谷が先陣を切る。この集いの結成者、通称『課長』としての責務を感じていたかどうかは定かではないが、今回初の下の句は波乱を生むこととなった。

「『外国人の子×日本人の令嬢』で」

そう、姪谷が『取った』下の句はアイドルとは無縁の一枚。ルール説明の時点から「このルールとメンバーなら誰もが二次創作をするのだろう」と考えていた参加者は、さらに混沌の内へと放り込まれる。もし次に読まれた下の句も一次創作であれば、場には大富豪の縛りルールもかくやというある種の強制力が発生することとなるのだ。思いつかない場合にはある意味都合のいい逃げ道である一次創作だが、二次創作ができなくなってしまうとなれば話は別になる。しかし二次創作を開放するには、誰かが二次創作を思いつく必要があるのだ。場に重苦しい沈黙と唸りが響く。

「えー、じゃあ…… 『かほちょこ』」

次の取り手である9りが口を開いたのは、さらに数分が経った後のことだった。シャニマスでは放課後クライマックスガールズ、ひいては小宮果穂の絡んだ創作を得意とする彼女が今回の「相手役」として選んだのは、ユニット随一の普通の人間である園田智代子。どちらのパジャマに対してどちらがどのように反応するのか注目が集まる。

そしてこの1枚によって、二次創作をすることに対する負い目がなくなった参加者たち。まるで天使に先導されるかのように、もう一人の取り手がこれに続く。

「それじゃあいきます、『かえみゆ』で」

『取った』のはシズク。字面からはやや幼稚な印象が拭えない「パジャマ」であるが、あえて大人アイドルの組み合わせの代名詞とも思われるような高垣楓と三船美優の組み合わせを提案してきた彼は、どちらかといえば殺伐とした世界観を好んで創作する人間だ。どのようにこの上の句を調理するか、彼の新たな一面に期待が籠る。

そして取り残されたのはひでん之だった。彼が得意とするのは極端な掌編か、設定を練りに練った長編の構想だ。さらに悪いことに、彼は『画像』が出てこないタイプの書き手だ。直感的に何かのワンシーンを幻視して物を書き始めるタイプではなく、ひとつひとつを積み重ねて着想するタイプ。このような瞬発力を求められるネタ出しはやはり重かったのだろうか。主催が極端な長考を控えるように言ってからさらに1分ほど経って、彼は決断した。

「やるかー、『しきあす』でいきます」

悩んだ末に彼が選択したのは、自分の最も得意とする一ノ瀬志希と二宮飛鳥だった。まだ全然纏まってないから、と嘯く彼の心中はいかほどだったのだろう。口で不安を吐き出しつつも天啓が降りたか、それとも苦渋の見切り発車か。その審判は、4人の中で最後に下されることとなった。

何はともあれ、初めてのカルタの下の句は揃った。手探りの中、自分の即興妄想を手に殴り合いが始まる。

 

 

「じゃあ始めますね」

姪谷が口火を切って、チャット欄にひとつの単語が打ち込まれる。参加者はその単語を読んで困惑した――少なくとも私は困惑した。

「キーワードは『和洋せっちゅう』です」

そこから繰り出される世界は、まるで日常系百合漫画の世界であった。まるで料理番組のような口上と共に「ご用意された」のは外国生まれの金髪少女と、純日本人の良家令嬢のお泊り会。「平屋で暮らしてるような」という修飾語をつけて語られたその日本少女は、どうやら寝間着も和服らしかった。

「元の文化が違うじゃないですか、当然お互いのパジャマを見て興味を持って、話が盛り上がるわけですよ」

なるほど、『和洋折衷』はそういう意味か――。私が納得したその時だった。

「あとは話が弾んでごにょごにょごにょ、みたいな」

せっちゅうとは「せっ」と「ちゅう」か、と改めて納得すると同時にジャッジが呼ばれることになった。これはレギュレーションに違反しないのか、大丈夫なのか。長くはない議論の末、全員が笑っているのでセーフという結論に至った。語彙力がイカロスの如く失墜した姪谷の妄想に対して、皆が笑いながら意見や補足をぶつけ合う。ふたりの名前の話や、それに連なるエピソード、起床時の着衣の乱れについて。気が付けば、初周の緊張など参加者たちのどこにもなかった。姪谷が狙っていたのは開幕の一次創作による緊張状態ではなく、ギャグ的要素をプレゼンそのものに込めた緊張の緩和だったのか。彼の真意はわからないが、少なくとも一番槍を担う課長としての責務は立派に果たしたと言えるだろう。

 

続いては9りのかほちょこの出番だった。少しだけ息を調えてから、彼女は独特の語り口調で自分のプレゼンを展開し始めた。

「まず、果穂さんは子供っぽいパジャマなのを気にしてる」

まるでそれが当然であることを信じて疑わない、といったような9りの口調。いくら公式で最近パジャマの描写があったとはいえある種の暴挙とも言えるような前提条件の押し付けに一部から笑いが起こるが、彼女はそれを意に介さず続ける。

「それで、果穂さんはちょこ先輩のパジャマは絶対カッコいいって思ってて、事務所でこっそり耳打ちして訊くんですよ、どうすればいいんですかって」

彼女の強固な小宮果穂観は、身内である一課の人間であれば周知の事実だ。もはや信仰に近い敬意を小宮果穂に抱いている彼女の中では、小宮果穂は周囲の人間を照らす太陽であり、手を差し伸べるヒーローであり、等身大の問題に悩むひとりの少女だ。

さらに9りはそんな小宮果穂に普通の人間らしく、それでいてややコメディタッチに対応していく園田智代子を描いていく。年相応の悩みを抱く果穂をいじらしく思い、次の休みに一緒に買いに行こうと約束する智代子だが、家に帰ってから自分が普段ジャージで寝ていることに思い至る。前日の夜に慌ててネットで検索するが、検索に熱中しすぎて寝不足になってしまう。それを努めて隠そうとするが、果穂に簡単に寝不足がバレて心配される。テンポよく、まるで箇条書きで書かれたプロットをひとつずつ確認しながら読み上げるように語られる筋書きに、参加者たちは耳を澄ませる。

そして、果穂に心配された智代子は、果穂ちゃんのためにちょっと頑張っちゃった、と言う、と9りは力説する。それを聞いた果穂の胸にはえも言われぬ感情が芽生え、そしてその名前のついていない感情を抱えて過ごしていくのだと。彼女はそう自分の妄想を結んだ後、大きく息を吐いた。

彼女は常々、「小宮果穂は実在する」と話す。一見どころではなくかなり危ない人間の発言ととられても仕方のない言葉ではあるが、今回は方向性さえ違えど彼女のその主張の一端を見たような気がした。すなわち『実存性』とも言うべきか、「公式がこのような話を書くならば、あるいは彼女たちが存在していたら、きっとこのように事が運ぶ」。そのようなある種の確信を抱かせてしまうような、実在の人物かどうかとは違う方向のリアリティ。1句目からそれを全開にして出してきた彼女は、きっと今後もいい作品を出すだろうと確信させるような、そんな下の句だった。

 

「まず、楓さんが美優さんを部屋に誘って、ふたりでゆっくりお酒を飲むことにするんですよ」

ある程度短く纏めるために多少の押し付けは可能かつ必要不可欠。そう結論付けたかのように、シズクの出だしは説明ではなく描写だった。さらに、その展開もテンポの良いもの。

「美優さんは急にそんなことになると思ってなくって、パジャマを持ってきてなくって。それで、楓さんのパジャマを着ることになるんですね」

とんとん拍子に進む描写から開催されたのは、ふたりきりのパジャマパーティー。少しだけ童心に返ったようなその文字の並びとはうらはらに、ふたりは大人の特権のひとつともいえるアルコールを囲んでとりとめのない話をする。どちらに傾きすぎてもその後の展開を難解にしかねないいわばアンバランスな描写の綱を、シズクは綺麗に渡っていく。

慣れない楓のパジャマに美優は気恥ずかしさを覚えたものの楓はそしらぬふうを装う、という描写をして、シズクは一瞬だけ言葉を切った。私はその間隙をもって思考を巡らせた。この後ふたりのパジャマパーティーはどのように展開していくのか、楓さんも実は緊張していてというのが王道ではあるが―― しかし、私の予想は次の一言によって打ち砕かれることとなる。

「それでふたりとも寝落ちちゃうわけですよ、で翌朝、いつもの自分の服とは違う、楓さんの匂いに包まれて美優さんは目覚めて――」

彼はあっさりと夜を終わらせたのだ。そして私は合点がいく。あくまで「パジャマ」の話であり、宅呑みは些事であった、あるべきだったのだと。さらに彼は自分の特徴であり、美優さんの特徴のひとつでもある「匂い」にもフォーカスを当てている。自分の得意分野を上手く盛り込んだ格好だ。美優が楓の匂いに包まれているというその幸せを再確認するかのようにふんわりと微笑んだところで、彼の初めての企画妄想は畳まれた。

人の自己評価というものは得てしてあてにならないものだ。過去、彼はこのように言っていた。「自分は長編を書くのは得意だが、短編のサイズに纏める能力は無い」と。しかしこと今夜に限っては、その発言の信憑性は限りなくゼロに近いと言っていいだろう。彼は今、自分の能力を証明したのだから。

 

 最後に残ったひでん之は、シズクのプレゼンが終わってもなお唸っていた。それから、彼の思惑が語られる。

「僕はね、最後だったし全部バーッて書いて、これですってチャットに貼りたかったんですけどね、残念ながら僕自分が筆遅い人間だってことを忘れていてですね」

参加者たちから笑いが漏れる。念のため後に「SSをそのまま投げるのは禁止」というルールが制定されることになるが、実際にこの短時間でSSを一本書きあげることは、筆が速い作家が自分の慣れたキャラクターの話を書くとしてもなかなかに難しいことだろう。自分でも笑いながら、その「失策」を告白する。

「今メモ帳に一行だけ、『寝相クッソ悪くていつも腹出して寝てる志希』だけ書いてありますからね」

そう、それがひでん之がプレゼン前にしっかりと固められた構想のすべてだった。それ以外の展開はいまだ脳内ではっきりとした形を持たず、断片的な単語や世界観として宙を漂うのみ。前述した通り『画像』で物を書かない彼には、1枚の絵としてそれを完成させることは難しいように思えた。

だが、ひでん之には、それで充分だった。自分がひとつの絵として纏められないことを自覚したうえで、彼は自分の頭にある断片的な――それでいて厖大な量の点の間に、フリーハンドで線を引きはじめる。

「あ、これは僕の脳内の話なので、こいつらは一緒の部屋で暮らしてます」

「色々問題とかはあると思うんですけど、志希は飛鳥ちゃんが寝静まってから帰ってきて、ソファとか床とか適当なところで適当に寝て、飛鳥ちゃんが起きても起きれない、みたいな」

1枚目にしてもはや暗黙の了解となった前提知識の共有という名の押し付けと引きずり込みをテンポよく済ませ、彼の脳内の飛鳥は志希にパジャマを買い与えることを決意する。それは飛鳥なりの心配の形ではあるが、年相応の臆病さが具現化されたものである、とも彼は語る。

「お腹出したりとか布団ひっぺがして寝たりとかしてるから、飛鳥としてはシンプルに体調の心配をしてるんですけど、ただ今まで無理やり理解わかろうとすることで痛い目を見てきているので、ちょっと臆病になってるところもあるんですよ」

見てきたかのように話してはいるが、当然痛い目を見ている瞬間以外の描写は公式には存在しない、ひでん之の妄想の話である。だが、それはこの場においては野暮以外の何物でもない。

「で、暮らしてるうちに他人からの贈り物だったらぞんざいにしないだろう、っていうことを学んで、だったらプレゼントでパジャマを贈れば、って考えるんですよ」

自分の頭の中の二宮飛鳥のことは自分が一番よく知っている。そう言わんばかりに飛鳥の精神の機微の説明を続ける。彼の中の飛鳥は志希をどうにかショッピングモールに連れ出すことに成功して、シックなパジャマを志希の手に収めることに成功した。しかし彼女の思い通りにいったのはそこまでで、志希はそれを受けて当然のように飛鳥の手に志希のものの色違いのパジャマを渡して、飛鳥は肯定も否定も口に出さずに黙って会計に向かう。お揃いのパジャマという羞恥よりも、相手にその意図を尋ねるという踏み込んだコミュニケーションへの躊躇によって。

「で、まあパジャマ贈られて、その日以降飛鳥が目ぇ覚めると贈ったパジャマ着て腹出して寝てる志希がいて、ちゃんと直したり朝の準備したりしてあげる飛鳥ちゃん、っていうのがね、はい」

そう言葉を畳んだひでん之に対して、主催が笑いながら言葉を投げる。

「――いや、長い! 3つぐらいの話に分けてよかったでしょ!」

そう、この時点で他の参加者の約2倍もの間、ひでん之は自分の妄想について語っていた。途中に横からの合いの手はあったとはいえ破格の長さである。これは彼があえて纏めることを放棄した以上、当然の帰結ではあった。時間や眠気の関係から、長すぎることが減点対象となり得る深夜帯での開催においてこの決断はかなりの勇気を必要としただろう。もしくは、本当に何も考えていなかったのか。

しかしてその決断に対する裁定は、それを認めるものであった。

「熱量のごり押しが強かったということで、今回の優勝はひでん之さんです」

 読み手である主催の発表に合わせて、深夜のためやや控えめな、しかし惜しみの無い拍手がひでん之に送られる。次は無いですからね、と笑いながら言う主催は、途中まではシズクのパジャマを大人で拾おうとした発想力を高く評価していたようだった。ただ今回は最初ということで、後から降って湧いた純粋な熱量をその上に置いた。発表順が逆であれば、ともすれば優勝は別の人物であったかもしれない。4番手であったひでん之には、自分より後の発表者を気にする必要がなかったからだ。当然、何番手だろうと気にせずに長話を続ける可能性もあったが、その場合は読み手の好感度を損なう可能性があった。そういう意味でも、あの時カップリングの決断を悩んだことにも、なにがしかの意味はあったのかもしれない。もしくは、それは運命であったのかもしれない。

 

こうして、手探りの中第1句は終わりを告げた。しかし、息をつく間もなく第2句が始まる。自分の妄想をいかに素早く威力の高いものに仕上げるかのみがこの競技ではない。連続で妄想を続けそれを発表することのできる、ある種のタフさも求められるのだ。

第1句優勝者のひでん之が診断を回す。彼は少し難儀したような声をあげてから、少し申し訳なさそうにそのお題を読み上げた。

 

第2句 「防波堤」

「えー…… じゃあ『防波堤』でお願いします」

ありきたりかつどこかで見たような表現であることを承知であえて書かせてもらうとすれば。第2句のお題として提示された上の句は、難しいと思われた第1句をさらに上回る難易度だった。確かに「防波堤」は寂寥感や感傷を表現しやすい、俗な言葉で言えば「エモい」場所だ。しかし「パジャマ」も用途が限定されているとはいえ、「防波堤」を使おうとすれば基本的にはキャラクターたちがそこにいる話、という方向に限定される。その中でどのキャラクターにどのような話をさせるのか、どのようにキャラクターのらしさを引き出していくか、他のキャラクターで代替できない価値を見出すか。通常の創作でさえ躓くことのあるようなお題を、さらに即興でこなさなければならないのだ。

基本的には何があってもそれで妄想するゲームなので逃げないでください、と言った主催が、自分も苦難の末になおかれを選択する。防波堤に付き纏う海や空のイメージである青を基調としたアイドルのチョイスとして、神谷奈緒北条加蓮は無難な選択と言える。誰かに取られる前に、ということで、誰からも下の句が出ない現状を鑑みて取ったのであろう。
次に動いたのは9りだった。悩みながらも取ったのはこがきり、シャニマスの月岡恋鐘と幽谷霧子のカップリングである。SSではなく妄想の公開であるため月岡恋鐘の強い訛りを表現しなくてもいい、という楽さがある他、このふたりについて9りは定期的に診断メーカーのお題精製装置を用いた作品を自分のTwitterで公開している。この時点で上の句の提示から相当な時間が経っていたため、自分の慣れたカップリングを取ったようにこの時は思えた。

そこからさらに少しだけ間を開けて、次に取ったのはシズク。その宣言の内容に、少しのどよめきが起こる。

「それじゃあ行きますね、『しきあす』でお願いします」

読み手であるひでん之の得意分野であり、先ほど彼が展開したふたりであり、彼に最も刺さるカップリング。すわ忖度か、と囃し立てられるも、シズクはあくまで行けるという確信のもと取ったとそれらを一刀のもとに切り捨てる。当のひでん之はおお、と声を上げたきりであり、その心境は計り知れない。また、このふたりは公式で海に逃避行をしていたりもするためそれを活かすということも考えられるが、シズクはどのような物語で「プロ」を納得させるのか期待がかかる。

第1句とは対照的に、最後に残ったのは姪谷だった。しかし彼もシズクの決定からさほど間を開けずに決断する。

「なんて呼ぶかちょっとよくわからないんですけど、『依田芳乃×浅利七海』」

先ほどとはややニュアンスの異なる、感嘆に近い声が何人かから漏れる。海、正確に言えばおさかなアイドルである浅利七海。当然デレマスのプロデューサーであれば考えに及ばないということはないだろうが、浅利七海のカップリング、という点で見ればギョギョっとニャンだふる(前川みくとのデュオユニット)以外に非常に有名と言えるカップリングは少ないと言わざるを得ないのが現状である。しかし、姪谷は恐れることなくそれを切ってきたのだ。デレマス身長151cm組、非公式名称で言えば「イチゴイチズ」に所属する両名。専門かつ担当のアイドルと海のアイドル、共通点はあるものの公式での絡みがそれほど多くないふたりをどのように捌くのか、手腕が問われる組み合わせとなりそうだ。

姪谷の下の句が提示されたことによって、4つの下の句が無事に揃うこととなった。一時はリロールも危ぶまれた上の句だったが、並べてみれば4つの下の句のどれも感傷や静かな雰囲気が似合うものとなった。理性の半壊した午前1時過ぎ、ともすれば同じ雰囲気のぶつけあい。まさしく瀬戸際の決戦が始まろうとしていた。

 

 

主催の愚にもつかないなおかれ*2が終わり、9りのこがきりの巡目となる。

「まず、霧子ちゃんが夜の防波堤でお散歩してるんですよ。で、『おさかなになって恋鐘ちゃんに会いに行くね』って」

その言葉に鋭敏に反応したのは読み手のひでん之であった。

「あー…… うわ、[娘・娘・金・魚]か」

[娘・娘・金・魚]はゲーム内で使用できる霧子のカードのひとつである。カードのコミュのひとつである「ゆらゆら」は、ふたりで金魚の浴衣を着てペットショップの金魚コーナーを見に行く、というコミュの内容ではあるが、明るく引っ張っていく恋鐘とふたりでもなお落ち着き透明感のある霧子の世界が展開されている。さらに恋鐘の「うちももうちょっと霧子みたいに優しくなれたら…… ここの魚、迎えに来るけんね!」という言葉に対して霧子が金魚のように真っ赤になりながら「わたし、金魚さんになったら…… 恋鐘ちゃんのお家に行くね……」「そうなったら…… 毎日、遊ぼうね……」と返すという、およそ公式がやっていいものとは思えないほどの文学性が発揮されているコミュである。9りの言った「おさかなになって恋鐘ちゃんに会いに行くね」は、このコミュでの約束を指したものなのだろう。しかし、「夜の海の防波堤」で「おさかなになる」という単語の並びに幾ばくかの不安を覚える参加者もいただろう。そしてそれは現実のものとなる。

 「どうしても自分が恋鐘ちゃんに釣り合ってるって思えなくて、おさかなになれたら、ってそのまま身を投げようとしちゃう」

本当に口調を変えずにその不安をそのままアウトプットした声に、うわ、と小さく息を飲んだのは、はたして誰だったのだろうか。もしかすれば、無意識に全員が同じような声をあげていたのかもしれない。

霧子が身を投げてしまう本当に寸前、恋鐘が現れて霧子が夜の海に沈むのを引き留める。恋鐘がここに訪れた理由は存在しない。彼女は霧子の危機には必ず駆けつける。それがこの妄想で月岡恋鐘に与えられた使命であり、Twitter不定期に紡がれる9りのこがきりの世界で月岡恋鐘に与えられた運命のひとつである。慌てた様子で必死にどうしたのかを尋ねる恋鐘を見て、霧子は自分がどれだけ馬鹿なことを考えていたのかを思い知らされ、泣き始めてしまう。

一文ずつ説明を区切っていくかのような9りの語り口と、静かな雰囲気というよりも深刻な雰囲気の内容に、参加者たちは固唾をのんで9りの次の言葉を待つ以外の選択肢を奪われていく。

恋鐘は帰ろうなどとは言わず、防波堤の上で霧子を慰め、霧子の話を聞く。そして夜が白み、日が昇り、そこで恋鐘は霧子に言う。こんなに綺麗な世界を捨てるのはもったいないから、と。そうだね、と返して朝日を眺めながら、霧子は考える。おさかなにならなくても、霧子のままでも、何かできることはあるんじゃないかと――

9りが妄想の終わりを告げると、いやぁ、などと感嘆の意味を込めて参加者たちが唸る。確認を取ってはいないが、この物語は霧子の「おさかなになる」という部分から着想を得たのは間違いないのだろう。しかし実際は「おさかなにならない」という霧子の結論でこの物語は終わっている。[娘・娘・金・魚]に回帰するわけではない新たな道を霧子は開拓したのだ。また、この物語の流れはいわばベタなもののひとつではあるが、どこか少女漫画の登場人物のような透明感と危うさを持つ霧子とこのシナリオは非常に相性が良い。躊躇ないシナリオの選択が功を奏する、という事例の好例とも言えよう。

 

 「まず、志希ちゃんの出身地は我らが岩手なんですよ」

9りの流れを受けて話し始めたシズクのさりげなく自分の出身地情報を混ぜ込んだ滑り出しに、少しの笑いが起きる。しかしその後に続いた言葉は、その笑いを静かにさせることができる程度には重いものであった。

「で、岩手って三陸津波があって、それの復興をしてるわけじゃないですか」

日本人であれば知らない人間は一握りであろう痛ましい記憶と、そこからの脱却。そのただ中に立つアイドルふたり、一ノ瀬志希と二宮飛鳥。飛鳥は志希に連れられ、新しく建設された防波堤に腰かけて街を眺めることになる。そして、そこで志希から伝えられる。この防波堤の建設には志希の研究が用いられているのだと。

それを聞いて、飛鳥は曖昧な返事をしながら内省する。志希と自分と、セカイとの関わりについて。志希はいわば分かりやすくセカイと接触し、分かりやすく他人の役に立っている。当然、アイドルであるとはいえ中学生――しかも中二病を患っていると自称する少女が、それに憧れないはずもないだろう。しかし飛鳥自身は何事を成すでもなく、ただアイドルをしている。勿論それは普通の人間にはできないことではあるが、アイドルと研究者を両立させている志希の前ではそれはあまりにも薄い言い訳にしかならないだろう。

しかし、そんな飛鳥の内心を全て見通すかのように志希は笑って、また自らも内省する。自分は、結局のところ即物的な物質世界に囚われている。この功績もまた、完成してしまえば自らを物質世界に縛り付けるものでしかなくなる。でも、飛鳥は違う。飛鳥が縛られるのは自分の内面世界にのみであり、それは志希にとっては羨ましいものである。ただ志希はそのことを飛鳥に伝えることなどはせず、ただ即物的な街を飛鳥の隣で眺めている。

なるほど、と呟いたのは、私の聞き間違えでなければ読み手のひでん之だった。どうやら彼にも納得のいくしきあすであったらしかった。ふたりの対称性をうまく落とし込みながらも志希と防波堤を彼女の地元というアイテムで繋ぎ、なおかつ(もちろん結果的にそうなっただけの可能性も大いにあるが、)そこに少しの自分らしさを混ぜ込む。即興で作られたとは思えないほど綺麗に煉瓦の積まれたその作品は、確かに読み手の心に届いたのだ。

 

最後の取り手である姪谷も、自らのチョイスしたアイドルと上の句との関係性を説明するところから始めた。

「皆さんご存じの通り七海ちゃんは海が好きで、芳乃も[わだつみの導き手]だったりで、依代としての仕事とかで海の神様と縁があるじゃないですか」

七海といえば瀬名詩織や沢田麻理菜と並び立つデレマス屈指の海に縁のあるアイドルであることは誰しもが認めるところであろうし、(海神の依代かどうかは私は知らないが)芳乃も水辺全般と縁のあるアイドルだ。彼がその例として挙げた[わだつみの導き手]も、芳乃が禊のようなものをしているイラストが描かれているカードである。姪谷の物語はそんな水と縁のあるアイドルの片割れ、七海が防波堤にいるところに芳乃が現れるシーンから始まる。

七海は波の音を聴いていると落ち着くから、という理由で海を眺めているらしかった。それが芳乃の心を打つ、と多少熱の入ったように姪谷は語る。離島に住んでいた芳乃やその周囲の人間にとって波の音は日常のひとつの域を出ないものであり、その「あたりまえ」を気にかけ好んでいてくれることが珍しく、また海の神様としても幸せなことなのではないだろうか。さらに言えば、波はその大小はあれど寄せて返すことを無限に繰り返すものであり、そこから生まれる刹那であるところの波音を楽しむということは永遠にも等しい海の神の営みの一片を受け取ることに他ならないのではないか。「防波堤」という単語に当然に付属し、なおかつここまでの3つの妄想で焦点が当てられてこなかった「波の音」という部分が、鮮やかに彩られていく。

「で、七海ちゃんに向けて、よしのんが海の神様的な一面を出して、言うんですよ」

 そして姪谷は、仕上げとばかりに芳乃のセリフを口にする。

「――『わたくしの心音を、どうか最後まで聴いていてください』、って、感じで」

心音、という言葉には様々な意味が含まれる。生きている限り止まることのないもの、同じリズムを刻み続けるもの、その生命に最も近い音。それらすべての意味が内包されて、芳乃の心臓と波が重なる。まさしくそれは、物語として綺麗なラストシーンの一枚絵であった。

ここまでフォーカスされることのなかった波の要素を見事に主役として取り入れ、また前例も他に比べればそう多くはないカップリングを御しきり見事波に乗り切った姪谷。第1句ではオリジナルのキャラクターを用いて妄想を繰り広げたが、二次創作で後れを取るということは決してない。その事実をあらためて見せつける形になった句だった。

 

 「いや、どれも良かったんですよ」

そう前置いてから、読み手のひでん之は今回の優勝者を口にした。

「なんですけど、一番僕の心が動いたっていう意味であれば、9りさんが優勝です」

少しだけ驚いたような9りの声と、優勝者を称える拍手の音が響く。優勝の決め手を尋ねると、ひでん之は少し考えてから答えてくれた。

「普段の9りさんのこがきり、恋鐘ちゃんが霧子ちゃんと会話しないっていうか、わかりあえないけど好き、みたいな感じなんですよ。でも今回の話は恋鐘ちゃんがちゃんと霧子ちゃんと話しあっていて、はい」

それを聞いて逆に感心する9り。勝利を齎したのは、自分が積み重ねてきた何気ない日常であった。そのカップリングを研究し、お題を用いて不定期とはいえ高頻度で作品を作り、インターネットの大海に放流する。その行為が、今回こうして勝利のための最後の一ピースとして目の前に形を成したのだ。盤外戦術に近い、と揶揄する声もあろうが、私はこのような勝利があってもいいと感じる。それはいわば、普段からの創作に対するちょっとしたご褒美なのだから。

 

終わってみれば、上の句が提示された際に参加者たちが感じた不安などどこ吹く風といわんばかりのレベルの高い戦いだった。「防波堤で会話をする」という上の句の使い方は同じであった――下の句を考えている最中に「対東側の防波堤」という文脈で上の句を使おうとした参加者は約1名いたが――にもかかわらず、3つそれぞれそのカップリングらしさを活かし、余韻を異なる雰囲気に仕立て上げたのは物書きの面目躍如と言わざるを得ないだろう。

途中用意された診断を回した9りが「卒業」「すべり台」「シャボン玉」という3択を見て「限界になりそうなのは(診断結果から)消したって言ったじゃん! すべり台消えてないじゃん……! この、しかも、シャボン玉と卒業……!!!」などと言って限界になるなどのアクシデントはあった*3が、1分かかって鎮静化した9りはどうにか勝者の役目――次の上の句の提示を果たした。

 

第3句 「制服」

「はい、じゃあね、『制服』です」

前の2句から一転、ひとめ汎用性の高い上の句となった第3句。しかし、ことここに至って参加者のほぼ全員が一旦は同じ結論に至ったようだった。すなわち「お題が合わせろ」――上の句からカップリングを考えるのではなく、自分の好きなカップリングの中から上の句に最も合うカップリングを考え、読み手のことは忘れて自分の好きな妄想をひたすら押し付ける。要するに、小細工抜きで金属バットを持っての殴り合いである。もちろん自分の引き出しの中身よりも合ったシチュエーションやカップリング、意外なカップリングには弱くなりかねないが、それでもほぼ全員がこの戦術を採用した理由を端的に言えば、深夜2時を前にその弱点を考察するほどの思考能力が一度全員の中から無くなったのだ。妄想で殴ればいつかは勝てるだろう、という蛮族思考と推しカプへの愛が、無法地帯と化した深夜のボイスチャットに蔓延する。

最初に動いたのは姪谷だった。いや、正確に言えばカップリングに動かされたのか。

「えー、いやこれ『おとより』しか思いつかないんですけどー……」

乙倉悠貴と依田芳乃、第2句とはまた違った依田芳乃のカップリング。彼の専門である依田芳乃を含むカップリングの中では強い共通項がない代わりにややバランス型に近い、いわゆる「丸い」選択とされる場面は多々ある。しかし悠貴はあどけなさや少女性、学生という点もかなり前面に押し出されているアイドルであるため、学生服に重点を置くのであれば今回最も強い選択とも言えるだろう。

そして姪谷が自分の得意なカップリングでゴリ押しに行くのを察したのか、ひでん之もそれに呼応するかのように下の句を『取る』。

「行きます、『かほなつ』で」

9りもまたその声に呼応して一瞬限界になる。彼が最近最も力を入れて創作活動をしているカップリングのひとつ、それがこの有栖川夏葉と小宮果穂のカップリングであるところのかほなつだ。大学2年でやや天然の気がある肉体派社長令嬢である有栖川夏葉と、子犬のように無邪気にその背中に憧れる小学6年の小宮果穂。お互いに制服を着ない年齢であるふたりを中心に、ひでん之はどのように線を繋ぐのか。

そこから少し時間が空いて、3番手を取ったのはシズクだった。

「それじゃあ『かえみゆ』でお願いします」

彼が選択したのは第1句でも選択したかえみゆ。レギュレーション上同じカップリングの選択はまったく問題がないとはいえ、一瞬だけ驚いたような空気がボイスチャットに流れる。無意識に誰もが回避していたのかもしれないその選択肢をあえて拾いにいったシズクは、まるで自分に大丈夫だと言い聞かせるかのようにうんと小さく呟いた。

そして前の句では愚にもつかない妄想を披露した主催は唸っていた。しかしそれは、上の句に合うカップリングが自分の脳内に存在しないからではないようだった。

「……えぇー、ここで切らされるのー……?」

前述した通り同じカップリングの選択は可能であるため切らされるも何もないのだが、よくわからない彼の信条がそこにあるらしかった。しかし自分だけが下の句を提示していないという空気感に耐えられなくなったのか、渋々といったようにその札を『取る』。

「いいや行きます、『みくりーな』」

前川みく多田李衣菜カップリング、みくりーなは主催がこの沼に足を踏み入れるきっかけとなったふたりである。また特にみくは制服でのイラストもそこそこに多く、アニメ版放映時には制服で共演があったほか、去年にも[放課後ロックスター]という多田李衣菜のカードで中野有香と3人で制服でCDショップに行っている姿が描かれている。そういう意味では、姪谷のおとよりに負けず劣らず制服のイメージがあるカップリングであろう。

それぞれが己の手になじむ武器を手に取り、読み手を多少巻き込みながら凄絶な殴り合いを披露する。これまでで最も素早く出揃った下の句がそれを予感させるなか、第3句のプレゼンが幕を開けた。

 

 

「まず、乙倉ちゃんの制服なんですけど、[カム・ウィズミー!]見る限りブレザーっぽいんで、ブレザーっていう前提で行きます」

そう切り出した姪谷は、芳乃と悠貴の制服の違いに言及する。芳乃は複数のカードで見られる通りセーラー服タイプの制服であるため、悠貴とはデザインの異なる制服となる。さらに彼は、芳乃がもとは離島に暮らしていたことにも目をつける。

「芳乃も向こうの学校に通ってはいたけど、事務所に来てこっちの芸能活動とかに寛容な高校に転校することになって、新しい制服に袖を通すことになるんですけど、それがなかなか馴染まないんですよ」

なるほど、という声が参加者から漏れる。たとえ転校というものを実際に経験したことがなくとも、慣れ親しんでいた制服を途中で変えるともなれば違和感を感じるであろうことは容易に想像がつく。

そして姪谷は続ける。好奇心の強い芳乃であれば、自分が制服に慣れるためという名目のもと多くの学生アイドルたちに制服を見せてもらい、また着こなしなどを教えてもらうのではないだろうか。そしてその学生アイドルたちという区分の中に、当然乙倉悠貴も含まれてくるのではないかと。確かに悠貴であれば普段芳乃に教えることなんてできないから、と嬉々として教えそうであるし、デレマス実装時期・CD発売時期双方の意味でデビューが近いアイドル同士であればそのような会話もしやすいのかもしれない。

さらに、姪谷が思い出したように付け足した言葉は、またも小さな波を引き起こすこととなった。

「あ、もちろん最初に乙倉ちゃんの制服の話をしたのはかわいいってことが言いたかったのもあるんですけど、制服の交換とか、してほしいなって」

「――あーっ! 被った! もうダメだ!」

笑いながらそう叫んだのは主催。ここにきてこのゲームほぼ唯一のカルタ要素、早い者勝ちで被りは禁止、という部分が初めて表出することになった。そう、悠貴と芳乃と同じように、みくはブレザー、李衣菜はセーラー服の制服なのだ。どうやらそれをアテにしていたらしい主催の空笑いと、その騒ぎっぷりにつられた他の参加者の笑い声が深夜のボイスチャットにやや音量を抑えてこだまする。まだ方向修正が効くから、とは言われたものの、主催の貧弱な発想力で自分の前までに代案が思いつくかは不安であった。その低さから順番が4番手であったのは救いか。

終わり際にひと悶着あったものの、全体を眺めてみれば姪谷の提示した下の句はおそらく短めに分類されるものであろう。しかしそこには、聞いた人間の想像を掻き立てるような部分――例示するのであれば「芳乃の制服見学に他に付き合わされるアイドルは誰がいるのか」「提案されたときの悠貴の心の動き方」など――がふんだんに盛り込まれている。また制服交換に関しても13cm差と身長差のある組み合わせであるため、いわゆる「絵になる」シーンであることに何ら疑いはない。要点のみを抑え、それ以外の部分をあえて聞き手にも委ねることで読み手にも妄想を読ませる、シンプルながらトリッキーという面白い下の句になったと言えるだろう。

 

次に順番が回ってきたのはかほなつを取ったひでん之であった。彼は少し興奮したような口調でこう切り出す。

「まずね、弟ちゃん*4と果穂さんって同い年なんですよ、ご存じだとは思いますが」

何がご存じなのかわからないうえにその情報が今必要なのかわからない(本人は大事だと主張した)情報から入ったひでん之。彼の下の弟と果穂はふたりとも小学6年生であり、果穂は学校帰りと言及されたカードのイラストから制服のある小学校というわけではないことも確定している。どんなに頑張っても、学校の制服を着るのはもうひとつ学年が上がってからだ。その1年という距離は近くて遠い、不思議なものである。中学生が学校の活動で果穂の通う小学校を訪れ模擬授業を行うところから、ひでん之の妄想と口が回りだす。

「もちろん小宮果穂さんはお仕事とかでもっと大人の人たちと接する機会がいっぱいあるんですけど、それでもやっぱり思うところというか、そういう人たちと違う目で見たり、重ねて見ちゃうみたいなところもね、あると思うんですよ」

制服を着た自分より少しだけ大人な人間が教壇に立って授業をする。それに感じたなんとも奇妙な感覚から果穂は、自分の身の回りの、特に自分のユニットの仲間たちに通っている学校に興味をもち積極的にその話を聞くようになる。当然制服などについても話題に上るが、その点に関してユニットメンバーで唯一の大学生であり、また制服のある大学でないことも確定している有栖川夏葉だけは現在の制服姿を見ることができない。そうなれば尚のこと夏葉の制服姿に果穂が興味を抱くのは当然の流れではないか。ひでん之は小学6年生という難しい年頃である少女の心の機微を、おそらくは彼の弟に対する観察から得たものをもとに紡いでいく。

果穂は事務所で夏葉に当時の制服姿を見てみたいと頼み、夏葉もそれを快く受け入れる。休日に果穂の両親の了解を取って車で迎えに行き、夏葉の家へ。後部座席でそわそわとしている果穂を後ろ目に夏葉は少し笑う。夏葉の家に着くと夏葉の飼い犬であるカトレアが飛び出してきて、果穂とカトレアがじゃれている間に夏葉はいつの間にか姿を消し、声をかけられた果穂が顔を上げるとそこには当時の制服を実際に纏った夏葉が――

「……申し訳ないんですけど、だから2つ3つの話に分けられるじゃないですかそれ!」

ひでん之の語りが終わると同時に、また笑いながら主催が茶々を入れる。確かに、切るのであれば夏葉の車の中のワンシーンで切る、といったことも考えられなくもないし、最初に念押ししていた「弟ちゃん」と小宮果穂の類似性にも相当な尺を割いていた*5。ひとつひとつの描写をかなり細かく繋いでいるため仕方がないとも言えるのだが、単純に深夜2時を回った脳には話の進みが遅いのだ。次は無いって言いましたよ、今度はベル鳴らしますからねと言われて困ったようにひでん之は笑った。

「いや、最初はカトレアさんを出す予定はなかったんですけど、なんか夏葉さんの家に行ったら脳内でカトレアさん出てきちゃって、そしてらもう遊ばせるしかないじゃないですか」

いわば脳内の断片量が厖大すぎる弊害――途中で意図しない断片と繋がり話の流れが変わったり遠まわりになってしまうという事故をひでん之は未だ御しきれていないようだった。何度も言うように、彼は掌編あるいは長編のプロットを得意とする物書きだ。こういった即興で短編程度のサイズの大枠を考えるという調整に慣れきってはいないのだろう。しかし、それを制御しきったとき、そこにどのような妄想が立ち上がってくるのか。それは、夜がさらに更ければわかるのかもしれない。

 

「あ、私の『制服』は学生服じゃなくって、職場の制服です」

 ひでん之の長丁場の後、少し短いですが、と前置きをつけてからシズクのプレゼンが始まった。

第1句とは逆に、今度は美優の家に楓が招待されふたりで宅呑みをする。同じようにとりとめのない話をして、前回とは違い寝落ちする前にきちんと客人用の布団を用意しようとし、楓がそれを引き受ける。そして楓が押し入れを開けて客人用の布団を引き出し、さらにそこである物を見つけるのだ。

「ちゃんと公式で捨てられてないって言われてますからね、美優さんのOL時代の制服」

元OLでクリスマスにヒールが折れたところをプロデューサーに助けてもらいついでにスカウトされる、という流れで一部公式ではアイドルになっている美優だが、生来の踏ん切りのつかなさや流されやすさというところはアイドルになってやや改善はしたものの未だ健在、という設定である。あくまでウワサではあるが公式で捨てられないとされている会社の制服や靴に関しても、当時の自分からどれだけ変われたのかがわからなくて過去を切り捨てる判断ができず残されている、というような解釈をシズクはしているようだった。

制服を見つけた楓は布団と一緒にそれを引っ張り出してくるが、それを見た美優の表情は明るくない。制服の纏う過去の空気感に引き摺られ、会社勤め時代の嫌な上司や面白くない出来事を思い出し、当時から何か変わることができたのかと悩み始める。アルコールも入っているため、だんだんと考えが後ろ向きになっていく。そんな時、楓がひとつの荒唐無稽にも思える提案をする。

「『それ、私が着ます』って、そう楓さんは言うんですよ。嫌な思い出とかを全部自分で上書きして、匂いとかも全部」

努めて自分の偏った見方を入れないようにしてきたつもりではあるが、あえてここで私のこの時の感想を入れるのであれば、シズクの声のトーンに疚しいような部分は一切なかった。一切なかったが、シズクが言うと何故か割と洒落にならないような気がした。発言する人間によって説得力や凄みが変わってくる、ということをあらためて体感した。事実他の参加者たちも一瞬戸惑ったような声をあげていた、ような気がする。

しかし逆に言えば、短いストーリーの中に自分の得意分野を効果的に詰め込んだということでもある。話題になるのは学生であることの多いデレマスの世界で、「制服」という単語を聞いて時間をそこまでおかずにかえみゆを選択し、さらに自分らしさである「匂い」の要素を再度組み込んだうえで綺麗な形に仕上げたことは、間違いなく彼がこの競技が始まる前よりもさらに成長を遂げていることを表しているだろう。

 

そして最後に残ったのは主催。主催はシズクのプレゼンが終わってもなお唸り、発表を渋っていた。しかし1分ほどそれを続けてようやく観念したのか、ネタ被りを回避するために即興の上塗りをしたみくりーなを語りだす。

「まず皆さんご存じの通り、前川みくさんはブレザーで、多田李衣菜さんはセーラー服なわけですよ」

まずは姪谷と同様にふたりの制服を紹介する。前述した通り、カードで言えば[放課後ロックスター]や[マジメ/ネコチャン]で見ることのできる制服だ。

「でまあ話変わるんですけど、前川みくさんと制服が関わるお仕事が最近あったじゃないですか。『HARURUNRUN』って言うんですけど」

ああ、と思い至ったような声がする。この場でいう『HARURUNRUN』は、デレステで同名の楽曲が実装されると同時に行われたイベントのコミュである。曲を歌う関裕美・水本ゆかり・棟方愛海の3人に星輝子・前川みくの2人を合わせた5人で女学校でコメディ寄りの青春学園ドラマを演じる、という内容のこのコミュで、みくは規則にうるさい生徒会副会長として普段とは違う一面を見せていた。そして学園ものである以上、当然衣装は制服。みくにも制服立ち絵が使われた。さらにこの『HARURUNRUN』は2か月前に実装となった[放課後ロックスター]で制服の李衣菜のイメージがあったこともありみくりーな界隈に大きな波紋を呼び、このドラマの設定を使った「学園みくりーな」がいちジャンルとして確立するに至ったという経緯もある。

しかしあくまでも主催はこの設定――生徒会副会長の前川みくとその一年先輩の多田李衣菜――をそのまま当人たちとして採用するのではなく、ドラマの中として話を進める。

「で、まあドラマ*6の撮影で、多田李衣菜さんがゲストとして登場する回があったとして。レギュラー出演のみくがいる楽屋に入ってきて、衣装に着替える、と」

そう、それは同じ学園の生徒を演じるうえで当然に起こる、「同じ学園の生徒なら同じ制服を着なければいけない」という単純な真理に基づいた現象。後から入ってきた多田李衣菜が、前川みくの目の前で彼女と同じ制服に袖を通す。

「――で、多田李衣菜さんが自分と同じ制服を着るのを、前川さんがむずがゆそう、かつ嬉しそうに横目で見てればいいな、って、それだけです」

以上です、とさらに終わりの合図を付け加えて、主催の妄想は畳まれた。

制服の交換が被りで駄目なら制服の同一を、という逃げ方をした主催。その分妄想そのもののボリュームが少なくなることとなったが、それでは被らなければもっと長かったかと言われると、それも本人の技能量的には疑問が残るだろう。

 

「えー、どれもめっちゃ悩むんだけど、選ぶんだったらおとよりで」

読み手の9りが告げた今回の優勝は、姪谷のおとよりだった。制服の見せあいや交換・年齢差と現役でない制服・学生服ではない会社の制服と各々が別方向に上の句を膨らませていった第3句であったが、読み手の語ったところによるとその勝利の決め手は「可愛さ」であった。ひでん之のかほなつは好みには刺さるものの些か量が重くSSそのままに近くなってしまった、ということだろうか。他の面々も含めて、自分の妄想したいものが妄想できたとしても、読み手の好きなものが妄想できたとしても、それだけで勝ちは確定しない。そういった事実が改めて浮き彫りになったとも言えるだろう。

 

それぞれがそれぞれの得意とするカップリングの妄想を語った第3句であったが、全体として見れば「好きだから長く語る」という傾向とは逆に、妄想そのものの長さは平均的には(ひでん之以外は)短くなっているというのが見てとれた。これが単に長時間の妄想を続けたことによる疲れからくるものなのか、それとも参加者たちが短く纏めることに慣れつつあるのか。戦いの最中にもなお進化し続ける参加者たちは、次の上の句にどう立ち向かっていくのか。

優勝した姪谷は、しかし用意された診断を見て唸った。

「うーん、いや実はちゃんと持ってきてるお題もあるんですよ」

暫く診断をリロールして、彼は決意する。姪谷の提示した第4句の上の句は、診断の結果に含まれていない単語だった。

 

 

 

 

おわりに、あるいは中書き

 

ということで第1句から第3句まででした。書いてる途中でこれ別に普通のログでいい気はしてきてます。文章力がもっとある人に頼んでほしかった。全員物書きだろあの集団。

当日終わって朝5時ぐらいから書き始めて既に今7月4日なのでこのままではブログを書き終わる前に第2回カルタ会が開催されかねないため、いったんこのあたりとさせていただきます。この時点でログ部分は2万文字ぐらいあるらしいです。馬鹿かな?

とりあえず続きの文章をなにか思いつきましたら。

 

*1:彼女の崇敬するアイドル・小宮果穂の所属するユニット「放課後クライマックスガールズ」の最新シングルのジャケットでは彼女たちが水鉄砲を持っている。本当にこれぐらいの連想で限界になる。

*2:本当に愚にもつかなかったので全カットです。防波堤の上を平均台のように歩く加蓮の話。

*3:流石に日常にあるどの単語が小宮果穂の公式と関わりがあるのかはわからないし、卒業に至っては公式で一切の言及がなくただ「小宮果穂さんは6年生なのでいつかは卒業する」という理由で限界になっていたのでこちらとしてはどうしようもなかったという言い訳だけはさせてもらいます。

*4:ひでん之の下の弟のこと。参加者紹介で書いた通り、彼は下の弟を溺愛している。

*5:本ログではかなりカットしているが、1分半ぐらい念押ししていたはずである。

*6:後で確認したところコミュ内でのドラマの名称は『礼節と灼熱の嵐』らしい。

現実を二次創作することについて語れなかった

 

(自分語りを飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分語り(前説)

 

お疲れ様です。斬進です。新しいノートパソコンにしてから自分のハンドルネームの辞書登録をしていないので半ギレになりながらスペースキーを連打しています。

前回の記事を誰も読んでいない前提で話を進めますが、前回「3つぐらいは記事を書きたい」とか深夜のノリで書いて公開するボタンを押してしまったので、後悔しながら今回も深夜にキーボードを叩いています。お前の人生こんなんばっかりか。

前回は自分語りとして自分と二次創作の出会いだのなんだのをだらだらと書き綴って、デレマスの二次創作の紹介とも言えないタイトル掲載を十数本やって終わったので、今回はなんかもう少し真面目に自分の考えとかそういうことを書いていきたいと思っています。できるかは知らない。多分できない。僕らは他人任せで生きている。

そういうわけで、今回は自分の悪癖たる「現実の二次創作」について、自分の人生の汚点の数々を振り返りながらだらだらと書いていきたいと思います。そんな堅苦しい話にはならない予定ですし、ナマモノ百合とかそういう話をする予定は午前2時現在ないです。書いちゃったら追記しておきます。

(※追記 書きませんでした。)

あと今回の自分語りは認知度がわからない単語が多くなりそうなので、試験的に注釈を導入します。どうでもいい情報しか書いてないので分岐の無いノベルゲームのTIPS並みに読み飛ばしてください。

 

 

 

 

「現実の二次創作」とは

 

そもそも「現実の二次創作」とは何ぞや、という話ですが、そもそもお風呂に入りながら適当に思いついた造語なのであやふやという概念をそのまま形にしたレベルで自分の中でもふんわりしています。

なので便宜上、ナマモノ*1だけではなく、広く現実の人間や行為を元ネタにした行為を今回この記事では指そうと思います。その方が話しやすそうですし、ナマモノはそんなにする予定がないので。知り合いに声優の話とかどうみたいな顔で見られているのはこの際置いておくことにします。Vの者の話も文責にできるわけがない。こっちはちょっと考えてるけど。

具体的にナマモノではなく現実の二次創作である行為については、知り合いを勝手に異世界転生させる物語を考える行為だとか、もう少し真面目な例えをするならMtGのマッチのテキストカバレージ*2なんかもこれに入ると思います。MtGわかる人にはグランプリ静岡2019レガシー決勝戦の覚前さんvs加賀さんの公式カバレージを読んでほしい。あとグランプリシンガポール2015決勝戦の人見さんvsスティーブン・タンさんのも。大久保寛さん*3伊藤敦さん*4の文章をもっと読もう。でも刺さるかは責任を負いません。ただし文句を言うなら向こうじゃなくてこっちに言って。

 

 

 

 

自分語り(現実の二次創作という名の破滅への足取り)

 

 そもそもなぜこんな変なテーマで文章を書こうかと思ったかといえば、それはひとえに自分の悪癖に由来します。そういうわけで今回の自分語りタイムです。読みたくない人は飛ばしてください、って書いてそもそも読みたくない人は最初の目次で飛ばしてるかこの記事開いてないなって思いました。やっぱ深夜にブログ書くのダメだわ。

生来の現実見ない系男子としてバイオレンスや虐めから目を逸らしてきた自分は、中学生という人類上最も些細な事で悪影響を受けやすいと言われる時期にあるゲームに出会います。それが『汝は人狼なりや?*5です。自分が初めて『人狼』をやったのがロールプレイ推奨の、要するにアニメやゲームのキャラクター画像をアイコンとして使ってそのキャラになりきったりなりきらなかったりしてプレイすることを前提としたサーバーで、そこから自分に備わっていた現実との乖離癖が完全に日の目を見ることとなります。

ロールプレイをすることでロールプレイをしている間の自分としていない間の自分が完全に別人のように感じられたり、ロールプレイの選択のせいで掛け値なしに命を救われたり*6といった経験を経て、いつしか自分は「文字を打ってエンター押したらもう別人」みたいなクズ思考を身につけることになります。発言の責任は無限に取るけど書いたのは自分じゃない。任意の整数n重人格かな?

そして悲しいことに当時の自分は、皆が皆そうなっているのだと勘違いしてしまったわけです。自己存在という「ナマモノ」から、インターネット上の「アバター」を即座に隔離できる人間ばかりだと思い込んだ自分は、他人をコンテンツ化していくことに何の抵抗も示さないハイパークズへと進化しました。書いててコイツマジで最悪だなって思います。ぶん殴りたい。

どういうことをしていた(今もしている)かというと、普通にフォロワー×フォロワーとか多分解釈一致さえすれば見られるし、たまにTwitterハッシュタグで流れてくる「リプライしてくれたフォロワーさんのことをオリジナルキャラにして~」みたいなタグはリプライ来ようが来まいが10人ぐらいは考えます。ストーカーだこれ。

一番ひどい時はそのタグで考えた設定でフォロワーモデルのオリキャラ×フォロワーモデルのオリキャラのSSとか考えてました。なんなら書きました。既に0と1に跡形もなく還元されてますが。*7

 

 

 

 

現実の二次創作をする利点と欠点とか

 

ここまで自分語りで自分の汚点を振り返ってきましたが、結論としては死にてえなってなりました。

冗談ではない冗談はさておき、こういったことをして得られたものとか失ったものを考えてみたいと思います。

10分考えて「得たものなんてあるのか?」という結論に達しそうでしたが、それでも強いて言うとすればネタを見つける分野においてと、キャラクターの解像度を下げるという分野においては役に立っているのかもしれません。周囲の存在すべてを二次創作の対象として見ることで、それらを非現実を対象とした二次創作に置き換えることが容易になります。要するに「今日周りでこんなエモいことがあったからこれをこのキャラとこのキャラでやってもらおっと」ってことです。キャラクターの解像度を下げる行為については、いろんな人間をいろんな属性に分けて見ることになるので、キャラクターを属性で区分し、大づかみでなんとなく言動が把握できるようになります。*8もちろんそれだけで創作をするのは自殺行為というか飛んで火にいる夏の虫なのでちゃんと可能な限りの勉強はしますが。口調間違いはとかは読めなくなるって人も多いし。

失ったものとしてはまず間違いなく普通に生きられなくなります。ネタ収集以外の意味で他人をぼーっと眺める頻度はものすごく減ります。あと周囲の信用も失ってます。他人で普通にこういうことを考えるようなやつを信用してはいけないし、自分だったら困惑の目で見ます。実際たまに言われますけど。こんな辺鄙なブログを読んでくださっている読者の方々には「吐き気がする」とツイートしたらけっこうな速度で「ついにつわり?」とリプライされた経験がないと信じたい。

ただ、他人をコンテンツにする、というのはある程度現代を生きるインターネット世代としては経験があり嫌悪感をそこまで抱かないものだと思います。YouTuber・VTuber然り、Twitter芸人然り、知り合いが趣味で配信始めて「マ゛マ゛ーーーーー!!!」って叫ぶ然り。そういう時代において、それらを見て一切ある種の物語を考えるようなことをしない、というのはオタクにとって難しいものだと思います。そうだと言ってほしい。自分の中で何らかの物語を考えたことがないオタクの方がいればごめんなさい。

とにかく、肝要であるのはそういったものを見てなにがしかの物語を思い描いたときに、それを切り分けて隔離するのではなく、きちんとそれを物語のタネとしてアウトプットしてみるなり、そこまで行かないにしても嫌悪感を覚えたり頭ごなしに否定したりしないで一回置いてみる、ということだと思います。そして皆物語を考えてみればいいのです。いいネタがあったら教えてください。文責がそろそろネタを出せって連絡をしてくるんです。

 

 

 

 

おわりに

 

無秩序に書いていたらにわかにどころじゃなく空が明るくなってきたのでこのあたりにします。本当はもっとMtGのテキストカバレージについて書きたかったし(マジックフェスト横浜2019日曜ミシックチャンピオンシップバルセロナ予選決勝戦のマエノソノさんvs齋藤さんとか)、人はどのようにしてカップリング厨へと道を踏み外すのかみたいな回想も入れたかったのですが普通に眠いし余白は短いし誰も読まないの三重苦なのでやめておきます。

とりあえずまた何か思いついたら。

 

 

*1:界隈の言葉で、実在の存在である俳優や役者さん、固有名詞のある生物などを本人役として扱い創作するジャンルのこと。空を飛ばないものだけを指す

*2:いわゆるゲーム譜の一種だが、現在では単調にどのカードがプレイされたかを書くのではなく、プレイヤーの背景紹介や心情の想像描写、ライターの考えなどを交えて一つの物語風に書かれることが多い。多分。

*3:この場合はフリーライターのカードゲームプレイヤーを指す。通称ドブフクロウ。筆者は大久保さんの文章が滅茶苦茶好きなのでブログもパクりみたいな形式になる。

*4:この場合はフリーライターのカードゲームプレイヤーを指す。通称まつがん。論理的かつヤバい飛躍の仕方をしたデッキを組むことで有名で、カードの再評価の原因になったり海外プロにファンがいたりする。文章も滅茶苦茶上手い。

*5:いわゆる『タブラの狼』。村人たちの中に紛れ込み毎晩1人ずつ人間を喰っていく人狼たちと、それを防ぐために毎日夕方に人狼っぽいひとを村人たちの中から選んで処刑する村人たちと、その他なんやかやで構成される正体隠匿型破滅的民主主義ゲーム。

*6:これも全部先輩って奴が悪いんだ

*7:そして最近似たような過ちをプロデューサー界隈の知り合いで繰り返したもよう。

*8:例えば島村卯月というキャラクターは「フィクション的普通」で「努力家」で、という区分から「島村卯月ならどう考えるか」を想定していく感じ。実際はもう少し区分が細かいです。

鬼のように長い自分語りとデレマス二次創作について

 

(自分語りを飛ばしたい方は以下の目次をご活用ください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分語り(前説)


お疲れ様です。斬進です。

最近インターネット上の知り合いが謎のブログ開設ラッシュを起こしていて、一番ダメな記事を書くとこうなるんだよというのを示すためにこのタイミングで始めることにしました。あとは深夜テンションと自己承認欲求です。エサをあたえないでください。

とりあえず1つでブログを辞めても問題はないけど、今まであまりにも物事を継続してやってこなかった自分への戒めとして3つぐらいは記事を書きたいです。正直ネタはないです。自分でも書けそうなネタを募集しています。書けたらコミュ障やってないけど。

まずはひとつ何か書こうということで自分の趣味をいくつかメモ帳に書いた結果、びっくりするぐらいブログに書くと怒られそうな話題か先駆者のパクりにしかならなかったのでメモ帳を保存せずに閉じました。自分という存在の歴史ごとメモ帳はゴミ箱送りにされることすらなく電子の彼方へ消えていきました。ざまあみろ。

そういうわけで、まずは二次創作、特に最近(もう5年前らしい)よく見ているアイドルマスターシンデレラガールズの二次創作についてと、自分の好きな作品を列挙する記事をひとつ書こうということで、深夜も3時にこうしてキーボードを打っています。大学生に曜日の概念は無いし、死人に時間の概念は無い。締切の概念はある。助けてください。

 

 

 

 

自分語り(二次創作について)


そもそも二次創作にハマったのがまだ日本の必修科目にハレ晴れユカイが残っていた頃の話。まだニコニコはββだったし、家の回線は電話回線でした。当時『鋼の錬金術師』という漫画にドハマりしていた姉と自分は、金曜と土曜の夜親が寝静まった後や休日の朝早くにPCを起動してエドワードとウィンリイのSSを漁るという今考えても頭のおかしい行動を繰り返していました。当時からカップリング厨の気はあったわけですね。ちなみにある月電話代がバカにならなくなって数年間PCが家から撤去されました。

それから姉はうっかり事故(当時住んでいた近辺にあったマンガ書店・アニメイトで普通の本と間違って神田×アレンのアンソロジーコミックを買ってしまった)から腐女子もいけるし夢女子もいけるタイプのオタクになり、自分は特定のジャンルを決めずにSSまとめ系のまとめサイトでやったこともないゲームのSSを読んだりしていました。あと当時我が家はバイオレンス期で家族全員に話を合わせないと死にかねない状況だったため、姉の買ったBLアンソロジーを読んだりもしてました。「Oh、お隣さんおっぱじめちゃったネ~」じゃないんだよ。

その後バイオレンスやら受験やら鬱やら色々あって2015年は1月。アニメ版アイドルマスターシンデレラガールズが放映されることを第1話の開始30分前にTwitterで知ります。当時の自分のデレマスへの知識はほぼ皆無と言って等しく、「ヤンデレのまゆって子がいる」という今呟こうものならまゆP達から"詳細な説明"を受けそうなイメージはいい方で、「ショウコとキノコという双子アイドルがいる」なんていう某インターネット掲示板発祥の嘘をガチで信じ込んでいた始末でした。それでもとあるゲームで顔見知りだった人が「ヤバい、死にそう……」とかメチャクチャ深刻そうなツイートをしていたので、「実況ツイートをより楽しむためにつけてみるか」ぐらいのノリで0時にテレビをつけた訳でした。

 

いや、カプ厨のきらいがある人間が1話の卯月と凛を見てpixiv漁らない理由がありませんでしたよね。公園で卯月が桜持って凛に笑いかけて風が吹くシーンとか完全に『Love so sweet』か『CHE.R.RY』流れてましたもん。

それからというもの、毎週30分Twitterを眺めながらデレアニを見て、終了後にカップリングや百合に理解のある先輩(赤の他人)とダイレクトメッセージで延々語り合ったりして、新田ーニャはどうだのうづりんはどうだの、杏ときらりはアニメではユニット組まないのかだの語っていたわけです。

そうしているうちに3月28日、11話の放映日が来たのですが。始まる前、デレアニを見てる(うえに公式サイトを見に行かないタイプの)知り合いが、残りの2人は蘭子みたいにソロでやらせるのか、それともユニットを組ませてしまうのかと話をしていたのが今でも記憶に残っています。いわゆる信号機ユニットのNewgenerationsは兎も角、アニメ発の複数人ユニットはLOVE LAIKAが大人びたクール系、Candy Islandはまさにキュート系、凸レーションは原宿系となんとなく一貫しているのに対して、残った2人はまさしく何の共通点もない、ユニットの体を成すのか不安とまで言われていたからです。ただ「ユニット名の頭文字を取るとCI・N・De・RE・LL・Aになる」という推測が成り立つとするならば残ったのはAから始まるひとつのユニットだけだ、という予想もあって、実際自分は放映の瞬間までどうするのかと不安半分に思っていました。

はたして、そこに奇跡はありました。まさに奇跡的相性と書いてマリアージュ。すべてを吹き飛ばす圧倒的な存在。正直自分でもなぜか全くわからないうちに、Asteriskというユニットに、前川みく多田李衣菜という2人に、強く惹きつけられていました。ちなみにその日の先輩とのダイレクトメッセージの第一声は「みくりーな、ヤバくないですか?」「ああ、これは来たかもしれない」だった気がします。何目線だコイツら。

その後2週間で約束された終末が来るわけで、みくりーなの嵐は凄まじく吹き荒れました。そしてその中で、自分はついに本格的な二次創作というものに手を出してしまったわけです。4月11日に13話の放映があって、15日には最初の短文を先輩に送り付けてました。これ以降1年ぐらいは先輩1人に見せるためだけにネタを考えて物を書いて先輩に見せる生活をしていました。今考えるとメンヘラの極みみたいなことしてるな。シンプルに迷惑そう。

結局諸々の事情により2016年の夏ごろに複数人で共同名義を作ってpixivに短編を投稿するようになり、そのままの流れで今ここに至るという感じになります。文責に許可取ってないので名義は書きません。自分なんかのアイデアかつ偏屈の極みのような文責の文章よりももっといい文を皆さんは読んでください。そもそもこれはそういう記事ですね。

 

 

 

好きな二次創作の宣伝(知り合い含)


そういうわけで前置きが長くなりましたが、好きなデレマスの二次創作を並べて適当に感想をつけていくコーナーです。諸々に引っ掛かる可能性を検討した結果タイトルと作者名(敬称略)のみの記載となることをお許しください。目の前の板なり箱なりブラウザ機能付きゲーム機なりで調べていただければ幸いです。

あと題材のカップリングが明らかに偏っているとかそういうクレームは一切受け付けません。地雷を踏んだなら紹介者をアレしてください。作品に罪はない。キリスト並みに他人の罪を背負って生きていけ。

 

 

1.エンドロールには早すぎる / 福岡留萌

2015年4月から5月にかけてのみくりーな黎明期を疾走した偉大なる先達、福岡留萌先生のシリーズ完結作。ひたすら虚無との対話でみくりーなのネタを引っ張っていた時期に読んで自分のモチベーションにしていた一作。黎明期とは思えないみくと李衣菜の動き方に今でも憧れる。

書いた通りシリーズ最終作なんで初見の方は1作目から読んでください。

 

 

2.「だって、みく言ってくれないから」 / 河川敷

昔聞いた文責のイチオシ。ワンシーン作家の我らが文責(おおむねワンシーンしかネタを提供しない自分のせい)にとっての理想形のひとつって言ってた気がする。みくのセリフの短さやすこし柔らかめな地の文を含め、雰囲気作りが完璧。さらにネタもそれらにしっかりと合致していて、読んだ後に心が温かくなる一作。

 

 

3.Time Capsule / カズラ

こっちはネタ出し的にも読者的にもオススメな一品。百合趣味のある小説を書こうと思って考えて、なかなかフォーカスを合わせない部分に発想を飛ばせることの強さ。最後の一文を鮮やかな1枚の絵で〆るような描写も個人的に好み。カズラ先生の作品はおおむねこうなので作風なのかもしれない。その作風を文責に分けてあげてほしい。

 

 

4.終わりを告げたのはなぜ / ぬた

物凄く勝手かつ個人的な意見であり誉め言葉という意図ではあるけれど、ぬた先生は重い人間を書くのがとても上手な方という印象が自分の中にある。この作品も安部菜々木村夏樹というふたりの人間の、いわばありがちな結末のひとつとその続きを、序盤は雨とモノトーンで描くという雰囲気が印象的。

ちなみにこのぬた先生、今年の選挙活動でも用いられた「一斉○○」系のはしりとも言えるみくりーなハッシュタグ「#毎月26日はみくりーなの日」の考案者のひとりでもあられるとても偉大な方である。足を向けて寝られない。

 

 

5.それがあなたのくれたもの / 蛉民(れいみん)

自分の中でのみおあいマスターピースのひとつ。本田未央という人間の一種の危うさと、その危うさと優しさに起因するいい意味での独り相撲感に見事に引き込まれる。比喩などの表現のひとつひとつも特徴的で、文責には見習ってほしい。何回「ため息をひとつつい」てるんだお前。

 

 

6.ロングノート / negipo

ザ・ビビッドカラーといった感じの作家、negipo先生の作品の中でもそこそこにマイルドなやつ。イメージ的には赤系の原色ペンキを壁に叩きつけるようにして文章を描いている先生だが、これは多分筆で書いている。ただし無彩色と有彩色の使い分けは結構派手。

これを読んだうえで他の作品を読むと結構差があるように感じるかもしれないので注意して読んでください。

 

 

7.Alice in Bright World / 八神きみどり

質量と密度で襲い掛かってくるタイプの、どちらかといえばややありふみ要素のある橘ありすの小説。後半部は本当に読んでいて両肺の間のあたりが辛くなってくる。地の文の切り方、文章の並べ方ひとつひとつに気を配られている。

ちなみに2016年1月末投稿だが、2018年10月末に正式結成されたありふみユニットの名前はBRIGHT:LIGHTS。解釈の一致、あるいは運営にファンがいた説。

 

 

8.非実在性ありす症候群 / あおかび

徹底された反復と対比と前進の文章。ひとつの真理を、全ての登場人物を縛る鎖として一切の例外なく適用させ、そのうえでそれとどう反省するか、どう向き合っていくかを描いていく。自分は話を考えるうえで「物語に縛られない存在」を出したくなるので多分この作品のようなネタは一生出せない。あと身に覚えがありすぎて胃が痛くなる。

どうでもいいけどTwitterの鍵をつけてる状態で珍しくURL貼って感想を置いたらその後鍵外したタイミングで作者の方に捕捉されて「ち、ちがっ、そんなつもりじゃ……」ってリアルになった。

 

 

9.フレちゃんがうつになりまして。 / ヨミ。

説明不要の大作。構成と流れの完成形。詳細は伏すが神。実はデレマスを知る前に一回読んでいた。それでもその記憶が残っているぐらい、精巧に配置された文章。「色の揃わないルービックキューブ」は、永遠にこの小説を指すのだろうと信じられる作品。

インターネット掲示板連載版と物理書籍版(現在はpixivにて無料公開中)が存在するのでやや注意。内容はほぼ同一だが、後者の方が最新版で加筆・修正等が加えられている。

 

 

10.双葉杏の前日譚 / maron5650

語弊のある言い方をすれば、双葉杏という人間を損なわずに限界まで歪め、それを維持したまま双葉杏を描き切った怪作。精神面と肉体面において、ヒトのような何かと、何かのようなヒトが物語を紡いでいく。世界観を共有した「超常現象プロダクション」シリーズ第一作で、シリーズ全体は現在も連載中。

 

 

11.鮮やかなペール・ピンク / そいそうす

そいそうす先生のどこか淡いセピア色をしたような文体で、「光」や「そこにないもの」に重点を置かれるハートハーモナイズを描くシリーズの完結編。それでいてタイトル通り「鮮やかなペール・ピンク」を添えるような内容を両立させることに感動すら覚える。

前述したとおり同じ作者の方の短編集に掲載されていたきょうさきシリーズの完結編。ぜひ全部読んでから。

 

 

12.お返しはその日のうちに / 緋雲麗

ひたすらに甘酸っぱく、ひたすらに少女。梨沙の強がりと本音、晴の少年性と少女性というそれぞれ相反する軸を持った2人を完璧に描写し、それでいて物語としての完成度も高い。こういう文章を一度は世に出してみたいが、文章力が低すぎるため多分1回転生挟まないとこのレベルに到達できない。

 

 

 

おわりに


無計画に書いてたら12個になったのでキリがいいからこのあたりにします。本当はもっと紹介しないといけないSSはたくさんありますし、今回は無料で読むことのできるもの限定としたので『蒸機公演合同 クロックワークメモリーズ』や『幻燈夜話』、『やさしい両手』などBOOTHで買える薄い本もたくさん紹介したいのですがこの余白は狭すぎる。

とりあえずなにか思いついたら追記します。